「創刊900号記念特集 水彩画家・大下藤次郎」(「みづゑ」、1980年

 神保町での打ち合わせの後、古書店をぶらぶら見て歩いたら、「創刊900号記念特集 水彩画家・大下藤次郎」(「みづゑ」、1980年)を格安で販売しているのを屋外の棚に見つけた。A4変形判124ページに渡る特集は壮観だ! 水彩画家といえば浅井忠が知られているが、浅井のあっさり描く水彩画と違って、こってりと描きこむ藤次郎の水彩画の方が私は好きなので、だいぶ前から資料を集めていた。いずれ日本の水彩画の歴史について書いてみたいと思っている。










 大下藤次郎(1870-1911)は近代日本における水彩画のパイオニアで、1893年(明治26)、画家を志し上総を旅行中に自然の豊かな美にめざめ、大きな一歩を踏み出す。
 その後、みずから制作に携わるかたわらその指導に努め、ベストセラーとなる水彩画入門書『水彩画の栞』(1901年)を執筆し、雑誌『みづゑ』を1905年に創刊するなど、一連の教育普及活動は、日露戦争の前後から青少年を中心とした水彩画の大きなブームを呼び起こした。漱石が親交のあった浅井忠を登場人物のモデルにして書いたといわれる「三四郎」には、登場人物が水彩画を趣味にしているシーンがあるほどのブームだったようです。