へミングウェイの人種観

 土曜日は研究談話会だった。旭川の本荘さんによる「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」と「キリマンジャロの雪」に見られるアフリカ先住民に対する人種意識がどのように描かれ、それが同時代のアフリカ人の意識、不況下のアメリカン人によるサファリ、アフリカ観光などとどのように関連しているかが興味深かった。

 「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」は作者の人種観とは別に短編として、主人公の勇気、妻や狩猟ガイド(白人男性)との関わりなどが面白い。2度も狩りの途中で逃げ出すフランシスが、妻が狩猟ガイドと不倫をした後、蛮勇を奮い起し、結果として事故とも見える死を遂げる。その「幸福」(?)な生涯は喜劇的だ。

 「キリマンジャロの雪」の方は、壊疽で瀕死の作家が断片的に小説を書けない煩悶を中心に過去を回想するのだが、映画ではパリでの女性遍歴を回想する恋愛映画になっていた。
 最後に作家は山頂から自分を病院に搬送する飛行機が飛んでいくのをおぼろげに感じているのだが、それは幻覚で妻は夫の死を発見する。

 へミングウェイの狩猟や闘牛、そして戦争への参加って死への仮想ではないだろうか。そして最後は猟銃自殺。
 彼を人種差別主義者・帝国主義者・男性至上主義者とは思わないが、その自己演技的な身振りは好きではない。けれど、気になる作家だ。


写真はH・キング監督1952年の映画『キリマンジャロの雪』作家ハリー(グレゴリー・ペック)と妻へレン(スーザン・ヘイワード