「Sgt.Pepper’s」から40年

 6月1日は「Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band」がリリースされて40周年でした。昨年6月が来日40年で日本のファンは盛り上がりましたが、今回は世紀の傑作が40周年ということで、きっと世界中のブログが(笑)同じような話題で盛り上がっているんでしょうね。僕ももちろんこの話題です。
 で、ふと思うんですが、このアルバム、世間的にはビートルズの最高傑作というとで認知されていて、そのまんまロックの最高傑作となっていますが、そのわりにコアなファンからはそこまでの絶賛をされていませんよね、僕の印象ですが。僕自身、大好きな作品ではありましたが、「一番!」という感じだったかというと自信ないです。史上初のコンセプトアルバムという評価に対しては、例えばメンバーからまで疑義が表明されたりして、なんだか座りが悪い感じです。あんまり高い外部からの評価に対して、コアなファンは一線を画しているのかも知れないですね。
 でも改めて考えてみると(僕は今これを書きながら流しています。今日はずっと聴いていました)、やっぱり名作・傑作の名に恥じないものだと実感します。架空のコンサートという舞台設定以外にこれといったコンセプト(これ以後70年代半ばあたりまで流行するスタイルとしてのコンセプトです)がないという言い方もありますが、僕はそれによって現出した統一感は素晴らしいと思います。個々の曲を聴けばそれぞれ別個の音作りをしているにも関わらず、全体としてはひとつの作品として成立しているという部分は、それまでのアルバムの典型からも大きく踏み出したものですし、その後たくさん出た自称「コンセプトアルバム」を考えても、とんでもなく高い質だと思います(僕はこの時期の有名作はたいがい聴いているので、ここについてはそれなりに自信を持っています)。
 マイク・ルイソンの「ビートルズ・レコーディングセッション」は全ページ必読の名著ですが、この中でも際立っているのが、1967年のレコーディングです。特に「Sgt.Pepper」の録音時期については、メンバー、スタッフが一丸となって、まるで何かに取り憑かれたように音楽を創造している様子が克明に記されています。僕は愛着度でいうと前作にあたる「Revolver」が上なんですが、時期も近くてプロダクションワークも同等、レコーディング環境も同じ、演奏もアレンジも高レベル、楽曲はもしかすると上をいっているかも知れないこの作品が、ただひとつどうしても「Sgt.Pepper」にかなわない(と思われる)のが、レコーディング現場での彼らの熱意でしょう。僕は「Strawberry」での2つのテイクを繋ぐ話、「A Day In The Life」のオーケストラダビングでの、最後のセッション後に図らずもスタジオで拍手が起こったという話が好きなんですが、そうした熱意や熱気もコミで、このアルバムは傑作になっているんだと思います。
 このアルバム以前にも名作アルバムはたくさん出ていました。でも「Sgt.Pepper」以後、ほぼすべてのアーチストが自分たちの録音キャリアを「アルバム」単位で考えるようになり、聴衆もそれを受け入れていきました。僕は「Sgt.PePper」の最大の功績のひとつは、「アルバム時代」を事実上定着させたことだと思っています。まさに、1曲目から「A Day In The Life」までを順番に最後まで聴く事で初めて作品に接したといえるものだと思います。
 さて、今夜はもう1回「Sgt.Pepper」聴いて寝ましょう。みなさんおやすみなさい。

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド

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