震災恐慌 田中秀臣・上念司共著

ブログ更新をさぼっていましたが、少し前に読了した田中秀臣先生と上念司さんの対談形式で、この大震災に端を発する大不況への警鐘を鳴らす共著「震災恐慌 経済無策で恐慌がくる!」の読書感想文を書いてみた。

今回の3・11大震災後の日本経済が確実に復活するためには、どんな経済政策が必要か?と言った時に、歴史から教訓を得るのが手っ取り早い。
その好例が関東大震災や16年前の阪神・淡路大震災である。いずれも、3・11前後の経済状況と照らし合わすと酷似しており、その当時の経済政策は非常に学ぶべきことが多い。
関東大震災阪神淡路大震災の復旧・復興にあたっては、ドカーンと財政支出したから復興が早かったが、その後の緊縮財政や阪神・淡路大震災2年後の1997年の消費税増税で、折角の不況脱出のチャンスを逃し、現在に至るまでのデフレ不況の原因となっていることを見れば、今回の大震災も当時と酷似した経済環境下にも関わらず、復旧・復興への財政支出はタイミングも遅く、規模も小出し(予算の付け替えのみ)で、挙句の果てにいきなり増税論議だからまさしく震災恐慌にまっしぐら。
昭和恐慌時の井上準之助蔵相時の清算主義さえもが、今回の大震災に乗じて復活する懸念すらあるから、末恐ろしい状況にある。
まずは、3・11震災前の経済状況が、総需要不足=デフレ不況である点を忘れちゃいけない。そして、そのデフレの原因は日銀の金融政策の失敗(厄介なことに日銀またはその取り巻きは、失敗とは思っておらず、しっかりやっているとマスコミを通じて喧伝している)にあることにみんなが早く気付かないとほんと震災恐慌が現実のものとなるという危機感を共有しなくちゃいけない。
このデフレ不況下での増税論議についても、「税収=名目成長率×税率」の計算式を見ればいま増税するべきか否かの結論は一目瞭然であることをみんなが気付かないと。増税で税収を増やす議論も税収全体を見ないといけないはずで、消費税は安定財源かもしれないが、増税による負の影響(デフレ不況を増長させる)として、企業減収、所得減少が起こり投資と消費の抑制によって税収は確実に減るはずである。これを理解すれば、まずは名目成長率をいかにしてあげるか?その前提にはデフレをいかに食い止めるか?という政策を実行するのが、真っ当な経済政策だってことが分かるはずで、いまの日本銀行の金融政策、政府の一連の政策がデフレには逆行してるってことに気づくはず。
田中先生がこの本の最後の方に触れられていますが、日本銀行と政府の政策の「期待の転換」「レジーム転換」が重要であるとの指摘通り、このままレジーム転換が起きなければ、というかどんな手段を講じてでも起こさなければ、ほんと日本経済はこのまま希望も未来もない状態が確定してしまうだろう。
ということで震災恐慌をみんなで防ぐためにも、最後にお二人が鳴らす警鐘として、3つのべからず集を覚えて、みんなで広めていきましょう。

べからず集その1.増税
べからず集その2.金融引き締め
べからず集その3.復興資金の逐次投入