池田信夫氏のための初歩の会計学入門

池田信夫blog:ゴーン社長は「首切り上手」か

この文章の横にある図を見ると、「営業利益」が「売上高」を上回っているが、そんなことはありえないので、よく見ると座標軸が一桁違う.
これをそろえて描くと、次の図のようになる。売り上げの伸びが営業利益の伸びを大幅に上回っていることは明らかだろう。つまり日産の業績が回復した最大の原因は「大量解雇」ではなく、円安で輸出が大幅に増えたからなのだ。

大体、「横にある図」ってどこにあるのか分からないけれど、
「営業利益」が「売上高」を上回っているが、そんなことはありえない
なんてことはあり得ないので、日産のサイトで確かめてみた。
日産自動車の業績推移で見ると、カルロス・ゴーン氏が日産に乗り込んだのは1999年、社長就任が2000年6月なので、小野善康氏の言う、

[ゴーン]社長就任後の3年間で営業利益は急速に伸びたが、売上高はほぼ横ばいであった。

という「3年間」とは2000年度から2002年度を指すのが常識だろう。それを受け売りしたと言うのなら菅直人首相もその期間を指している。
00年度の連結営業利益は2903億円、02年度は7372億円と2.5倍に増えた。
対して連結売上高は00年度6兆896億円、02年度は6兆8286億円で、12%増だ。横ばいではないけれど、営業利益の伸びっぷりと比較すれば「横ばい」という表現で一向にかまわないくらい、伸び率に違いがある。
池田氏は、「営業利益」が「売上高」を上回っているが、そんなことはありえないと、信じ込んでいるようだけれど、そりゃあ、絶対額では有り得ないけれど、営業利益の伸び率が売上高の伸び率を上回ることは有り得るほど有り得過ぎる。
元ネタ【菅首相誕生】会見詳報(4)「日本はもっと成長する」

あのカルロス・ゴーンさんが日産の従業員を大リストラして、確かに日産は飛躍的に業績が上昇しました。しかし、売り上げが上昇したんじゃないんです。景気が低下したんです。売り上げが、自動車なら倍売れて、利益が倍上がったんじゃないんです。自動車の売り上げは変わらないけれども、経費が下がったんです。

と実際の日産の業績とは平仄が合っている。
ちなみに、
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費販売費及び一般管理費は、

販売費は、販売に関する経費であり販売活動において直接要した費用をいい、販売手数料、販売促進費(広告費)などが該当する。また一般管理費とは、総務や企業全体を運営し管理するために要した費用をいい、間接部門(人事・経理・役員など)の人件費(給与・賞与・諸手当)、間接部門が入居する事務所を運営するための費用(光熱費、家賃、減価償却費など)、租税公課、会社全体の福利厚生費、その他の経費(交際費・旅費交通費・通信費など)が該当する。

池田氏のためにウィキペディアをリンクしておく。
菅さんは何もおかしなこと言っていないわけだ。それから、

売り上げの伸びが営業利益の伸びを大幅に上回っていることは明らかだろう。つまり日産の業績が回復した最大の原因は「大量解雇」ではなく、円安で輸出が大幅に増えたからなのだ。

一体どうやってそのグラフ捏造したのか知らないけれど、もし、これが事実としたら大変だ。売り上げの伸び>>>>営業利益の伸びなら、売り上げを伸ばすために膨大な経費をかけ、人件費もかけていることになる。こういうのって、多分、量販店や牛丼チェーンの激安競争で、売り上げは増えど利益はさっぱり上がらない競争他社が倒れるまでの我慢比べ、壮絶なサバイバル戦ぐらいしか思い浮かばない。そもそも円安で経費が増えてさっぱり儲からないなんて状況、内需型企業ならともかく自動車産業のような輸出企業では有り得ないだろう。
実際には、円安バブルのおかげで日産の売り上げは06、07年度は10兆円を超えたが、これはそれ以後の話で、ゴーン氏でなくてもそうなったろう、というお話。営業利益のピークは05年度だが、その後、円安バブルに浮かれて設備投資経費が増大したため低下したのだろう。いずれにせよ、00年度比較で、

売り上げの伸びが営業利益の伸びを大幅に上回っていることは明らかだろう。

なんてことはどこをどう細工しても出て来ない。大体、あのグラフ見てもちっとも明らかじゃないのだけれど。わざと見辛くして心理学でいう錯視の効果で騙そうとしたのだろうか。
後はお友達の専門家の磯崎哲也大先生にでも聞いてくれ。
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