DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 キアタイガース

「11回目の頂点へ」 
2017年成績 : 87勝56敗1分け(韓国シリーズ優勝)
チーム総合採点…100点


1. 【史上最多11回目の韓国シリーズ優勝】
 2017年シーズン、前身のヘテタイガース時代から通算して史上最多11回目、キアタイガースとしては8年ぶり2回目の韓国シリーズ優勝を果たした。その道のりを振り返る。
 

 2016年はレギュラーシーズン5位で5年ぶりにポストシーズンへ進出し、キム・ギテ監督就任から3年目となる2017年を迎えるにあたって上り調子にあった。そこに4年100億ウォンという超大型契約でFAを行使したチェ・ヒョンウがサムソンから移籍し、近年チームに足りなかった不動の4番打者を補強したことで、開幕前の評価は高かった。
 3月31日、サムソンとのレギュラーシーズン開幕戦でナ・ジワンの2本塁打、先発の韓国2年目の外国人投手ヘクター・ノエシの好投で勝利すると、開幕後の10試合で7勝3敗と順調なスタートを切った。さらにチームの弱点を補強するため、4月7日にSKとの4対4の大型トレードを断行した。この際に外野のイ・ミョンギ、捕手キム・ミンシクと、のちにレギュラーに定着した選手を獲得した。左腕エースのヤン・ヒョンジョン、ヘクターが好調を維持し、チェ・ヒョンウも4番として打点を積み重ねチームは好調を維持し、NCとの首位争いを続けた。
 ヘクター、ヤン・ヒョンジョンに次ぐ先発3番手として、24歳のサイドハンド右腕イム・ギヨンが台頭した。さらに2016年9月に軍から除隊され、2017年本格的に復帰を果たした二塁のアン・チホン、ショートのキム・ソンビンの2人の主力内野手たちが攻守に活躍し、チームの好調を支えた。5月28日のロッテ戦では、延長10回裏に20歳の若手チェ・ウォンジュンの満塁本塁打で勝利するなど勢いに満ち、50試合で33勝17敗と勝率は.660を記録し、首位を快走していた。
 6月23日から25日までの2位NCとの3連戦で3連敗を喫し、レギュラーシーズン144試合の半分を超えた73試合目でNCと同率首位に並ばれた。だが6月29日のサムソン戦で主砲チェ・ヒョンウの5打点などシーズン最多の22得点で大勝し単独首位に立つと、7月4日のSK戦まで7試合連続2ケタ得点のプロ野球新記録で7連勝と再び勢いに乗った。7月5日のSK戦では最大11点差を逆転したが、8回裏にキム・ユンドンが逆転を許し、8試合連続2ケタ得点となったが17-18で逆転負けを喫し、抑えの切り札不在が喫緊の課題となって浮上した。7月11日のNC戦ではヘクターが開幕からの連勝を14に伸ばしたが、7月23日のロッテ戦でシーズン初めて敗戦投手となった。他球団とのトレード期限となっていた7月31日、ネクセンとの2対2トレードで2016年の最多セーブ投手キム・セヒョン、守備要員としてユ・ジェシンを獲得した。
 8月3日のKT戦で、外野のレギュラーとして活躍していた外国人選手バーナディーナがサイクルヒットを達成した。しかしイム・ギヨンの負傷離脱により、決して厚いとは言えない先発投手陣の頭数が足りなくなり、控えの層が決して厚くはなく主力を休ませられないためチーム状態は下り坂となった。NCに代わって2位に浮上したトゥサンとの差が徐々に縮まってきたが、9月2日のネクセン戦までの5連勝で少し差を広げた。だが外野のレギュラーとして活躍してきたイ・ミョンギが負傷で離脱し、この後9月7日のハンファ戦まで4連敗と勢いは続かず、絶好調のトゥサンの影が迫ってきた。9月22日のトゥサンとの直接対決で先発ヘクターが6回5失点と打たれ完封負けを喫すると0.5ゲーム差にまで迫られ、9月24日のハンファ戦で敗れるとついに同率首位に並ばれた。
 9月26日のLG戦で先発ヤン・ヒョンジョンが好投し再び単独首位に立った。しかし10月1日、最下位が確定していたKT相手に20失点の大敗を喫し、2位トゥサンとのゲーム差が再び0.5に縮まり、レギュラーシーズンの優勝争いは残り2試合となっても決着がつかなかった。10月2日のKT戦でヤン・ヒョンジョンが自身初となるシーズン20勝目を記録したが、優勝争いは最終戦の10月3日のKT戦までもつれ込んだ。そして最終戦ではヘクターがヤン・ヒョンジョンと並んで20勝目を記録し、チームも8年ぶりのレギュラーシーズン優勝、韓国シリーズ出場を決めた。

 
 10月25日からの韓国シリーズは、レギュラーシーズンの最後まで優勝争いを繰り広げたトゥサンとの対戦となった。本拠地・光州での第1戦は先発ヘクターが5失点でチャンスを生かし切れず3-5で敗れた。第2戦は終盤まで得点が入らない緊迫した展開となり、8回裏に相手のミスで1点を先制すると、ヤン・ヒョンジョンが完封し1-0で勝利した。そして敵地・蚕室で迎えた第3戦は4-3と1点をリードした9回表、2009年の韓国シリーズ第7戦で優勝を決めるサヨナラホームランを打った代打ナ・ジワンの2ランでリードを広げ、9回裏をシーズン途中にネクセンからトレードで移籍したキム・セヒョンが抑えて6-3で勝利した。第4戦は1回表にバーナディーナのタイムリーで先制し、先発イム・ギヨンも好投し5-1で勝利し、3連勝で優勝まであと1勝とした。
 10月31日の韓国シリーズ第5戦、キアは3回表にイ・ボムホ満塁本塁打などで5点を先制し、6回表に2点を追加したが、先発ヘクターが7回裏に2点を失うとリリーフも相手の勢いを抑えきれず6-7と1点差に迫られた。9回裏には第2戦で完封勝利を記録したヤン・ヒョンジョンを登板させたが、エラーなどで満塁のピンチを招くも何とか逃げ切り、キアが8年ぶりの韓国シリーズ優勝を果たした。韓国シリーズMVPにはヤン・ヒョンジョンが選ばれた。


2. 【チーム分析】
 8年ぶりに韓国シリーズ優勝を果たしたキアの原動力としては、何はさておいてもヤン・ヒョンジョン、ヘクターの20勝投手2人である。
 チーム防御率4.79は10チーム中5位で、先発の防御率は4.31で2位だったが、リリーフの防御率は5.71で8位だった。クォリティースタート(先発投手が6回自責点3以内の成績)は10チーム中1位の75試合で、シーズンMVP(最優秀選手)を受賞したヤン・ヒョンジョン、ヘクターの最多勝20勝コンビの存在があまりにも大きかった。他にはもう一人の外国人投手パット・ディーンが9勝、夏場に戦線を離脱したが先発として結果を残したイム・ギヨンが8勝(うち2勝は完封)を記録したが、先発5番手が定まらなかったことが8月の失速を招いた要因となった。
 先発陣の足を引っ張ることが多かったリリーフはシーズン前半から弱点として明らかであったが、チームの好調の前に隠れていた。チーム最多の65試合に登板した24歳のキム・ユンドンが11セーブを記録し7月まで抑えとして起用されていたが、6度のセーブ失敗を記録するなど調子を落としたため7月末にネクセンからトレードでキム・セヒョンを補強し、8月以降は8セーブを記録した。41歳で経験豊富なイム・チャンヨン(元東京ヤクルト)も51試合に登板し8勝9セーブを記録したが、こちらも5度のセーブ失敗と安定感を欠いた。左のリリーフとしてはシム・ドンソプが52試合に登板した。
 

 チーム打率(.302)、総得点(868)は10チーム中1位、チーム本塁打(170)は3位と打線は強力だった。打線は上位から下位まで切れ目がなく、新しい4番打者として期待されたチェ・ヒョンウは26本塁打、チーム最多の120打点と結果を残した。韓国1年目の外国人選手バーナディーナはチーム最多の27本塁打・32盗塁を記録し、走攻守そろった中軸選手として優勝に大きく貢献した。その他にもキム・ソンビンが打率.370で自身初の首位打者となったが、打順は9番が中心で上位へのつなぎ役に徹していた。その他にも主に指名打者として出場したチーム本塁打最多タイ(27本)のナ・ジワン、35歳を超えても25本塁打を記録したベテラン内野手イ・ボムホ、自己最多の21本塁打を記録したアン・チホン、つなぎ役に徹したベテランのキム・ジュチャンとソ・ドンウク、そしてSKから移籍し主に1番打者として活躍したイ・ミョンギ、捕手で最多出場を果たしたキム・ミンシクなど、レギュラー陣の実力は他球団を圧倒していたが、控え野手の層が薄かった。

 
 8年ぶりの韓国シリーズ優勝はオフシーズンの補強だけでなく、4月、7月とシーズン開幕後の2度の効果的なトレードと、現場、フロントが勝利のために一体となって取り組んだ成果だったといえよう。



3. 【オフシーズンの動向】
 優勝に貢献したヘクター、バーナディーナ、パット・ディ―ンと3人の外国人選手とすべて再契約した。また2度目のFAを行使したキム・ジュチャンとも再契約し、左のリリーフとして起用されたコ・ヒョジュンが余剰戦力を対象とした2次ドラフトでロッテへ移籍した以外に戦力の流出もなかった。また、LGを退団した通算2105安打の37歳のベテラン打者チョン・ソンフンが2003年以来15年ぶりにキアへ復帰した。豊富な経験を活かして古巣では控え野手としての起用が予測される。

 キム・ギテ監督は2018年から契約期間3年で再契約し、ヘテタイガース時代の1996年、1997年以来となる韓国シリーズ2連覇を狙うことになる。目玉となる補強はなかったが、それだけ現在の戦力に自信があると言えよう。しかし先々も優勝争いに加わるためには投手ではイム・ギヨン、キム・ユンドン、ハン・スンヒョク、捕手ではハン・スンテク、内野手ではチェ・ウォンジュンなど若手の成長が必須である。育成と勝利をどのように両立させていくのか、キム・ギテ監督以下首脳陣たちの手腕に注目したい。


(文責:ふるりん