防風通聖散
防風通聖散の処方名には、主薬である防風(ぼうふう)という薬草が含まれていることから名付け
られました。また、通聖(つうしょう)には聖人(優れた人)という意味があり、防風が主薬にな
った優れた薬という意味が込められています。防風通聖散は18種類の薬草から構成されています。
大きく5つのグループに分かれます。まず、①防風(ぼうふう)・荊芥(けいがい)・麻黄(まおう)
・薄荷(はっか)・連翹(れんぎょう)、生姜(しょうきょう)のグループは発汗させて余分な体熱
を放散させ、②山梔子(さんしし)・黄芩(おうごん)・石膏(せっこう)・桔梗(ききょう)
のグループは体の炎症や余分な体熱をとり、③当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・芍薬
しゃくやく)のグループは血行を促進して新陳代謝を促進します。さらに、④白朮(びゃくじゅつ)
・滑石(かっせき)のグループは利尿を促進し余熱を冷まし、⑤大黄(だいおう)・芒硝(ぼうしょう)
・甘草(かんぞう)のグループは調胃承気湯(ちょういじょうきとう)という処方で、便通を改善し余熱
をとります。これらの薬草の働きからわかるように、からだの熱(暴飲暴食などにより余ったエネルギー)
を取り除くという共通の働きで、のぼせ、ほてりなどの熱証を改善するのです。つまり体内に詰まったも
のを除去して、通りを良好にし、その結果、身体が軽くなった状態をもたらしてくれます。


防已黄耆湯
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は汗かきで、関節が腫れたり、足がむくんだりする方の漢方薬です。
このような訴えは太っている方に多く、自分の体重が下半身に負担を掛けています。また、その肥満も
ブヨブヨとした水太りというのが特徴です。この水太りは脂肪太りタイプと違って、大食していないの
に太ってしまったという方です。さらにダイエットを熱心に行っているが、全くやせない方です。脂肪
ではなく、体内の水分代謝がうまくいかず、余分な水をためて太ると解釈されています。結局、基礎代
謝が悪くて、冷え症の女性に多いトラブルです。
この処方名にある防已(ぼうい)と黄耆(おうぎ)というのは、処方を構成する6種類の生薬の主薬です。
防已黄耆湯は、2つの主薬の名をとって付けられました。「金匱要略(きんきようりゃく)」という漢方の
古典に紹介されています。
水毒(すいどく、湿邪と同じ)タイプの方では、水をたくさん飲んでも尿量が増加せず、体にためこんでし
まいやすい傾向があります。この水分が関節痛などのさまざまな不調の原因となりますが、防已は利尿を促
進して、関節や体に溜まった余分な水を尿として排泄し、この原因を取り除きます。
また、水毒の方では、むくんだり、逆に汗が出すぎるといった方もあります。これは胃腸機能の低下などか
ら、体内の水分分布がうまくコントロールできなくなったために起こる症状です。防已黄耆湯のもう一つの
主薬である黄耆は、胃腸機能を高め、異常発汗しないように皮膚を強化する働きがあります。
防已黄耆湯は、利尿や異常発汗を是正して体内の水分バランスを整えることにより、関節痛やむくみなどの
原因となる水毒を改善する漢方薬です。