「だらけ」と「まみれ」

「だらけ」は日本語能力試験二級、「まみれ」は一級レベル。
両者の使ひ方の違ひをよく聞かれる。基本的には、「まみれ」は液体(血、汗など)や粉状のもの(ほこり、砂など)が全体にまんべんなく付着してゐる場合に使ふと説明。
1. 血だらけの男(○) 血まみれの男(○)
2. 傷だらけの男(○) 傷まみれの男(×)
ただ、具体的な物ではない名詞につく、比喩的な表現の場合は微妙だ。『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』*1を見ると、次の例文が載つてゐる。
 そのころは借金{○だらけ/×まみれ}だった。(P.537)
この本では「借金まみれ」は×になつてゐるのだが、googleで検索してみると、かなりの使用例があつた。
「借金まみれ」(約 22,600 件)
「借金だらけ」(約 19,400 件)
なんと「だらけ」よりも「まみれ」の方が多いのですね。
「うそまみれ」(約 457 件)
「うそだらけ」(約 8,000 件)
こちらは圧倒的に差があるが、個人的には「うそまみれ」でもあまり違和感はない。また、『日本語文型辞典』*2の「まみれ」の項目には、次のやうな記述がある。

「ほこりまみれ」「血まみれ」「泥まみれ」など、限られた名詞にしか用いない。

日本語学習者向けの説明なのだから、このやうに典型的な用法を強調しておくべきだとは思う。しかし、googleにヒットした用例を眺めてゐると、実際の用例は多彩。一種の言葉遊びなのだらうな。

犬まみれ、猫まみれ、ドリルまみれ、漫画まみれ、スパムまみれ、自然まみれ、物欲まみれ、蟹まみれ、薬まみれ、女まみれ、納豆まみれ、おばちゃんまみれ、妄想まみれ、トラブルまみれ、牛肉のタタキ焼葱まみれ……

「葱まみれ」といふのはおもしろいな。