『ガラスの動物園』と時代

 月末のワークショップで取り上げるので『ガラスの動物園』を再読。短いのですぐ読めます。で、例によって作品にまつわるトリヴィアルな事が気になります。何故かいつでも作品そのものよりもその周辺が気になる。テネシー・ウィリアムズが33歳の時、1944年初演だそうだが、日本は戦争末期。アメリカではモダン・ジャズの始まりも同じ時期だけれど、いつもよそで戦争をしていたアメリカにとっては、演劇や音楽を革新できる余裕があったということでしょうね。
 再読するとけっこうメタ・シアター的な工夫があって面白い。作者による上演上の指示も細かくて、呑気な演出家なら喜びそうな、でも人によっては煩いとも感じられる。これが評価されたのは1950年に早速映画化されている事でも分かる。ここでの目玉は役の重要性からいえば4番目の「紳士的な訪問者」のジムを演じたカーク・ダグラスか。紳士的と言うよりは暑苦しいジムになりそうだ。次の66年TV版は地味目のキャスト。73年のTV版はキャサリン・ヘップバーンがアマンダ、これは見てみたい。ビデオにもなっている。トムは『キリング・フィールド』で主演のサム・ウォーターストン
 そして87年にはポール・ニューマンが監督をして、奥さんのジョアン・ウッドワードがアマンダ。トムには演技派(くせ者俳優?)のジョン・マルコビッチ。ローラには『インディ・ジョーンズ』で活発だったカレン・アレンが挑戦する。手元にはレンタル落ちのVHSを持っているが、DVDはでていないようだ。この作品はアマンダとトムの配役がよければ成功する可能性が高い。その意味ではニューマン版は合格だろう。
 それにしてもトムが父親と同じように家を出てしまうと、残された母親と姉はどうやって生きて行ったのだろうか気になる。