(引越しの話の中で)
引越しでいちばん辛いのは、やはり引越しそれ自体。つまり、家財道具を運ぶことである。もちろん運送屋がやつてくれるのだが、その前の段階(箱に詰める)およびあとの段階(箱から出す)があつて、厄介なことこの上ない。おまけにわたしの場合には本の問題があるから大変です。
わたしの藏書なんてタカが知れたものですが、それでも、本だけで、二トン積みのトラック四台分ありました。
考えただけでもうんざりするでせう。一体どういふわけで、こんなに溜つてしまふのかしら。しかも、わたしの家では、空間を節約するため、本の紙函はみんな捨てることにしてるんですよ。これで函までつけてゐたら、どんなことになってゐたか、リツゼンとする。
男のポケット (1976年) P189 「引越し譚……」より
文庫本が一冊150〜200gくらい、単行本は造本や厚さで大分変わるけど300〜500g、ハードカバーでよっぽどのでも700〜800gってところですかね。*1
それが八トンって。
プロの文筆家や漫画家さんの蔵書量は多い、にしても半端じゃない。
しかもこれ、執筆時期は30年以上前ですからねえ。
今は一体・・・。
本を多く買う人でも、書斎を持ったり、倉庫を借りたり、建て増ししたり、ということが出来るんなら良いんですが、なかなかそれも簡単じゃあないし。
私が今一番欲しいものは足の踏み場です。はい。
丸谷才一のエッセイで「本」そのものやその関連を題材にしたのは色々有る、というか、多分テーマ別エッセイ集のようなものを纏めるとしたら上位に入ると思うくらいの量あるので、気が向いたら読んでみてくださいな。
本そのもの*2に関連したものだと
などが興味深く、面白かったです。