『鳩笛草』 宮部みゆき
鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで (Amazon)
映画『クロス・ファイア』の主人公「青木淳子」が登場する短編『燔祭』(はんさい)を含む短編集。
『朽ちてゆくまで』は、予知能力を持っていた少女「麻生智子」の物語。
小学生の頃に死んだ両親が残したビデオテープから、自分がかつて予知夢を見ることができたということを知る智子。不動産屋の「須藤逸子」がなかなかいい感じ。
『燔祭』は、『クロス・ファイア』の原点となった短編。念力放火能力(パイロキネシス)を持つ「青木淳子」が、妹の「雪江」を失った「多田一樹」の変わりに「小暮昌樹」に復讐をする。
映画『クロス・ファイア』にも組み入れられたエピソードですが、映画とはかなり印象が違いました。映画を先に観たために「青木淳子」の印象って、完全に「矢田亜希子」になってるんですが、『燔祭』ではもっと地味な感じに描かれてます。
全体的に暗いイメージ。映画とは別物のような感じがしました。
『鳩笛草』は、物や人に触れることで、他人の意識が覗けてしまう、いわゆる「サイコメトリー」の能力者「本田貴子」の物語。
サイコメトリーの能力を使うことで刑事になった貴子。その能力が次第に衰えるのを感じて戸惑う貴子。同僚の「大木明男」のちょっと古風な言い回しや、その他の同僚の個性が、全体的にマイナス志向になりがちの作品の雰囲気を明るくしています。
短編集のタイトルになっているだけあって、複数の事件を絡めてじっくり描かれた作品。
三作とも、雰囲気は暗め。人とは違う能力を持つ人物が主人公でありながら、みんな後ろ向き(汗)。「青木淳子」にいたっては、「自分は装填された銃だ」というキャッチフレーズが先走りすぎて、どちらかというと危険人物的な印象を受けてしまいます。この作品だけだったらああいう映画はできなかっただろうなぁと思います(笑)。