病院での出来事
普段からあそこが痛い、ここが変、腹が緩いと、自分の身体に文句ばかり付けている。
「おっちゃんは絶対長生きするって」と慰めてくれてるのか、舐められてるのかわからないが、親しい女性たちは肩をバンバン叩いてくれる。彼女たちも寄る年波には勝てず、ギックリ腰だとか、微熱が続くだの辛そうにしている。しかし、生きるということに関する執着の違いからして、連中のほうが間違いなく長生きする。
私は、購入済みの読んでいない本、購入はこれからだが読みたい本を全部読んで、バックパック担いで行きたいところに行った後であれば、いつお迎えが来てもかまわない。いつ来るか少し楽しみでもあるね。
誰もどんなとこに行くのか、行かないのか、三途の川を渡るのか、光に包まれるのか、これ以上ない快感を味わうことができるのか教えてくれてないんだから、ある意味、私が最初の体験者になるわけである。
超一人だけの探検、冒険。究極の旅である。
臨死体験は立花隆がさんざん調べて本にしてくれているが、結局「わからない」のであるから、あれを信じていると、違っていた時のショックが大きいだろうから、まあ、そんなこともあるんですかね、くらいで、サラッと流しながら頭の片隅に置いている。
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亡くなってから、報告がないのは残念である。
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どうも普通の方々よりは、いわゆる病気が多いほうのようなので、「あららら、今度はこっち?」ってな感じであちこち寄らせていただいている。
昨日は六本木ヒルズ隣の大きな病院で定期的な診察に行った。
診察室に入るなり
「大倉さん、『ソロモン流』見ましたよ。あっ、大倉さんだって」
あの汚い顔のことか、触れて欲しくない。
しかし、ディレクターの大村君が同じく映っていたことを8人に言われたと威張っていたことを思い出し、ようやくこれで2人目と勘定しておいた。1人目は理容室のお嬢さんだった。しかし、2人じゃ勘定の仕様もない。
もしかして、私はものすごく友達の少ない淋しい中年なのだろうか。大村君、オッサンだけど、私から見れば、とんでもなく若いもんな。年取ると、友達減るから、ちゃんと友達とは顔見て話す機会を作っといたほうがいいよ。
汚い顔見た話で盛り上がっても仕方ないので、いつもと同じやりとりのあとに、このところの体調の悪さを訴えた。特に深刻だとは思っていないのだが、少々日常生活に不便をきたしている。
血液検査とCTをお願いすることになった。
血液検査はいつものルーティンなのでどうということもないが、CTはロンドンでちょっとしたことがあって、やっていただいたきりである。「へー」ってな感じだが、こういう検査は嫌いじゃない。
会社に勤めていたころは病気になれば、休めばいいのだが、現在簡単に仕事を休める状況ではない。仕事しなきゃ、すぐに食えなくなる。早期解決が望まれる。
血液検査のあと、小水を採ってくれとのこと。これは簡単。
すると、看護婦さんが急に頭をひねり始めた。
「下痢なんですよね」
「はい」
「便の培養も検査することになっているんですけど、どうしましょう」
なんで、どうしましょうなのかしら。
少し嬉しそうに悩んでいる。
「取れますか、ふふふ」
ふふふ、でも、げげげ、でも取るしかないでしょう。
「でも、下痢じゃあねえ」
どうやって取るか笑顔で数人と相談している。
すごいことを思いついたように
「トイレットペーパーをたくさん敷いて、そこに、ねっ、ふふ」
取りますよ、すごく小さなさじ一杯だけのことでしょうが。
心配して喜んでくれているのはありがたいが、そのくらいで途方にくれたりしない。この手のことでは100倍くらい困ったことを経験してるんだから。
ほんのちょっとした工夫で「さささ」と採取し、持って行った。
「あらーっ!ちょっとすごく早くないですか。大変じゃなかったですか?私たち無理じゃないかって言ってたんですよ」
「いえ、うまく取れましたから」
どうやったのかをすごく知りたそうだったが、あれこれ説明する趣味はない。
にっこり笑って、人を斬る、じゃない、気持ちのよい笑顔で便の入ったカプセルを渡して立ち去った。
かっこいい、と一瞬思ったが、便の入ったカプセルを渡した時点でまるっきりかっこよくないじゃん。
そんなことで、昨日は非常に充実した病院体験であった。
ただ、安心代は高くつく。本当に病気だったらもと取ったことになるのか?
夕暮れのガンジス河。ここで死んで、河に流してもらえればと願っている。