『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』佐野 眞一

知らないですよ確かにこれは。
タバって言ったら、苗字と思わずシンゴジラの「タバ作戦」が出てくるくらい何も知りません。まず沖縄の人の苗字知らない。登場人物の名前が独特でもはやファンタジー
沖縄戦の被害者の手記、っていうのは目にするし読むんですけどそれ以外の前後も今も知らない。

冒頭、沖縄のよいところの象徴みたいな血縁や関係の濃さが、ひとたび裏返れば血で血を洗う激烈な暴力になるという言及から、露悪を隠さない文章で連載ルポなので煽ってくる筆致。ゴシップ。でも、露悪的なアプローチだからこそ、この複雑さと経済・金融史・基地問題とかめんどくさいところを読ませるパワーになってます。

左翼の強いところは、右翼もカウンターで強くなるし、単純な愛国でもなく愛国の主体も沖縄なのか本土なのか複雑過ぎて。そこにアメリカもあり複雑過ぎてわからない。その結晶みたいなエピソードが、沖縄唯一の保守系新聞のボロボロの社屋で共産党を非難する朝鮮人社長。それはもう複雑過ぎて。

でもスイスイ読めちゃう。
沖縄ヤクザと東映とか政治団体としての右翼とか本土のヤクザとか固有名詞が入り乱れてもう渾然。ヤクザの話が最初にあった上での、政治、独立運動、経済、密貿易、芸能…
沖縄王家尚氏の宝物が沖縄戦アメリカ軍に盗まれて、戦後に古文書のおもろさうしだけ盗品が出て、他の宝物の行方はまだわからない…とか、このエピソードにも琉球処分が関係するから東京の人脈があったり、どれについても抜き書きはためらわれる。

結論の一冊ではなく、入口の一冊だと思うんですが、もうここから先へは行けないんじゃないかと思ってしまいます。目がくらむ。