The Ghost of Tom Joad

5月17日{旅するアメリカ」でふれたRage against the MachineのRenegades(『裏切り者たち』)を聞いてみた。ラップ・グループと勘違いしていたが、オルタナティブ・ロックと呼ばれるジャンルだった。
 カバー曲集の『レネゲイズ』はストーンズやディランなどの曲とともに、スプリングスティーンの「ゴースト・オブ・トム・ジョード」を取り上げている。
 「ゴースト・オブ・トム・ジョード」は『怒りの葡萄』を見てウディ・ガスリーが書いた「トム・ジョードのバラッド」をスプリングスティーンが45年後に書き直し、しかもアルバムとして作り上げた。
 タイトル曲は労働者や放浪者のイコンとしてのトム・ジョードを描くが、これはスプリングスティーンの音楽に通奏するテーマでもある。
 2曲目のStraight Timeは明らかにダスティン・ホフマン主演で映画化もされた、エドワード・バンカーの犯罪小説『ストレート・タイム』を発想の核としている。前科者が世間に受け入れられず、また犯罪の世界に戻っていく話。
 そして11曲目のGalveston Bayはテキサスを舞台にベトナム難民と地元の漁師との確執を描いた短編小説風のいい曲です。対立と赦しというテーマをストーリーやエンディングもきちんと描いた作品で授業でも何回も取り上げています。
 しかも僕の持っているCDは2枚組でショーン・ペンの監督作『クロッシング・ガード』の主題曲Missingも入っていてこれも『フィラデルフィア』のテーマ曲に通じるような曲調で、喪失を歌った佳曲です
 ザ・マシーン(体制)に対するレイジ(怒り)を基本的なスタンスとするレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンの「ゴースト・オブ・トム・ジョード」は激しく、しかし抑制が利いた力強い演奏と歌声で聴きごたえがある。もちろん抑制だけではつまらない訳で、時にそこからはみでる部分もあってそこも面白い。
 文学と映画と音楽のインターテクスチャルな横断がこんなに見事に実現している例は珍しい。