経済が元気ってどういうことだ?2(リフレ&イノベーション編)

前回の続きです。
ブクマでも指摘があったように、前回の話では(長さの都合もあり)経済のお金そのものをいじる面については触れませんでした。おそらく指摘された方のおっしゃりたいことは「リフレ」について、ではないかと思います。
ネットでは特に人気の「リフレ」。どんなもので、どういう効果があるのか。
まず書いておきますが、「リフレ」は前回書いたような「理想による経済牽引」と別系統のアプローチではあれ、対立したり矛盾したりするものではありません。
「リフレ」とはごく簡単に言ってしまえば「マイルドなインフレを起こすこと」
インフレを起こすということは、物価が徐々に上がっていくということです。
するとどうなるか。
前回書いたように、何かの「理想」に近づくためお金を使おうか、どうしようか、と迷っている人物がいた場合、「早めにお金を使ったほうがよい」と背中を押す効果があるのです。何しろ待てば待つほど物価が上がるのですから。
すなわち「リフレ」は、「理想」がお金を使うことで実現できるものである限り、経済行動を常に促進する方向に働くというわけです*1
だから他の政策がどうあれ、金融を介したリフレ政策はとりあえずやっといて損はないと思います。いろいろな人が言っているように、手術における輸血のようなものでしょう。


さらに続き。ちょうどいい記事があったので、便乗させてもらいます。
雑種路線的イノベーション政策試案

確かに、イノベーションイノベ(ryと、上も下もすごい騒ぎですね。
ざっと見ると、日本ではイノベーションのことを「技術・経営革新」だと思っている節があります。間違いではないのですが、それではまだ半分に過ぎません。
ドラッカー氏もいっていたように、イノベーションの真の姿は
「技術や仕組みを介して社会に新たな価値を生み出すこと」
なのです。前回のエントリでいうところの「理想」の提供です。IBMにとっての「パソコン」が有名ですね。優れたコンピュータ技術だけでは十分でなく、それを小さな組織で小さく使うというスタイルがイノベーションを生み出した。
イノベーションによって経済をまわそうという発想自体は結構なのですが、その何たるかを理解しておかないとアプローチを誤ることになります。

イノベーションは新たな価値や理想を生み出しますが、これはトップダウンで押し付けられるものではありません。思わぬところから飛び出したり、人や社会の流れから自然に生まれたりするものです。だからこそ新しく、強みがある。
どうすればイノベーションが生まれるのか。ドラッカーですら、決定的な答えは持っていなかったでしょう。しかし一つ確かなのは、
多様性とそれを支える土壌が不可欠
だということです。多様な価値や理想の中にこそ、イノベーションの種が潜んでいるからです。
ただ、多様性というのは聞こえはいいのですが、それ自体は意外と脆弱なものです。生物界でもそうですが、一元的で強い淘汰圧にさらされれば、あっという間に寡占状態が生まれ、多様性は消えうせます。
また政治的には、非常に分割統治されやすくなります。政治的に無力では、いかに素晴らしいアイデアがあっても社会に還元されることはありません。
多様性が死ねば、イノベーションは生まれません。生物でも社会でも、この点は同様ですね*2
つまり日本にイノベーションを期待するなら、多様性の持つこれらの弱点を補うようなシステムをまずは構築してやる必要があるわけです。
さて、安倍政権の方針は大丈夫でしょうか??

*1:もちろんインフレが行き過ぎてしまうとそれどころではすまなくなりますが。高血圧のように、体をボロボロにしてしまいます

*2:ドラッカー氏はこういった多様性を支える土台としてNPOに注目していたようですね