寅さんを見ました  6月21日 テレビ東京

男はつらいよ 柴又慕情」 (1972年)
マドンナは吉永小百合。「美人OLにひと目ぼれ、初夏の柴又恋の予感!?」

新聞を見ただけで、(ああ吉永小百合にふられちゃうんだなあ、寅さんかわいそうに、見てられないあ)
と、思いながらもチャンネルを合わせてしまいます。^0^






私は10代の頃は洋画専門。「メロディフェア」や「卒業」「ロミオとジュリエット」「シェルブールの雨傘」「マイフェアレディ」などなど、ビデオなどはなかった時代なので、どうしても見たい作品は銀座や池袋の映画館に通ったものです。
入口の分厚い防音ドアを開けるとそこはもう人の背中。立ち見で観れればいいほうで、入れ替えのときに滑り込んだ席に座った時は最高の気分でした。もう一回見たければ座り続けて観て、映画館を出たら夜だった、ということも。



そう・・・・
あの頃観た映画が輝いてみえるのは、そんな苦労が伴っていたからなんですねえ。

寅さん映画はそんなわけであまり観なかった。
はっきりいえば一段下にみていた。観る前からあら筋がわかっているような映画を毎年正月とお盆に上映するっていったいどういうことなのか。そんな冷めた目でみていたんですよねえ。






山田洋次監督の作品で衝撃を受けたのはなんといっても「砂の器」です。ハンセン氏病の父親と幼い息子の放浪のシーンは涙が止まりませんでした。
触発されてそのあと「学校」シリーズや「同胞」「幸せの黄色いハンカチ」「故郷」「家族」「遥かなる山の呼び声」「愛の賛歌」「霧の旗」「下町の太陽」「キネマの天地」「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」など立て続けに借りてきて観たものです。

ビルの爆破シーンやふっとぶ自動車。人が虫けらのように殺されるシーン。はやりの3DやCG、そんなものがなくても映画は作れる。
山田監督はなんのへんてつもない人々の生活の営みに温かい視線を注ぎます。
カメラワークは控えめで、「寅さん」のちゃぶ台を囲む夕餉のシーンはまるで演劇をみているような安心感があります。


「分かったよ、俺なんかいなくなりゃいいと思ってんだろう」

「誰もそんなこと言ってないでしょ・・・」

「寅さん、私、寅さんに会えてほんとうによかったわ」とマドンナ。
その一言が大きな勘違いにつながるのでしたぁ。ベンベン!!^0^

鬼籍に入られたお二人。いぶし銀の演技でした。


今回のマドンナはかわいいけど描き方は表面的な印象。寅さんの気持ちにはまったく無頓着でやたら「会えてよかった」を連発。
挙句、「私、やっぱり結婚しようと思うの」    があああああああーん!   
 がっくりうなだれる寅さん。それに気付きもせず、愛知で陶芸をしている婚約者の話を無邪気に語るのでした。ああ残酷…^0^
 吉永さんのミニスカートが新鮮でしたぁ。(笑)


でも、
つくづく思うのは寅さんというのは、つまるところ自分が一番可愛いんだなあということなのです。惚れるのは早いけど責任を伴うことからはスルリスルリと逃げ回ります。せっかく二人きりになれたのに、交わす言葉がなくてもじもじ、そこにさくらが入って来てほっとしてとたんに態度が大きく・・・なんてねえ、いい年して。
中には寅さんを好きになったマドンナもいたのに、それすらいい格好して振ってしまいますからねえ。^0^
そこが寅さんの狡さであり悲しさなのかもしれないなあ、うん。そういう意味では私はさくらの、どこか思いつめたような生き方が好きなのです。