英語で読めるリフレ派基礎文献(追加)

『昭和恐慌の研究』のダイジェスト版
Lessons from the Inoue Zaisei and the Takahashi Zaisei

Two Decades after the Plaza: A Package of Mixed Blessings

Japan’s Great Recession (Yutaka harada &Shigeki Onishi )
The Role of Preconceived Ideas in Macroeconomic Policy: Japan's Experiences in the Two Deflationary Periods,( Hamada, Koichi & Asahi Noguchi)
Was the Great Depression the Watershed of Macroeconomics? (Masazumi Wakatrabe)

Understanding the Evolution of Macroeconomic Thinking: A Proposal(Masazumi Wakatrabe)
Is the Persistence of Japan’s Low Rate of Deflation a Problem?

The Heisei Recession: An Overview. Koichi Hamada

速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』

 ITOKさんのコメントから刺激されて版元におねだりして献本いただきました。ありがとうございます。意外なことに、速水先生のこの著作が日本で最初のスペイン・インフルエンザの本格的な研究だそうです。僕の祖父母は「スペイン風邪」の記憶を持っていて、「当時はミミズの黒焼きをのんだ」とその昔話していた記憶があります。もちろんそんなものはまったく効力はないのですが、本書を読んでみると正体も不明ならばもちろん対策もほとんど皆無に等しい「新型ウィルス」の脅威に、当時の社会がどのように対処していたか、本書は興味の尽きない史実の数々を明らかにしています。

 特に当時の各地方の新聞を時系列的に精査したり、また植民地などの罹病の状況などもつぶさに検証しているところは、非常に根気のいる作業だと思いました。これを読んでいくと当時の日本社会が各地域ごとにインフルエンザというスペクトルを通して、どのような構造だったのかがよくわかります。本書からはインフルエンザが軍隊などの「強制」を伴う=身体に無理をいわす集団の中で特に重度であったこと、また同様に炭鉱や人里はなれた寒村などのやはり肉体的・健康的に劣悪な環境に陥りやすいとことで同様に重大な損失を与えたことがわかります。特に軍艦「矢矧」での猛威のエピソードは迫真的なものがあります。ひょっとして日本の第一次世界大戦最大の被害は、このインフルエンザによる猛攻だったのかもしれません。

 第一次世界大戦とその後の日本社会の大規模な変質の中で、50万人近い死者を出したにもかかわらず、このインフルエンザの脅威とそれがもたらした教訓は人々の中から忘れられてしまった、というのも別な意味で興味深いものです。実際に僕が研究している当時の経済学者たちにはほとんどインフルエンザの影はみえません。当時の社会政策学会あたりでメインテーマになってもおかしくはないのですが(誰かが触れているかもしれないけれども大きな話題ではなかったと思う……)。その意味で、内務省衛生局の『流行性感冒』は読んでみる価値は大きそうです。

日本を襲ったスペイン・インフルエンザ―人類とウイルスの第一次世界戦争

日本を襲ったスペイン・インフルエンザ―人類とウイルスの第一次世界戦争

石渡嶺司・大沢仁『就活のバカヤロー』

 かなり期待して読んだんだけども、正直使えない。たぶん就職市場の「本当の姿」を面白いエピソードを豊富にそれらしく描いているんだろうけれども、例えば大学関係の記述については、いかにも表面的なものでしかない。
 本書のまとめによると「多くの大学関係者は、就職支援を風俗・スキャンダルの類より恥ずかしい存在と考えます」としているが、本当にこの本がいまの大学で就職支援に携わる教員の問題意識をフォローしているつもりだとすれば、少なくとも僕の認識からははるかに遠い。そういう意識をもっている人たちもいるのかもしれないが、実際に見たことがないのでコメントしようがない。こういう過剰な表現でなんらかの問題を摘出したことになるのだろうか? まあ、それでも就職市場のいまふうな全体像はこうなんだ、と納得したい人にはいいのかもしれないけれども。実際に僕がこれを学生の就職支援のたしにできるかといえばほとんどない。

 代替的に以下のエントリーで紹介した本とかの方が「つかえる」。

・就職用図書リスト

 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080201#p5

・こんな「就活本」は買ってはいけない!―時間とお金を無駄にしない賢い本選び

 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070523#p3

波頭亮『就活の法則 適職探しと会社選びの10カ条』

 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20071215#p4


就活のバカヤロー (光文社新書)

就活のバカヤロー (光文社新書)