同期発火する海馬ニューロンたちが見せた時空間的な市松模様と、その基本構造。

論文紹介#12
 東大の池谷裕二准教授のとこからおもしろ論文がでたので紹介〜。ところどころのニューロンが市松模様みたいに同期してぴかぴか光るムービーが読売オンラインで紹介されてましたね〜。見ましたか?


Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 May 17.
Circuit topology for synchronizing neurons in spontaneously active networks.
Takahashi N, Sasaki T, Matsumoto W, Matsuki N, Ikegaya Y.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20479225


 ニポウ盤(Nipkow disk)を使った高速Ca2+イメージング、ROTing(reverse optical trawling, Sasaki et al., 2009)に、クラスター分析と大好物が満載なのですが、今回興味を引かれたのはダイナミッククランプ(Dynamic-clamp)っていう手法。なんともおもしろテクニックですね〜。
 このダイナミッククランプは電位固定法(Voltage-clamp)の変法で、ホールセルパッチした細胞の膜電位をPC(パソコン)で制御して、PSP(postsynaptic potential, シナプス後電流)くらいの時間解像度で(あるていど)自由に上下させるテクニックです。たとえば、事前に記録しておいた活動パターンをパッチした細胞で再現したり、PCで独自に生成した膜電位のパターンを生ニューロンで実行したり、さらにはPC内でシミュレートした疑似ニューロンとリアルタイムに通信(?)させたりできちゃうわけですね。
 著者らはこの手法を同定済みの入力パターンを与えるために使ったようです。たとえば、二種類の細胞に同じ入力(同期した入力)を与えてみたり、同期確率の異なる入力を生成して与えてみたり。ダイナミッククランプってのはこんな風に使えるんですね〜。なるほど。
 この方法を使うと、ニューラルネットなどでPC内に作った疑似神経回路を生の神経細胞につなげることも出来そうですね。あれ?でもその場合、パッチしている細胞に接続している他の生ニューロンからの入力は無視されちゃうのかな?膜電位はPCの指示通りに動くわけだし。JNSのTool boxに出てた記事(Economo et al., 2010)でも読んでもうちょっと勉強しましょうかね。あ、話がそれましたね。
 今回の手法の限界についても考察(Discussion)で言及してます。曰く「樹状突起内での計算は考慮してない。」(意訳)。樹状突起の複数箇所から同時記録を試みているそうなので、樹状突起内での計算をシミュレーションして組み込んだダイナミッククランプはできそうですね。この樹状突起からのマルチパッチと以前紹介した樹上突起の局所Ca2+イメージングと組み合わせるとおもしろそうですね。今後の展開をわくわくしてお待ちしてます。


ほなまた
大学院入学希望者向けの研究室情報。名大環研神経系1(視覚神経科学)


参考文献


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