農地の鳥

tatsuamano2009-08-13

こちらも最後の機会になりそうということで、研究室随一のナチュラリスト・ベンがケンブリッジ近郊・農地バードウォッチングツアーへ誘ってくれました。ちなみにこのベン、以前もこのブログに登場したと思いますが、無駄に国際学会へ飛行機で行くことは避ける(どうしてもの場合は自分で選んだ団体への寄付でカーボンオフセット)、保全と社会の両立には生態学だけでなく経済を理解することも必要だからとエコノミストを愛読しているという、何とも頭の上がらない人物です。
ケンブリッジ周辺はヘッジローが少なく、自転車で少々走ったところのヘッジローが程良く残っている圃場を歩いて一周しました。「圃場」と言っても大規模で、日本では北海道で見たことのある最大規模の圃場が通常サイズ(もしくは小さめ?)という感じでしょうか。かつては一つの圃場がもっと小さく、典型的には帯状の形をしており、その境はヘッジローで区切られていたと言いますから、集約化に伴う圃場の大型化で農地性鳥類の生息地が減少したというのは想像に難くありません。
アオジやムネアカヒワ、オオジュリンなどイギリスで減少している農地性鳥類が、ここでは幼鳥も含めゴロゴロ見られました。他にもチフチャフやノドジロムシクイ、アオゲラ、圃場内ではヨーロッパヤマウズラ、アカアシイワシャコ(移入種)、キジ、ウサギ類も観察でき、想像以上に「農地」自体で見られる鳥類相が多様だなと感じました。
この圃場では何かの豆が植えられ収穫間際の状態でしたが、ナタネや麦類との輪作が行われるそうです。圃場は集約化されているというものの広いだけあって管理が隅々まで行き届いている訳ではなく、端の方には作物の植えられていない裸地があったり、畦にあたる部分はかなり面積のある草地として機能していたり、と日本人の視点で見ると「粗放的管理?」と思ってしまいそうな部分も多々ありました。
隅までびっしりと稲が植えられ、畦もきれいに除草されている日本の水田を頭に浮かべると、アメリカの農業よりは日本寄りと想像されるイギリスの農業ですら、ちょっと別物であるような気がしました。ただ、生物の生息する「隙間」的な生息地の面積ではイギリスの農地の方が圧倒的に広いものの、そういった生息地が少ない割に日本の農地も多くの生物を支えているような逆の印象も受け、日本の農地は食料生産・生物生息地の提供、両面において面積効率が高いのかもしれないと感じました。
いずれにしてもこのような機会を与えてくれたベンに感謝です!