さよなら妖精

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

【あらすじ】

一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。気鋭の新人が贈る清新な力作。


良い小説だと思います。

ミステリとしての出来はあまりよくないというか謎自体があるのかないのかぐらいのスモールさですが、青春文学として良いと思いました。

出版されたのは2004年、ユーゴスラビアの解体の翌年です。穂信がこういう時事要素を入れた作品を出版するのは僕が知る限りこれだけです。何か思い入れがあったのでしょうか。

マーヤを通して外の世界へ憧憬を募らせていく主人公の自問自答に終始するため、オチの痛々しさが響きます。

人間は簡単には変われません