王維「相思」

 こちらに来たばかりの頃、『王維詩集』(岩波文庫)を読んでいた。全体として、〈秋〉の印象が強かった。岩波文庫版の最後に収められた「相思」も秋を詠ったものなり;


紅豆生南国
秋来發故枝
勧君休採〓*1
此物最相思
(p.260)
 ところで、妻が読んでいた


   楊小亮編『国学経典 詩』
       北京出版社、2004


という本に所収の「相思」は、


紅豆生南国、秋来發幾枝。願君多採〓*2、此物最相思。
(p.130)
となっている。
 編者のひとりである都留春雄氏によれば、岩波文庫版は明代に刊行された「顧玄緯本」*3に依拠しているという*4。「故枝」については、「趙本は幾枝に作る」、また「休」についても、「趙本は休を多に作る」と註せられている*5
 一方は摘みとるなと勧告し、他方は沢山摘みとることを願う。どちらが〈正しいテクスト〉なのかはわからない。どちらがお好みだろうか。私は取り敢えず前者。
 季節は既に春を待つ冬なれど、不図想い出したので、取り敢えずメモした次第。

*1:xie2. てへん+頡。GB6302

*2:xie2. てへん+頡。GB6302

*3:Cf. 入谷仙介「解説」、p.283

*4:「附言」、p.287。

*5:岩波文庫版、p.261。