『江戸奉公人の心得帖 呉服商白木屋の日常』

油井宏子
新潮新書
ISBN978-4-10-610242-4
白木屋日本橋店(だな)の史料から、奉公人の仕事や生活ぶりを紹介した本。
特にこれといった特徴はなく、残された史料から読み取れる奉公人たち(主人は京都の本店にいる)の仕事や生活ぶりを坦々と紹介したもの。
たんたんとしているので、私としては、格別に面白くもないが特に悪いこともない、といった本で、こうしたもので良ければ読んでみても、というものか。ただし、色々な江戸読み物を面白く読んできた私が格別は面白くなかったというのだから、その程度なのかもしれないが。
全体に淡々とした紹介なので、そこから何を読み取るのか、という問題。私としては、店員による盗みや横領を、表沙汰にせず内々で済ませていた、という点は面白かったが、後はそれなりという感じ。何年かに一度、本店や郷里のある上方へ帰る「登り」を契機に、昇進していった、とか、奉公年数によって衣類や持ち物に細かい規定があり、店の外の人でも区別がついた、とかいう話を読んで、なるほど面白い、と思える人向け。ふーん、という程度なら、ふーんという本になってしまうと思う。
紬とか胴乱とか恵比須講とか、江戸期の風俗に関してある程度知っている人向けという面もあるかもしれないが、上記のような人なら、そこは問題ないだろうし。
格別面白くはなかったので、積極的に薦める程ではないが、読みたいと思うのならば、別に悪くはない本だと思う。そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。