子猫の夢

よしこの子猫を見に行った。アーティストである彼女の広くないアパートは、ダンボールとコーヒーの麻袋で作った「にゃんぐるジム」各種でいっぱい状態、それを縫って人間は歩く。ちょっと前までは話をすればアート一筋で近隣のカフェなどで華々しく個展を開いていたのが、現在は「ナイジョー」(Nagel)のことばかり。子供、というより孫に近いかわいがりようである。去年愛猫タイソンをなくしたのでBFの「隣の男」Justin君がバースデープレゼントにもらってきてくれた。外人らしからぬおしょうゆ顔、色は「ブロンド」で筋肉質(これは日々にゃんぐるジムでのワークアウト効果らしいが)。いろいろある手作りおもちゃのなかでもユニークなのは、黄色いコードの「へその緒」でコードの端っこをベルトに挟みナイジョー君をじゃらす。よしこ=ナイジョーにはすでに深い絆があるのでJustin君はこの「へその緒」で絆作りにはげんでいるのだそうだ。からだのおおきいハンサムボーイの彼が黄色いひもをおなかにつけてジーっと横たわり子猫と絆を結ばんとしてる図を想像してると、最近見た「アバター」をおもいだした。尻尾、あるいはお下げ髪の先っぽで、馬や鳥と交流して「絆」を作り、命の木の声を聞く。思うだけで、心が通じる。「もう、絵なんか描いてられへん」という彼女は、ひねもす子猫と遊ぶ。

荘子は夢で蝶になりきって飛び回り、夢から覚めて愕然としてしまう。蝶は夢なのか、それとも自分が蝶の見ている夢なのか。「アバター」では科学的にその二つの世界へ行き来できるようになるわけだが、主人公は、大いなる自然、命の母との絆を持って生きるほうを選択することになる。子猫と以心伝心で遊ぶよしこは、寝てもさめてもそこにいる子猫の夢になったように見えた。