STAP論文II

STAP論文第2弾です。DiscussionとMethodsは省略しております。あくまで意訳・記録用なので、そのつもりでよろしくお願いします。ちなみにこれも半日以上はかかった。


Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency
(原文;
http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/pdf/nature12968.pdf

要旨;この論文において我々は刺激惹起性多能性獲得(STAP)と呼ばれる細胞リプログラミングについて報告する。これは核を移したり、転写因子を導入することを必要としない。STAP細胞のリアルタイムイメージングとゲノムの再構成解析によって、体細胞からSTAP細胞が生じるのはselectionが起こっているのではなくリプログラミングであると言う事を見出した。STAP細胞は多能性マーカーとなる遺伝子の制御領域が大部分メチル化されていなかった。STAP細胞胚盤胞注入によってキメラ胎児とその子孫が作成できた。我々はまたSTAP細胞からのさらなる多能性細胞系の誘導も証明した。以上の事から我々の発見は哺乳類の体細胞の後天的な運命決定が変えられることを示した。

1.(導入)植物では外部刺激によって体細胞が核をリプログラミングさせる現象があるが、動物ではまだ報告されていない。
2. CD45陽性の血液細胞はリプログラミングされない限り多能性マーカーであるOct4を発現しないことが分かっている。そこで我々はCD45陽性の脾臓から取った血液細胞が外部環境を変化させることで多能性を獲得できるかについて検討した。

Low pH triggers fate conversion in somatic cells

3.数ある外部刺激の中からlow-pH刺激を選択した理由は二つである。一つは刺激後のOct4陽性率が高かったこと、もう一つは細胞を一時的に致死的状況下であるlow-pHに曝すことが組織の分化状態を変えうるからである。
4.CD45陽性細胞をpH5.4-5.8の酸性液に30分浸すと最も効率よくOct4発現が見られた。次に我々はCD45陽性細胞をCD90(T cell),CD19(B cell),CD34(haematopoietic progenitors)各々についてpositive/negativeに分けてlow-pHに曝した。前者二つは効率よくOct4を発現し、後者はほとんど発現しなかった。
5. Oct4 を発現した細胞の培養液はLIF+B27培養液が最も効率的であった。LIFは培養後day2-4で必要となる。
6.day1ではほとんどの細胞がOct4(-)。day3だと死滅により全細胞数は減るもののかなりの細胞でOct4(+)。Day7ではさらにそれが顕著となった。
7.day5にOct4陽性細胞はクラスタを形成した。また運動能も認めた
8.Oct4陽性細胞は小さい
9.CD45(-)細胞のコンタミは考えにくい。さらにOct4陽性細胞においてT cellのゲノム再構成も見られたため、T cell系列の細胞が関与していることも分かる。

Low-pH-induced Oct41 cells have pluripotency

10.day3で多能性マーカー発現。まだ血液細胞のマーカーも見られたのでday3がちょうどconversionの時期か
11.day7にOct4らの脱メチル化。リプログラミングが起こってる。
12.low-pH処理後のOct4陽性細胞は三胚葉に分化した。マウスに注入すると奇形腫を形成した。このうちGFP強陽性の細胞のみが奇形腫を形成した。qPCRでもGFP強陽性の細胞から多能性マーカーが見られ、主にこの細胞から奇形腫は形成されているようである。
13.以上からもSTAP細胞は体細胞から出来て多能性を獲得している。
STAP cells compared to ES cells
14.STAP細胞の自己増殖能力はマウスのES細胞と違い、LIFを含む培においてで限定されたものであった。細胞数も減っていった。ES細胞マーカーも低かった。ES細胞と違い雌系統において40%近くの細胞でX染色体の不活化も見られた。またSTAP細胞はむ一つの多能性細胞であるEpiSCsとも違っていた。

STAP cells from other tissue sources

14.脳、皮膚、筋肉、骨髄、肺、肝臓、から得られた体細胞を用いた同様の実験でも効率は様々だったがday7にOct4陽性細胞を得られた。

Chimaera formation and germline transmission in mice
15.続いてSTAP細胞胚盤胞注入を行ったところ、キメラ胚において中程度から高い確率でGFP発現が見られた。これらの胚はかなりの確率で産まれてきて正常に育った。
16.CD45陽性細胞から得られたSTAP細胞はあらゆる組織に分化する。さらに言うと、STAP細胞から得られた胚の子孫はキメラになった。これはSTAP細胞生殖細胞系列にtransmissionされたことを示す。さらに、tetraploid complementation assayでSTAP細胞は、全ての細胞がGFP陽性である胚を作った。これはSTAP細胞が単独であらゆる胎児細胞になれることを示す。つまりSTAP細胞生殖細胞系列だけでなくあらゆる体細胞系列に分化できるのである。

Expandable pluripotent cell lines from STAP cells

17.STAP細胞の自己増殖能力が低いことは述べたとおりだが、胎児環境下ではSTAP細胞は完全な胎児になった。そこで我々はSTAP細胞が多能性細胞系列に分化できるかを調べた。
18.STAP細胞はLIF+FBSを含んだ培地に曝さないと効率的に維持できない。とくにACTH+LIFを含んだ培地がSTAP細胞の増殖に有効だった。この培地で培養したSTAP細胞ES細胞に似た形態を示し,Oct4強陽性であった。
19.これらをSTAP幹細胞と名付けた。
20.STAP幹細胞は多能性細胞のRNAとタンパクを発現していた。Oct4のDNAメチル化の割合も低かったし、核の微細構造もES細胞と似ていた。STAP幹細胞は心筋細胞を含む外中内肺葉に分化し奇形種も形成した。胚盤胞に注入してもキメラマウスを形成し、生殖系列にもtransmissionされた。tetraploid complementation assayでもマウスの継代が確認された。
21.STAP細胞とSTAP幹細胞の違いは自己増殖能だけでなく、Esrrβの発現の有無(STAP幹細胞のみで発現)やH3K27me3 fociの存在(STAP細胞のみで見られた)であった。

(ここまで)
何か想像以上に色々なものを巻き込み激動の展開になってますが、あとは調査委員会のお任せするしかないみたいですね。ただ闇はあまりに深い気がします。どこまで踏み込めるのか...。まぁ何でもいいけどとりあえずDiscussion読んできます。