Less is more.

新しい製品やサービスが生まれ廃れてゆくサイクルの中で、何が売れる理由なのかが変化していく。そういった消費者の見方の変化に合わせて企業の側も製品やサービスの開発を変えていく。変え方も色々あるけれど、一番単純なのはひたすら性能を上げ、また機能を追加することだ。


それまで新しかった機能や製品が当り前のものになってしまった時、他の何かの魅力を見つけないと売れなくなる。そこであれこれ使える場所を広げたり、色んな機能をくっつけたりする。TVにもビデオにも使えるテレビデオ。オフロードでも街中でも使えるSUV。動画も見える音楽プレーヤー。DVDも見られるカーナビ。例を挙げればきりがない。そうして機能はふくらむけれど、えてして消費者はその機能の半分も使わない。


しかしそんな中でLess is more. を理解している数少ない企業がPalmAppleだった。Palm ComputingはZen of Palmという考え方を持っており、東洋哲学や仏教に影響を受けてシンプルであることの美を追求していた。余計なものを付けず、あくまで必要十分な機能が簡単に速く動く。Palmは明らかにそれを目指していた。途中から迷走し始めたけれど、それまではバッテリー持続時間やサイズを犠牲にするくらいならとカラースクリーンや動画再生なんかは、技術的には可能でも付けなかった。


Appleも同様に、Macintoshを市場に出した後に世の中にカラーが出始めた頃以降も、カラー対応Macintoshを直ぐには出さなかった。モノクロでも十分に視認できる画面デザインをしており、またカラー出力といった周辺が付いてきていなかったからだ。そして現在市場を席巻しているiPodでは、なんと両方のアプローチを同時に取っている。液晶ディスプレイがなくボタンもたった5つしかないiPod Shuffle。静止画も動画も見れてゲームもできて文章も読めて…と機能満載のiPod
  


こういった製品戦略でも企業戦略でも、いつでも一番難しいのは何を「しないか」だ。多くの人は恐れがあって、今やっていることを止めたり、何かを捨てることを中々しない。そうすると安全のためにあれもこれもと仕事も製品も増えるばかりで、投資も労力も分散されてしまい結局どれも成果が出にくくなってしまう。


僕たちの時間は有限だ。製品やサービスを使う側の人間の知恵や時間・お金だって有限だ。何でもなんていらない・分からない・使えない。選択と集中。リスクをとって他を捨ててでも前に進みたいという意識があれば、いつか必ず成果は付いてくる。Less is more.