「ヘイトフル・エイト」感想


 クエンティン・タランティーノ監督・脚本サミュエル・L・ジャクソンカート・ラッセルジェニファー・ジェイソン・リー他出演。南北戦争終結から数年後のワイオミング州、猛吹雪の中、偶然居合わせた8人による、壮絶な騙し合いを描くミステリー西部劇。

 「カルト映画界の巨匠」「永遠の映画ヲタク少年」こと、タランティーノの8作目となる監督作品。何だかんだいろんなところで名前を見るので、もっといっぱい撮っているイメージがあったが、普段は脚本や製作がメインらしい。聞けば、ジェット・リー主演の「HERO」や、トニー・ジャートム・ヤム・クン!」にも、彼が製作として関わっているとか。へぇ、知らんかった。

 さておき。いつもの「悪ノリ、悪趣味、悪ふざけ」の3拍子は健在。差別用語放送禁止用語が乱れ飛ぶ、ひたすらムダに長い会話劇と、過剰なほどのバイオレンス描写の目白押しで、映画ファンなら待ってましたと大喝采、そうでない人はなんじゃこりゃあと唖然とポカン間違いなしの内容。

 ストーリーはおおよそオマケみたいなもん、というより「この俳優にこういう役をやらせたい」、あるいは「この俳優とこの俳優を、こういうシチュエーションでこういう風に撮りたい」というタラの思惑を具現化させるための小道具でしかなく、往年の名作(またはカルト作)へのオマージュや、タラ本人の趣味を除けば、むしろこのシチュエーションが成立されるなら、ぶっちゃけ時代も場所も状況さえも、どうでもよかったのでは?という印象。
 とはいえ、それだけ趣味丸出しの好き勝手に撮りながら、ちゃんと人から金の取れるモノに仕上げてくる辺りは、さすがと言えなくもない。付け加えるなら、「この俳優に〜」に関しても、その俳優のファンだからこそ、ポテンシャルを最大に活かせる役を用意し、その上で面白いモノを作ろうとしているのだから、その点は素直に評価するべきだと思う。

 が、それはそれとして、いくら何でもこの内容で約3時間は長すぎる(笑)。しかも、前半のほとんどは上記した会話劇で、ために体感時間がより長く、瞼がより重く感じられたのは、正直いただけないところ。おそらく、やりたい事を全部ぶっこんで、ガッチガチに隙間なく敷き詰めた結果と察するが、物事には何でも程度、限度がある。
 まあ、タラの事だから、本当は「8」にちなんで、全尺8時間の映画を撮ろうとしたのを、周囲に止められて、泣く泣く今の尺に収めた可能性もなきにしもあらずだが、わざわざ「Ultra Panavision 70」なんて半世紀近くほとんど使われる事のなかったキャメラまで持ち出しての撮影なのだから、映画ヲタクここに極まれり、と言えなくもない。確かに、映画に対する狂気にも似た愛情は、しっかりと伝わった。

 もしかしたら日本映画界復興のヒントは、この男の頭の中にあるのかもしれない。もっとも、こんなクソ長い映画ばっかりになっても困るが(笑)、マニア向けと一般向けの程よいバランス、またはどちらかにいい形で突き抜けるという意味では、本作にそのアイデアの一片が隠されているような気がしなくもない。反面教師的な面も含めて(エー)。

 ハイ、今回はこの辺で。

 ☆☆☆★★+

 ポロリもあるよ!(マテ)星3つプラス!!