啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

英・EU離脱の余波続く

英国のEU離脱の余波続いています。東京市場を始め、世界の株式市場で急落が発生し、世界全部で210兆円にわたる経済損失が出たという報道さえ出ました。

冷静に考えれば、実際に英国が離脱するのは今から2年先。実経済はそこから変動が始まるので、「今、ドタバタしても、何も変わる訳ではない」のです。教授自身では、株式投資は行っておりませんが、世界経済は政治にも直結することから、その動向は目が離せません。

株は 「噂で買ってニュースで売れ」との格言がありますが、今回は逆かもしれません。EU離脱のレファランダム(住民投票)結果の前日と翌日では、実経済は何も変わっていないので、ちょっと頭のいい人は、絶好の「買い」のチャンスが来たと思っているでしょう。国際的な言葉となった「Mrs. Watanabe」という日本の個人投資家が得意とするいわゆる「逆張り」の絶好機が訪れたとして、おそらく月曜日以降は全面的な「上げ相場」が予想されます。

英国にみる対立軸の本質

このような株式市場のことより、この英国・EU離脱の論評が様々に出てきていることに注目する方が重要でしょう。この様々な論評に共通して見られる指摘が数点あります。
一つは、英国の2分された対立軸は、基本的に英国だけの問題だけではなく、EUの加盟各国にも同様に存在するという指摘です。さらには、米国の「クリントン」対「トランプ」の対立構造と類似であるという指摘です。
二つ目は、この対立軸の本質は、政治的な対立ではなく、古い世代と新しい世代の間の「世代間対立」でもなく、貧富の差による対立は関係しますが、むしろ労働者層と指導者やインテリ層の対立と言われています。つまり、理念や未来のビジョンでは、指導者やインテリ層のいうことは正しく理解できても、現実問題として移民の問題や収入の増加もなく生活の困窮が改善されない不満から現実を納得できない人達の声というのが、労働者層という言い方になって対立が起こっているのでしょう。

そういう対立ならば、大金持ちのトランプ大統領候補にどうして票が集まるかも納得できます。
いわゆる労使争議とは異なる対立軸ですが、これを単に民主主義と大衆主義(ポピュラリズム)という視点で見たり、単なる地球経済問題としてみると、状況を見誤る可能性があると思われます。

本当に英国はEU離脱となるか

したがって、米国でも 危惧されているように、英国も孤立主義に入ったりUnited Kingdomとしての英国が瓦解するのではないかというと、それは現実的には非常に難しいと思われます。
ちなみに、万一離脱派の前ロンドン市長ではなく残留派の新しい人が英国首相になったり、もう一度住民投票がなされたりした場合には、「英国やはりEU残留」という事態があり得るかもしれません。

英国EU投票の予測を間違えた調査会社の責任

それにしても、この住民投票を提唱して前の自身の選挙に勝ったキャメロン首相に、「どうしてこんな危険な住民投票を行ったか」という疑問というか批判とともに、投票直前まで「残留派優勢」を言い続けた調査会社と一部の英国マスコミの責任も問われてくる可能性も大きいと思われます。