英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

住宅市場のモンスター

 トランプ氏が選挙運動の立て直しに踏み切った。しかしその方向は、より通常の戦略から離れる形であり、「自分が勝てると思うやり方でやる」というものだ。
 彼の選挙スタッフの交代は2回目。スタッフ刷新によって、彼の思う通りに選挙部隊を作り上げるのが狙いだ。これによってクリントン氏にリードされている世論調査を逆転させると、歓迎する向きもある。しかし、幾人かの共和党関係者は、失地回復は難しいのではないかとみている。
 トランプ氏は最近、アドバイザーによって操り人形になっているとの指摘にフラストレーションと怒りをためている。トランプ氏に懐疑的な人々は、スタッフを変えても、候補者自身がキャンペーンの焦点を変えない限りは変わらない、と指摘している。
 http://www.wsj.com/articles/donald-trump-reshapes-campaign-organization-in-his-own-image-1471456052
 エコノミストの最新号カバーストーリーは「メインストリートの悪夢」。米国の住宅市場の課題について取り上げている。
 世界の金融システムの中で何かもっとも機能不全に陥っている部分なのだろうか。不良債権を大量に抱えた中国の銀行だろうか。それともユーロ圏の単一通貨制度だろうか。両方とも憂慮すべき問題だが、米国の住宅市場ほど大きな問題はない。
 米国の住宅市場は世界で最大規模のアセットクラスである。総額26兆ドルにのぼる。これは米国の株式市場を上回る。この住宅市場に張り付いているモーゲージ債務は、金融リスクの塊である。モーゲージ債務のモンスターは静かに落ち着いているかのように思われているが、実際には、広大で利益を生まず、十分資金手当てされていないモンスターは依然として世界最大の経済における脅威であり続けている。
 この脅威が注目されないまま放置されている理由は、住宅市場が改善しているからだ。住宅価格は歴史的な高水準に回復している。その結果、住宅価格と比べて大きい住宅ローンを抱える相当数の家計が4分の1から10分の1へ減少しているのだ。また、ヨーロッパと比べて、米国の銀行の処理も進んでいる。
 しかし、問題が解決されたとみるのは幻想かもしれない。米国では1980年代以降、住宅ローンは銀行ではなく、債券市場がになってきた。ローンは債券に括り直され、保証をつけて世界中に売却された。ウォールストリートや北京の投資家が7兆ドル相当の債券を保有している。
 現在も米国政府の保証付きスタンプをおして、新たな住宅ローンの65%から80%が世界中に売却されている。自由市場の住宅ローンシステムの中核は、社会主義のような計画経済の価値によって左右されているのだ。
 http://www.economist.com/news/leaders/21705317-americas-housing-system-was-centre-last-crisis-it-has-still-not-been-properly