思い出の絵本

ブログ「冠婚責任者会議」で紹介した訓話の後、ささやかな懇親会が開かれました。
そのとき、ある結婚式場の支配人がわたしの隣に座ったのですが、彼の顔は真っ黒に日焼けしていました。わたしが「どうしたの?」と訊ねると、彼は「子どもたちを連れて、海に行ってきました」と答えました。彼の自宅は北九州なのですが、現在は遠い地にある結婚式場の支配人として単身赴任しています。お子さんが3人いるのですが、普段は父親として遊んであげることもできません。この夏、帰省した彼は家族で海水浴に行ったのだと語っていました。


なつかしい『おとうさんとうみへいったんだよ』



その話を聞いて、わたしは懐かしい気がしました。
わたしが子どもを連れて海水浴に行った日のことを思い出しました。もう15年以上も前になるでしょうか。たしか長女が4歳ぐらいだったので、16年も昔のことになりますか。
ちょうど長女が東京から帰省しているので、海水浴の思い出について話しました。すると、彼女は1冊の絵本を自分の部屋から探して見せてくれました。
『おとうさんとうみへいったんだよ』しばたしんご/さく たむらなおみ/え(偕成社)という絵本です。今では絶版のようですが、奥付を見ると1994年6月1刷となっています。




『おとうさんとうみへいったんだよ』より



おお、なつかしい! この本には思いでがたくさん詰まっています。
マキちゃんという小さな女の子が、お父さんに海に連れて行ってもらう話です。
「おとうさん、うみって おおきくて いい きもち!」
「おとうさん、うみって とっても とっても だーいすき!」
大喜びで叫ぶマキちゃんの姿が、とても微笑ましいです。
マキちゃんは当時の長女と同じくらいの年齢で、4歳〜5歳の幼稚園児といったところでしょうか。この絵本を読んで、わたしも長女を実際に海に連れて行ってあげたのでした。


今ではもうセピア色の思い出ですが・・・・・



ブログ「長女の誕生日」に書いたように、長女と海に行ったとき、まだ次女は生まれていませんでした。わたしは松柏園ホテルの総支配人を務めており、日曜や休日はもちろん、なかなか休みが取れない日々を過ごしていました。そのとき、会社のほうもけっこう大変だったのです。でも、幼い長女をどこにも連れていってあげられないのが不憫で、夏休みに1日だけ山口県の西長戸に海水浴に連れていきました。長女の嬉しそうな顔を見て、「いま、自分は自分の娘と一緒に海水浴をしているのだ」という実感が強く湧いてきて、ものすごい幸福感に包まれたのでした。今ではもうセピア色の思い出ですが・・・。


絵本の前の見返しに貼られた写真

絵本の後の見返しに貼られた写真



さて、この絵本には、じつは秘密があります。
それは、前と後の見返しに、わたしと長女の海水浴のツーショット写真が貼り付けてあることです。前の見返しには海での写真、後の見返しには砂浜での写真を主に貼ってあります。
これは、わたしのアイデアです。海水浴の写真をアルバムに貼るよりも、海水浴の絵本に貼ったほうが絶対に思い出に残ると思ったのでした。
それにしても当時のわたしの肉体は引き締まっていましたねぇ。
あれから16年が経って、すっかり体のたるんだ中年オヤジになってしまいました。(涙)
その代わりに、長女は20歳となり、年頃の娘らしくなってきました。
我が身の衰えを嘆くよりも、我が子の成長を喜ぶ。これが親心というものなのでしょうね。
くだんの支配人のように、冠婚葬祭施設やホテルといったサービス業の現場で働く社員のみなさんは、休みも不規則で本当に大変だと思います。でも、子どもさんのいる人は、なんとかやり繰りして、少しでも親子で触れ合う時間を作ってほしいと願っています。
我が子と一緒に海で日焼けした某支配人の顔は、キラキラと輝いていました。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年8月22日 佐久間庸和