『チェイサー』を観た。

DVDレンタルってとってもありがたいんだけど、これも良し悪しだなぁと感じるときがある。
いちばんのデメリットは、観ている側に緊張感がない、てこと。
自宅で、連れと観ている時なんか、まさにそう。
観ながらつい、つい、喋っちゃう。
これが良くない。
『チェイサー』を観ていたら、連れが横から
「あの人、(サザンの)桑田さんに似てない?」
この一言で、この作品の世界にのめり込むのにどんだけ苦労したか。

教訓
 連れと家で映画DVDを観るときは、“バッテンマスク”が必要。

 



上記のような妨害工作をかいくぐりながら、『チェイサー』を観ました。

桑田さん似のジュンホが経営するデリヘルで、派遣した女性が相次いで失踪する。
それら一連が共通する客だと気づき、警察に捜査を依頼するも軽くあしらわれてしまう。
引き抜きか?売り飛ばされてるんじゃないのか?
運よく探していた客にぶち当たり、とっ捕まえて警察に突き出す。
一件落着。

と思われた。
そこからが、この映画の不気味で残酷な、救いようのない世界のはじまりだった。


観終わって、しばらく沈黙。
連れが「なんなの、これ」
おいらも、なんなんやろね、と応える。
連れは「観る側に無力感を与えっぱなしで終わったらダメだって」
なんていうんやろ、救いのない映画やったねぇ、とおいら。
連れ、「あの女刑事はなにしてんのよ!仕事できないんならさっさと辞めてしまえ!」
2時間前に、ジュンホが桑田さんに似てるとケラケラ笑ってた人と同一人物だとは
とても思えない。
┐(´ー` )┌

“何やってんだよ。”
最初はー個人に対して思っていたことが、集団になり、組織になり、そして
正しいと思っている、信頼しているものに対する憤りと不信感になり、
行き着くところは無力である自分自身に返ってきます。
なんでこんな後味の悪い結末の作品を撮ろうと思ったんだ、この監督は。


観終わってから調べてわかったことですが、この作品は実際にあった猟奇的連続殺人事件
ユ・ヨンチョル事件」をベースに作られた作品であったと。


ソウル20人連続殺人事件
2003年9月24日、ソウル特別市江南区新沙洞で某大学名誉教授夫妻が殺害された。その後、2004年7月に犯人が逮捕されるまで、主に富裕層の高齢者や風俗嬢の合計20人が殺害された。

犯人はソウル生まれの男で、中学1年生の時(14歳)に父を亡くし、中学卒業後は工業高校に進学したが、高校2年生の時に窃盗事件を起こして少年院送致となり高校を中退、それ以来転落人生を歩むことになった。
その後、21歳の時に風俗嬢の女性と結婚したが、結婚後も窃盗や性犯罪を繰り返し、合計11年間を刑務所で送った。2002年5月に、妻は男に愛想が尽き、離婚訴訟を申し立てて離婚に踏み切った。後年、犯人が風俗嬢をターゲットにしたのは、(風俗嬢だった)妻に対する当て付けの意味もあった。

逮捕後、犯人は合計26人を殺害したと供述し、当局は最終的に21人の殺害について起訴したが、その内の1人は後に別の連続殺人事件(ソウル西南部連続殺人事件)の犯人の仕業であることが明らかになった。2004年12月13日、ソウル中央地方法院は犯人に死刑を言い渡した。そして翌2005年6月に死刑が確定した。
Wikipedia

もっと詳細に伝えているサイトもありました。詳細を知れば知るほど、驚愕するような内容で、
埼玉愛犬家連続殺人事件を映画『冷たい熱帯魚』で知って、『共犯者』を読んだ時の衝撃を
思い出しました。
このことを知って、『チェイサー』に対する印象が変わりました。

追って追って追いかけたのに、生きていたミジンを結局救うことができなかった。
憎むべき殺人犯の姿が見えていながら、殺しを重ねることを阻止することができなかった。

子供から母親を奪ってしまったことに加えて、元刑事として犯罪阻止ができなかったことに
対する無力感、絶望感。


こんな思いをするのは映画でだけにしたいなと思いながら、同時に、映画を見なけりゃ
こんな思いはできないだろうなとも思う。
好むと好まざるとに関わらず、観ておくべき映画と言っていいんでしょう。