トランペットよりオルガン

 昨日は、ギシギシと痛む腰を気遣いながら、仙台に行っていた。東北学院大学主催のレクチャー・コンサート「時代の音」、今年度の第3回(最終)である。
 今年度の第1回に行った時少し書いたが(→こちら)、なにしろ今年はテーマが「トランペット」なので、皆勤賞を狙ったが、第2回は仕事の都合で行けなかった。腰が痛み始める前は、時間が取れるかどうか分からず、腰が痛み始めてからは、体調が不安で、仙台駅から学院大の礼拝堂(普通なら20分くらい)まで歩く自信さえなかったので、前売り券は買っていなかった。昨日も、朝からさんざん悩んだが、ナチュラル・トランペットの音を聞くという貴重なチャンスへの執着が、腰の痛みをわずかに上回った。腰の痛みが軽かったのではない。執着がいかに強かったか、ということである。娘に靴下を履かせてもらい(笑)、ほとんどすり足で家を出、バスに乗った。
 座席のスペースがさほどゆったりしていない高速バスに1時間半乗っているのはつらかったが、それでも路上で倒れることなく、ほぼ開場時刻に東北学院大学土樋キャンパスに着いた。
 昨日の出演者は、第1回のメンバーから4人減って、ジャン=フランソワ・マドゥフ(トランペット)、三宮正満(オーボエ)、今井奈虬子(オルガン)である。スイス在住の超一流トランペット奏者を、連続する3日間ではなく、9月、11月、2月と3回呼んで来られるというのは信じがたいことである。
 今回は17〜18世紀のロンドンが舞台。王政復古後の音楽事情を、トランペットを軸に考えるというものだ。作曲家で言うと、パーセル、ブロウ、フィンガー、コルベットヘンデル、ボイスである。
 レクチャーとしての価値はたいしたことはなかったけれど、コンサートとしては良かった。柔らかなナチュラル・トランペットとオーボエとオルガンの音が、実にうまく溶け合って、心地よい響きに身をゆだねることが出来た。学院大学土樋キャンパスの礼拝堂は、大きさも響きも理想的。現代の巨大なコンサートホールでは何とも頼りなくふにゃふにゃと聞こえる古楽器が、なるほど、元々はこのような場所で演奏されるために存在する楽器だったのだと納得できた。本当に素朴で温かいいい音だ。
 申し訳ないが、主役であるトランペットよりも、オルガンに心引かれた。礼拝堂備え付けの大パイプオルガンではなく、移動式のポジティーフ・オルガン(横田宗隆という日本人が昨年作ったもの)が使用されていたのだが、音自体が美しいだけでなく、ナチュラル・トランペットやオーボエと完璧に調和している。移動式とは言っても、高さは2m半くらい、幅は1mあまり(?記憶曖昧)というそれなりに大きなものである。運んでくるのは大変だ。パイプオルガンがあるのに、どうしてそんな面倒なことをしたかというと、私も始めて知ったのだが、ポジティーフ・オルガンはピッチ(音高)や調律(とは何か、明日にでも書こうかな。ピアノの調律を思い浮かべて、分かったような気になってはいけないのだよ。)を変えられるため、トランペット、オーボエと最も美しく響き合う状態を作り出すことがことが可能なのだそうだ。オルガンの両脇が開けっ放しになっていたので、休憩時間に一生懸命のぞき込んでみたが、どうすればそんなことができるのか、皆目見当がつかなかった。こちらのレクチャーこそしてくれないかなぁ、と思った。
 アンコールで演奏されたのは、ヘンデルのオルガン協奏曲。管弦楽のパートをトランペットとオーボエで吹く。もちろん、主役は独奏楽器であるオルガンだ。トランペットをテーマとしたレクチャーコンサートで、どうしてこんな選曲をしたかは知らないが、今井さんの腕が確かだということもあって、とてもよいフィナーレになった。
 帰路は時間の都合で電車。背もたれが垂直な電車のシートの方が、バスよりも腰には優しかった。う〜ん、早くなんとかならないかなぁ?この腰痛。