長沢芦雪の富士山噴煙

「芦雪―奇は新なり」展を、信楽の地・MIHO MUSEUMに訪ねる。


香港の中国銀行ビルには見とれた建築家I.M.ペイ(イオ・ミン・ペイ)氏の設計。
ルーブルのピラミッドに共通するコンストラクション、そして、トラバーチンがミゴト

意外にも、若い人達が多く、「カワイイ」の声を再三きかされる。劇画調の空間や
タッチ、そして、猫顔の虎や、愛らしい子犬などに人気があるのだと…
ただ、「山姥図」にも、人だかりし「カワイイ」と新奇。
噴煙に見える「富士越鶴図」

この雄渾な筆致の冨嶽には息をのむ。
 左下から、湧き上がる、たらし込み的な雲、右下に流れ滑落するような墨。そして回り込みながら
左手前に、グラデュエイト(暫時的移行)し連なる丹頂鶴。流れる墨に白抜きの鶴も超絶手法。
豪放な富士の雄姿や、この瑞々しき躍動する墨跡には、しばし魅了される。
旭日が描かれているが、落款の氷形「魚」(右上欠損)印の方が旭日より大きいのは、
芦雪ならではの自尊のあらわれなのか!
そして、旭日から飛び出てくるように見える鶴は、魚と見えなくもないと、これは、うがち過ぎ。

「富士越鶴図」部分
この冠雪きわの運筆は、師の応挙門下であった芦雪の躍如たる筆致・墨跡で、この手練には眼を見張る。
ただ、頂上脇の黒い雲状の描写は、妖雲とあるが、噴煙ではないのか?
雪をいただく冨嶽に旭日や鶴と吉祥の図に妖雲(不吉な雲)を添えるかな!
宝永大噴火(1707年)後も、山頂火口東南縁の荒巻の地近辺に、噴気活動が存在したらしく
これは、富士山の噴煙に見えて仕方がない。
富士の噴煙を描いた画期的な作品かもしれない。

「月下水辺図」部分
水面に映る月のユニークなゆらぎの表現は新奇で真骨頂なのだが、なにか儚い。
しかし、享年46歳で、伝説によれば悲運な逝去とか!
ちなみに、芦雪より6歳若い葛飾北斎は、90歳近くまで活躍したというのに!