図解 実戦マーケティング戦略
- 作者: 佐藤義典
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2005/04/22
- メディア: 単行本
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オリジナルのマーケティングツール5つの使い方と、それに基づく戦略決定
[感想]
これはすごいね。非常にまとまってて読みやすいし、内容も知的で分かりやすく、具体的で使いやすい。
マーケティングの本としてとらえるより、マーケティングに基づく戦略決定の本ととらえた方が良い。マーケティングっていうのは本来そういうものなんだろうけど。その辺を誤解してたかも。
本書の中にも出てくるが、この戦略決定手法は商品・サービスのみならず、あらゆる戦略決定の場面で使うことができる。例えば就活、論文、研究なんかでも使うことができるんじゃないか。すべてを包括的に網羅するツールなので、これらの戦略を決定する際にも一貫性が出てくるだろう。
この本は、久しぶりにポストイットをたくさん使った本でした。very good.
[概要]
本書のツールは数値に基づくマーケティングツール
戦略を数値化するメリット
1.効果を検証できる。
2.日常業務とリンクしやすい
数値目標を追いかける仕組みを作る
3.競合他社と比較できる
4.事前に検証できる
どの数値がキーになるか
マーケティング戦略2つ
1.マス戦略(大規模化による低コスト戦略)・・・大規模企業のみ可能
2.ニッチ戦略(特定の市場を深く掘る、高付加価値独自戦略)・・・その他多くの企業
その中間はどっちつかずで淘汰される。
1.BASiCS
B:Battlefield 戦場
戦場:地域・場所、商品が置かれる棚、顧客ターゲット、競合商品・サービスの集まり、心の財布
戦場は企業が決めるのではなく、顧客の頭の中にのみ存在する(顧客がどう比べるかが問題)
戦場の選び方
伸びてる戦場・敵が少ない戦場
自社の資産(Asset)・強み(Strength)を生かせる戦場
競合が参入しにくい戦場
スイートスポット(バリューチェーンで一番利益のある戦場)
A:Asset 資産
資産:優れたロケーション、優れた生産工程、独占的供給減、顧客とのつながり、ブランド力、優秀な社員、特許、ノウハウ
強み(Strength)を支えるのが資産(Asset)
S:Strength 強み
強みかどうかは顧客が決める
強みは戦場の競争相手と比べて相対的な強み
戦場によって強みは変化する
この差別化ポイントを売り文句(Selling Message)として伝える
資産の独自性に支えられた長期的な独自な強みであることが必要
C:Customer 顧客
顧客を分類(セグメンテーション)し絞って(ターゲティング)、他の顧客は捨てる必要がある
セグメントの切り方
1.デモグラフィック(人口統計的)切り口
居住地域、性別、年齢、職業など
2.ライフスタイル
勝手な頭の中のセグメンテーションはダメ。きちんと客観的に定義・分類する
3.ディフュージョンモデル
革新者・初期採択者・前期多数者・後期多数者・遅滞者
セグメンテーションのポイント
1.Yes/Noで分けられる客観的セグメント
2.市場性がある
3.細かく分けすぎない・・・7つぐらいに抑える
4.再現しやすい・・・定期的にセグメンテーションする必要がある
5.セグメント間に差がある
6.到達できる媒体がある
どのセグメントを選ぶか
自分がナンバーワンになれること(2位以下はダメ)
顧客・商品・地域などで絞る
自社の強みを評価するセグメント
S:Selling Message 売り文句
戦略とメッセージの整合性が大事
情報を伝えることで、顧客の中で価値が上がる(差別化は顧客の頭の中)
売り文句により、集まる顧客が変わる
売り文句に必要な条件=戦略的+印象的
戦略的メッセージ
Battlefield、Asset、Strength、Customerとの整合性、独自性
印象的メッセージ
人間の情報認知における3つのバイアス(=選択的注意+選択的歪曲+選択的記憶)を乗り越える
シンプルにわかりやすく、インパクト、顧客の興味を引く情報(ベネフィット)
機能的ベネフィット=早い、安い、便利、儲かる、うまい、・・・
感情的ベネフィット=楽しい、優越感・ステータス、社会的認知、モテる、・・・
BASiCSの使い方
戦略の整合性を確認(現状を客観的に、正確に)
特にチェックすべきポイント
戦場と強み、資産と強み、強みと顧客、戦場と売り文句、顧客と売り文句、強みと売り文句
埋まらないポイントがあれば、整合性が取れてない証拠⇒力を集中して改善
競争戦略の立案
次のマトリックスを使う
Battlefieldは同じ(大変だが変えることも可能)
Asset、Strengthは競合と差があるか
3、5年後のBASiCSを作っておく
BASiCSのメリット
戦略全体の整合性を検証、全体最適を構築する
戦略〜戦術(Selling Message)まで落とし込む
モレを防ぐことができる
2.マインドフロー
顧客がどこの段階で止まっているのかを体系的に把握・追跡する手法
認知⇒興味⇒行動⇒比較⇒購買⇒利用⇒愛情 (商品に合わせて変えることも必要)
全てをクリアする必要がある。止まるポイントを集中的に改善
マインドフローの数値化
認知・・・純粋想起(聞かなくても分かる)・助成早期(聞けば分かる)を消費者調査
興味・・・認識してる人のうち、興味を持っている人を測定
行動(資料請求数、来店者数など)・・・顧客とのコンタクト数を、延べでなく、実数で計測
比較(競合商品購買率・人数)・・・競合のデータを消費者調査で推定、業界団体のデータなど。延べでなく実数で
購買(購買率・人数)・・・顧客一人一人を把握する。POS、期間限定割引用会員カード発行など。延べでなく実数で
利用・・・利用率を顧客調査
愛情・・・リピート率、常連客の割合などを消費者調査
マインドフローの使い方
フローを視覚であらわし、3、6、12ヶ月後にどれだけ改善されてるかを追跡することが可能
どの関門の優先順位が高いかが客観的にわかる
1つ、多くても2つの喚問を課題点として選び、経営資源を集中
顧客セグメントごとにマインドフローを作る
マインドフローで分かった課題によって、広告の内容が決まる
DMやHPの内容もマインドフローに基づいて決めることができる
3.ニーズの広さ深さ
深さを求める・・・データベースマーケティング
広さを求める・・・マスマーケティング(多額の広告投資)
広さ深さというフレームワークは
商品カテゴリーレベル(アンコールvs清涼飲料水)
サブカテゴリーレベル(ビールvsワイン)
ブランドレベル(スーパードライvs一番搾り)
というどのレベルでも存在する。
どのレベルで分析するかはBASiCSのBattlefieldにより異なる。
広さ深さの数値化
完璧を目指すよりは、すぐ手に入るデータを使ってみる
店舗の場合
広さ:商圏内顧客カバー率
深さ:月間購買者1人当たり平均購買回数 or 月間購買者1人当たり平均月間売上
メーカーブランド担当者の場合
広さ:1か月購買経験率
深さ:1か月購買経験者の月間平均購買個数
マインドフローの使い方
経年変化を追う、競合と比較、方向性を決める(戦略に戦術が追従する)、新規参入の場合、商品のポートフォリオ
ニーズを深める手法
こだわり商品を作る
考え方・ポリシーにこだわる
品揃え・商品選択基準にこだわる
顧客教育(こだわりを顧客に伝える)
コミュニティを作る
購買を習慣化(スタンプカードなど)
内緒で少しおまけする(内緒にやるのが重要)
ニーズを広める手法
今と違うターゲットに売る
認知・興味を喚起
使いやすくする
用途を広げる
デザインを良くする(どこにでもデザインを優先する層がいる)
広さ深さとSelling Message
広げる時は地獄を見せる・・・Fear、Uncertainty、Doubtをくすぐる
深める時は天国を見せる・・・不安追求(効果は早いが)するとブランドは崩壊、脅すのではなく共感させる(時間はかかる)
4.売上5原則
売上=客数×客単価
=(既存顧客+新規顧客−流出顧客)×(購買頻度×購買点数×1点当たり単価)
よって売上向上の要素は
1.新規顧客の獲得
2.流出顧客の減少・・・1に比べ軽視されやすい、1より楽で効果的
3.購買頻度の増加
4.買い上げ点数の増大
5.1点当たりの商品単価の向上
これに間接的にすら関係しない施策はすべてコストなので効率化する
水漏れ分析・・・1.と2.について分析
流出を確認し、流出がこれ以上小さくできない、と判断してから新規を狙うべき
売上5原則の使い方
a.戦略構築
客数×客単価チャートなどで戦略決定、経年変化を追う
b.早期警戒レーダー
売上減少時、どこが問題化フォローできる
c.戦略策定と効果測定
売上のどの部分を上げるか?全部あげよう、は戦略とはいえない
戦略を5要素の数値目標まで落とし込む
d.戦術のモレを防ぐ
e.広さ深さと絡める
広さ・・・新規顧客獲得数
深さ・・・どの指標を重要視するかを、BASiCSとマインドフローとの整合性で決める
客数=広さ、客単価=深さで代用できる
5.プロダクトフロー
購買の心理的障壁を減らす手法
一度でも買えば次回の障壁は小さくなる+知り合いから売られた方が障壁が小さくなる
商品・サービスの3段階=あげる商品+売れる商品+売りたい商品
あげる商品・・・コストを抑えることが必要 【体験版など】
売れる商品・・・利益度外視で 【割引など】
売りたい商品・・・利益を稼ぎ出す商品 【リピート購入】
あげる商品の作り方
商品・サービスの一部を切り取る
診断サービス、あくまでも客観的に
商品の選び方などの情報
物質化していることが重要(聞いたものより読んだものの方が信憑性高)
どの情報を使うかはマインドフローによって決まる
しくみ化する(サミットストアの美し水のように)
プロダクトフローの数値化
数値化は比較的容易
改善は効率の良い下(売りたい商品)から上(あげる商品)に順に行う
6.戦略構築プロセス
1.すべてのツールで現状分析
2.BASiCSで全体の方向性を決定、マインドフロー、広さ深さで戦略を具体化
3.BASiCSで整合性をチェック
4.マインドフロー、売上5原則で数値目標を立て、優先順位を決定
5.BASiCS(特にSelling Message)、広さ深さ、プロダクトフローで戦術を作成
6.マインドフロー、売上5原則で効果測定を継続的に行う
ツールを使うことで、脳に思考を強制させることができる
強制は思考の触媒となる
色々な人とワイガヤでやる方がよい(ツールを通せば一貫性は確保できる)