大口広司さんがお亡くなりになりました。

slowlearner_m2009-01-27


もうニュースやワイドショーでお知りになった方も多いとは思いますが、大口広司さんが1月25日お亡くなりになりました。58歳だと聞きました。テンプターズのドラマーであり、俳優であった大口さんは肝臓癌で亡くなったそうです。

最期にお声を聞いたのは、鈴木卓爾監督作品『私は猫ストーカー』のキャスティングをすすめている11月下旬のことです。ある役を、大口さんにお願いしてみようということになったのですが、以前からの事務所をお辞めになっていて、ご本人の携帯にお電話したのでした。ご病気のことは、全然知りませんでした。結局、役そのものが変更になり、お願いはできなかったのですが、その電話のときも、夜なので酔っていらっしゃるようで、大口さんはフリーってことなんですか? とお聞きすると。そうだね。仕事ないと困っちゃうんだよ、と電話の向うで、大きな声で笑っていらっしゃいました。


大口さんとは、廣木隆一監督の作品を通して、知り合いました。確か『ラ・マン』の頃でしょうか。
その後、廣木監督を囲む飲み会で一緒になることが多く、しかも隣の席になることが多く、飲みながらいろいろな話を伺ったものです。

その時も、ドラマー大口広司と俳優大口広司は、どう接続しているんですか? などと聞き、そうだね、俳優大口広司の時も演技をしながら、頭の中ではドラムを叩いているんだよ、とおっしゃっていました。それから、話はストーンズのことになり、私も大口さんもそんなに好きじゃないと言いながらビートルズは、やっぱり凄いという話になりました。

そう言えばさ、と大口さん。
俺、ザッパとジャムったことがあるんだよ。
ええっ、ザッパって、あのザッパのことですか?
ザッパとは、もちろんフランク・ザッパのことです。テンプターズ時代、西海岸にレコーディングに行って、ひとりで小さなライブハウスを回っていたのだそうです。そうすると、後ろの席から、ザッパが来た、と騒ぐ声がして、フランク・ザッパがその店に入って来たのだそうです。
ザッパは大口さんに近づくと、日本人か? ミュージシャンか? と聞いたそうです。ドラマーだと答えると、ザッパは怪しげな錠剤をくれ、ステージで出演していたミュージシャンと演奏を始めました。
それが、はじめてのドラッグ体験、と大口さんは笑っていました。
そのうち、ザッパが大口さんにお前もステージに上がってこい、と言い、よしッと立ち上がると、ドラッグで店の天井を歩いていたと。その後、ステージで一緒に演奏して、挙げ句の果ては、ザッパの家に連れていかれ、翌朝ホテルに帰ったそうです。自分でもそれがずっと信じられなかったらしいのですが、偶然そのライブハウスに居合わせた女性客と、その後出会う機会があり、本当にあったことなのだと確信したのだそうです。

ここにザッパとジャムった日本人がいますよ、横にいらした田口トモロヲさんに話しかけると、トモロヲさんも驚愕。その時、後年、ジョン・ルーリーと街角で偶然出会い、アート・リンゼイがいたラウンジリザースのリハーサルに一緒に行った話も聞きました。

大口さん、本書いた方がいいですよ、などと半ば本気、半ば冗談で笑ったのを覚えています。

でも、早すぎます。
飲み過ぎなんだよ、オヤジ。

ほんとうに寂しくなります。