New World !

♪ Paranoid Android / Radiohead

精神状態が安定しない。

神保町の蔓の生えた薄暗いカフェに昼間から溜まりこんで、数冊のアントン・チェーホフを流し読みしつつ、宛先のない会社への手紙を書いて、自信たっぷりなおっさんから「代わりはいくらでもいるの」と言葉には出さぬものの厳しい調子で詰め寄られ、押し負けた状態になっている抑圧された毎日がつらくて、家に帰る前に路地裏に捨てられた廃材を蹴っ飛ばした、ら、予想外に大きな音が出たので元通り戻しておいた。本日も成果はゼロ。ふざけんな、と。

「ここまで来たらなりふりかまっていらんないよ!」って、からりと語る小学校の友人が名門私大出てレンタルビデオ屋に就職が決まって喜んでいた、が、彼のココロからの笑顔に対して、にこにこ能面のような顔を額に貼り付けつつ、そこまで落ちぶれるこたぁないんじゃないかと、帰りの道すがら思い出して冷笑する俺はたぶん悪い人間。

しかし、ここまできて結末が失業者とは・・・このごろよく眠れない。
全く眠れないまま面接に行くと絶対落ちてしまうことがわかったので、半年ぶりに壺からハルシオンを取り出して、ウォッカで流し込んで毎晩ばたっと寝ている。すばらしい寝覚め。服用量が増える前に仕事見つからんかいな。

それにしても。
薄暗いバーで人間の駄目な会話の断片を拾い集めるのが愉しくて仕方ない、が、そんな俺は気づいたら最後尾にいた。

薄汚い欲望が胞子のようにうようよ舞いおどる空間で自信たっぷりな会話を交わす男と女。

そのあいだで時折かわされる視線の交錯に、そして数十分後の筋書きどおりの展開に、蹴っ飛ばしたくなる感情をこらえつつ、今宵もしづかに小説の題材がしづんでいつた。