いや、別にそれほど難しい話じゃないと思うんですけどね。
走るのなら走ればいいのに。
止まるのなら止まればいいのに。
僕は、気にはかけていました?
でも、一位は守りました?
バカか、おまえ。
(『さくらむすび』より抜粋)
まあ、そんな程度の認識でどうにかなりますよ。大概。
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追記。
「さくらむすび」の場合、ビジュアルノベル・プレイヤーによる選択肢選択システム採用のエロゲーなので、幼馴染はこんなかんじ。
走る必要なんて、恐らくはない。
客なんかいないし、完走したところでもはや記録すら残りはしない、そういう競技――いや、競技ですらない自己満足――だ。
そして紅葉は本来、そこを走るだけの力を持っていない未熟者で、走ったところで自己満足すら得られない。
彼女にあるのは、自分が走ることで記録を下げてしまうことへの怯えと、走ることに義務が生じていないことから生じる逃げ。
それから、受け取ってしまった、バトンの重み。
「でも…だって。バトンは受け取ったかもしれないけど…渡す相手がいないもん」
「アンカーなんだろ」
「…ゴールがないもん」
で、こうなる。
ああ――僕たちはこれでいい。
僕がキミを守ってあげるから、だから一緒に行こうだなんて…
いかにも主人公の台詞じゃないか。
例えば、孤独だった金村世津子に居場所を与えてあげた…
そう言って、いざとなったら一人で逃げだしそうな、あの男の。
(中略)
優しく受け入れて、うんうんとうなずいていよいよとなったら『僕はそんなつもりじゃなかった』と逃げ出してしまう。
僕たちが、決定的に間違っていたのは…
愛せてもいないものを、愛していると思いこんでしまったこと。
だから、「なれなかった」じゃなくて「ならなかった」なのだなぁ、と。それは、彼が何よりも愛した、「二度目の機会」の物語なのだから。