ロナルド・コース&王寧『中国共産党と資本主義』

 凡作だと思う。購入してから読み切るのまで非常に苦労した。アイディア市場(教育、報道、出版など)の自由化をすすめることが中国のこれからの経済成長の可能性に大きくかかわるというコースの主張はよくわかる。

 コースの「財の市場とアイディアの市場」(1974)で提起されていた論点が、中国経済の文脈に適用されていてそれなりに興味深い。また中国の今日の経済発展が、「社会主義近代化」という路線でイデオロギーから政治が解き放たれたことで可能になったという面も、この特定のアイディア市場(=政治思想市場)が自由化されたときの効果としても解釈できるだろう。

 ただあまりにも冗長だ。

中国共産党と資本主義

中国共産党と資本主義

福島県の経済メモ2ー公共事業の制約がもたらすクラウディングアウトー

福島県の経済メモ(http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120922#p2)のその後

 今日発表された福島県の最新の経済動向
http://www.pref.fukushima.jp/toukei/data/01/keizai/keizai25/2507.pdf

 以前、書いたように、公共事業中心の経済に大きく転換してしまっている。「公共事業の制約」に直面する一方で、生産が停滞している。雇用も他県に比べてかなり弱い。いい面もあり消費、倒産件数、負債などで改善の動きもある。なぜ生産がこれほど停滞しているのだろうか? ひとつには、「公共事業の制約」モデルから説明できるかもしれない。公共事業支出(=総需要の一部)が急増化しても供給面での制約に直面してしまうことで、他の部門への需要が掃き出されてしまうクラウディングアウトの一種が生じている可能性が大きいのではないだろうか?。

 非常に心配な現象である。この場合の対策はなんだろうか。1)建設や土木以外の部門の振興に貢献する投資減税、2)「制約」を緩めるための震災復興によらない長期的な公共事業部門の県内人材育成 などであろうか。また福島県経済を仮想的にひとつの国に置き換えれば、日本のインフレ目標よりも高めのインフレ目標を福島経済圏には適用できればさらに望ましいかもしれない(実質金利がより引き下がるので)。