大川端だより(51)

昨日、今日と、西空に朝の月(名残の月)がはっきり見えた。もちろん、夜の満月のように豪勢ではないが、ちょっと淋しそうでなかなか風情がある。月といえば、ぼくはすぐ、鎌倉時代初期の僧、明恵上人の有名な和歌を思い出す。


 あかあかやあかあかあかやあかあかやあかあかあかやあかあかや月(上人集)


なんというアバンギャルド。夜空にくっきり、明々と浮かぶ、満月(おそらく)をこのように詠う明恵の心は、感動をズバリ、和歌の技巧を度外視して吐露している。まるで、まだ言葉も覚束ない子どもが、満月を見て、「アカアカアカ」と繰り返しているようではないか。