創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業

タイラー・コーエン著(2002)、日本語版2011.6。作品社。「ローカルな文化がグローバリゼーションによって堕落する」との議論に異を唱える内容。少々乱暴な議論のようにみえますが、「都市イノベーション」を考えるうえで避けて通れない議論として楽しく読みました。そもそも「創造的破壊」というとシュンペーターイノベーション理論を思い出しますが、やはり思想的には同じ流れを汲んでいるようです。自由主義思想という意味では、ハイエクの思想にも近いものがあります。
とはいえどちらかというと、『創造的破壊』の解説で田中秀臣氏が読み解いている<創造的破壊から物語の経済学へ>の<物語の経済学へ>の部分に興味をもちました。しかし『フレーミング』(2011.7、日本語版。原著は2009)や『インセンティブ』(2009、日本語版、原著は2007)では、まだ十分にその辺りの議論が発展していません。この<物語>。都市計画の立場からはとても重要なキーワードだと思います。シュンペーターが既に概念化していた<信用創造>と<物語>。まさにハワードの田園都市論なども、こうしたキーワードで語れるイノベーションの代表例だったのだと思います。