経済的自由権
- ●意義
職業選択の自由,居住・移転の自由,財産権の総称。
- 職業選択の自由(22条1項)
・○意義
:自己が従事する職業を決定する自由
⊃「営業の自由」
∵これを保障しなければ,職業選択の自由も保障されない
・規制
・「消極目的規制」
↑自由国家的見地により
→国民の安全のため
=警察的規制
・「積極目的規制」
↑福祉国家的見地により
→調和のとれた発展のため
- ?合憲性を判断するにはいかなる基準によるべきか
- 経済的自由に関する問題は,精神的自由に関するそれとは違い,判断のみしかすることができない裁判所より,専門的知見および政策遂行能力のある議会が直接に担当することが適している。また,条文において「公共の福祉に反しない限り」とされているように,福祉国家の理念により,経済的自由権は精神的自由権に比べてより広範な規制に服するものと考えられる。したがって,合憲性判断の基準は,立法府が下した判断に合理性があることを前提として
,立法目的および立法達成手段の双方について,一般人を基準にして合理性が認められるかどうかを審査する,合理性の基準が用いられるべきある。 - ?いわゆる「二分論」は採用すべきか
- 二分論とは,消極目的規制については厳格な合理性の基準により,積極目的規制については明白性の原則により,合憲性を判断する考えである。このように,立法目的の違いにより,合憲性の判断基準を使い分けることは,より細やかな判断を可能にするように思える。しかしながら,規制目的を積極・消極に二分することは現実的には非常に困難である。従来消極目的規制と考えられていた規制が,積極目的規制の要素を含むようになり,また双方の目的が含まれた規制の存在も考えられる。したがって,規制目的によって判断基準を使い分ける二分論は,区別の点において明確ではないため,採用しがたい。このため,合憲性判断の基準としては,規制の必要性と合理性を立法事実に基づいて総合的に判断する基準を用いるべきである。
- 居住・移転の自由
・○意義
:自己の住所・居所を自由に決定し,移動する自由(22条1項)
もともとは経済的自由,内容的には精神的自由の要素を含む
・海外渡航の自由
⊂22条2項「外国に移住」
- ?だとすればパスポートの発行制限を定めた旅券法13条1項5号は違憲ではないか
- 違憲ではない。海外渡航の自由は,公共の福祉のために合理的な制限に服する。この法文が曖昧ゆえに無効であるとする見解は,明確かつ規制の実行力ある代替案を示すべきである。
- 財産権の保障(29条)
29条1項は財産権の不可侵を謳っているのに,2項では財産権の内容が法律によって定められることを定めている。2項により,立法府がいかようにも財産権を制約しうるものとなれば,1項の存在意義が滅減する。このため,1項には個々人の財産権の不可侵だけではなく,私有財産制という制度的保障が包含されると解する。このように解しなければ,財産権の保障があまりにも相対化されるからである。
・制限(2項)
1)公共の福祉による制限
→森林法違憲判決
2)条例による制限
→ため池条例事件
・補償(3項)
♪趣旨=財産権の保障の徹底+平等原則の契機
実体法(行政法)との関係↓
①実体法←(具現化)←29条3項
②実体法がない!←(ヘルプ)←29条3項=実体法的効果
∵ア 補償は金銭査定なのだから裁判所ができる
∵イ 本項が実体法的効果を有することは法文から読み込める
・「正当な補償」
- ?正当な補償とはどのようなものか
- 本項の趣旨は財産権の保障と平等原則の徹底にあるため,正当な補償とは損失に完全に対応する金銭補償をいう。ただし,結果としての完全補償は一般的な経済状況や具体的事案との関係上困難であるから,プロセスとして合理的な算定基準が用いられていれば,必ずしも完全な補償が必要であるとはできない。