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【2019 輪廻転生】

★怒り/李相日監督


 怒り Blu-ray 豪華版


ブルーレイ鑑賞。渡辺謙宮崎あおいの父娘とともに造形されていた、みすぼらしく、とりえもなく、さびしげで、せつない、生活と姿形が、きわだってリアルに感じられ、思えば最も印象的だった。日本の随所にこんな住まいがありこんな人たちが大勢目立たず暮らしている。

前に『悪人』(同監督)をみたときに、妻夫木聡樹木希林と住む家の中が同じようにリアルに感じられたのを思い出す。しかし『悪人』では妻夫木が女性にモテないという設定がどう頑張ってもリアルではなかった。しかし今回の妻夫木のドラマのごとき美男と金満な部屋は、ふしぎとリアルだった。

そうすると、逆に際立つのは、あの殺人犯が、いかにしてあのような人物に育ったのかや、なにゆえにあのような殺害に至ったのかは、映画ではまったく実感できないことだ。そもそも、サイコパス的殺人なんて、日本のいたるところで「まったくありふれていない」ということを、むしろ思い起こす。

ところで、『怒り』は、日本アカデミー賞で高い評価を受けたものの、『映画芸術』ではワースト1にされた。評者はどこが気にいらなかったのか、ちょっと興味がある。沖縄の問題を中途半端に絡めたように思えるところとか?

それと、『悪人』もそうだったが、吉田修一の原作が読みたくなる。ちなみに、ネットのいくつかのレビューによれば、脚色されて腑に落ちなくなった展開がいくつかあるようだ。次のレビューもその1つを指摘している。

http://top.tsite.jp/entertainment/cinema/i/30594159/


◎『悪人』の感想