題が未だ無い小説(第九章)

 〜第九話〜
 夏も過ぎ、秋晴れとした天候が続く。少しからず、夏の残暑がありつつも、季節は秋へと向かい始めていた。
 そんな中、「端山」と書かれたプレートが張られている家からは、いつものように、普段どおりに騒がしかった。
 苦笑交じりの表情をしつつも端山は姫を見ている。
 そう、今日は姫が急に「料理したいから手伝え」と、言われたため、姫の助手としている。二人とも、エプロンをしていて、姫は何に対して防御をしているのか、マスクに眼鏡、頭巾、手袋、足袋などと着用していた。
 「・・・姫さ、そんなに防がなくても大丈夫なんじゃないか?」
 端山は姫に言ったのだが、姫はこう言った。
 「わ、私は「科学」という事を知らないわ。いつも魔法で済ませていたけど、たまにはこう言うのも良いんじゃないのかなって思って。だから教えてって言ってるでしょ?」
 「分かった、分かった。俺でも初歩的な食事しか摂らないけど、この際上級のを作れるようにしてみっか」
 こうして、二人して料理の時間がやってきた。

 「・・・・・・」
 龍神秀(デグラシア)の十翁、八番目の魔名が裂踊鎖(チューブリオ)、人名が高田 舞衣(たかだ まい)は、「端山」と書かれたプレートを見つけた。
 彼女は何を迷っているのだろうか。戦か?それとも違うことなのか?
 数分経って、周囲を見回す。同然、誰もいない。昼間だと言うのに、外には人気が無い。
 彼女は決意して、ポストの中に二通の手紙を入れた。端山宛てと、姫宛て。

 数十分、いやニ時間ぐらいたっただろうか。二人してキッチンにいて、料理をしていたら既に三時前になっていた。
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 端山は端山で、上級ランク的な料理を懸命に作っている。
 姫は姫で、世に存在しないような食べ物を作っている。
 そして―――。
 「「出来たっ」」
 二人の声がハモる。同時に出来たそうだ。
 「これ、作るのに時間が結構かかったな。こんなに時間かかるとは予想もしてない」
 「私は初めてだから、ミスったりしたけど、出来たよ」
 当の料理は冷蔵庫に収納され、片づけをしていた。
 そんな時、チャイムが鳴った。インターホンで確認すると、何かの配達便だそうだ。
 「ああ、俺出るから片付けよろしく」
 「はーい」
 端山は玄関へ向かい、ドアを開けると、そこには帽子を深く被った青年がいた。
 「すみませんが、この方はどこに住んでおられますか?」
 唐突に住所欄を端山に見せる。端山は何の疑問も思わず、それに対して言った。
 「はいはい、山内さんのお宅ね。それはあっち方面へ行って、二個目の十字路を左に曲がればありますよ」
 「ありがとうございます」
 「いえいえ」
 そう言って配達便は端山の指示通りに行く。端山は家の中に戻ろうと思い、ポストの中を見れば、手紙が入っているのに気づく。それを持って家の中に入る。
 「ん・・・?俺と姫宛てか。差出人は不明っと。俺のはポケットの中に入れて置こう」
 そう言って、端山は左ポケットに手紙を入れて、キッチンに戻った。
 「誰なの?」
 「ああ、入ったばかりの配達屋さんだそうだ。住所を教えてくれと言ったから、教えただけだ」
 「ふーん」
 「それと、姫宛に手紙が届いてるぞ」
 「私?」
 姫はキッチンからこちらへと来る。二人横に並んでソファに座って、姫はその手紙を開封する。
 「サイト、これ挑戦状だわ」
 「何?挑戦状だと!?こんな時代にでもそんなのはあるんだな・・・」
 端山は自分宛の手紙の事を喋ろうとはしない。
 「姫、全貌を読んでくれ」
 「うん、分かった。
 〜灼竜姫(アクウォンミーナ)へ
  私は貴方に挑戦を挑む。
  今日の三時半、町外れにある何も無い広場にて待っている。
  貴方の付き添い、端山彩人には来ないように伝える事を望む。こちとら、サシ勝負を望むから。
  来なかったら、竜姫翁(メイルピア)の守備隊を順番に殺していく
                     龍神秀十翁八番目、裂踊舞、高田舞衣〜」
 「高田・・・」
 端山は何かしら聞き覚えのある人名だったのだろう。
 「サイト、知ってるの?」
 「いや、知らないな。高田なんて、この世にはたくさんいるんだからな」
 「そうだね。私はこれから向かうから、留守番よろしくね」
 そう言って、エプロンとかの重防御を全て脱ぎ、玄関から勢い良く飛び出して行った。

 ここからは主観で行く。俺は姫が出たのを確認してから、俺宛の手紙を読むことにした。
 〜端山彩人へ
  そなたには我らの願いを聞いて欲しいと思っている。敵ながら失礼だと思うが、すまない。本当に、手がこれしかなかったのだ。にしても、久しぶりだな端山。
  さて、本題に進む。この頃、龍神秀の方では結構大変だと私は、上から聞いた。どうやら、ラスボスがこの世を変える程の莫大な力を持っていると聞く。月光 優姫(つきびかり ゆうひ)が生きている間に聞いた事だが、「竜姫翁に端山彩人が入るだろう。彼を上手く利用して、奴を殺すんだ」とか言っていた。月光は現在、奴の使徒となっているので、既に亡くなっている。私がいるというのに、すまないな、本当に。で、だ。今すぐにでも、端山は学校の屋上に行かなければならない。上からの命令で、端山をその場所に呼べと言われたのだ。
  これだけは言っておこう。端山は死なない。貴方は何があっても、生き残るのだ。
                             古き親友、高田舞衣〜
 俺はとても悲しくなった。あの、月光さんが・・・。
 ・・・いや、今は泣いている暇なんて無い。屋上に行かなければならないのだ。
 俺は家中にある窓を閉め、カーテンを閉めてドアの鍵までも閉める。
 何故、出発前にこんなことするのかと言うと、最近、物騒な世代になっているらしく、盗難とか起きても過言ではないのだ。だから、用心だけはしておかなければ、大事なものが盗られる。
 そして、俺は屋上へ走って向かった。

 「やっと来たか・・・」
 「裂踊舞っっ。お前はこんな所に呼んで何がしたい?」
 私は言ってやる。こんな所に呼ばなくても、近い場所で殺り合えばいいのに。
 「何って、決闘よ。挑戦状を出しているんだから、それぐらい推察して欲しいわ」
 彼女は鎖をジャラリと鳴らす。
 「そのとてつもなく長い鎖が貴方の武器ね・・・?」
 「そうよ。人の首を巻いて引けば、一瞬にして死ぬわよ。あれは楽しかったわね。守備隊五番隊長を殺すときは」
 「!貴様、貴様だけは許さないっっ・・・」
 私は最大の力をかけて彼女と戦う。谷山の仇を討つために。
 「さあ、かかってきなさいよ」
 彼女は何かの呪文を唱え、鎖を宙に浮かす。
 「その、挑発に乗ってやるわ!」
 私は彼女に向かって走り出した。

 秋晴れとした天候は一気に崩れ、雲が出てきた。今か今かと降らんばかりの感じがする。
 俺は屋上に着く。そこには見慣れない二人の男子がいた。
 「やあ、端山彩人君。君と手合わせを願いたい」
 「俺も同じく」
 「まず、名乗れや」
 俺は今か今かと剣を呼ぶ準備に取り掛かる。
 「おっと失敬。僕の名は神風 仁(かみかぜ じん)。以後、お見知りおきを」
 「俺の名は光屋 雷人(ひかりや らいと)。覚えなくても結構」
 「始めまして、お二人さん。俺の名は端山彩人。覚えやがれっ!!」
 叫びと共に剣を出し、まずは光屋とやらと剣を交じり合う。
 「まずは俺からだ。手加減はせんぞ。こっちはいつだってコンボ技が出せる。いつでもお前は死ぬんだから、俺を楽しませろぉぉっ!」
 「うぐっ!?」
 俺は力を入れて耐えていたはず。なのに、それがいとも容易く砕かれたのだ。
 「な、何だ・・・。この強さ・・・。今までと戦ってきた奴らとは完璧に違う」
 俺は少々逃げ腰になる。姫の威圧、十翁の二人の威圧すら超越して、もはや超人としか思えない威圧が俺を襲う。そして足が竦む。
 「うらあああぁぁっ!!」
 光屋の叫び声で我に戻ったのか、俺は防ぐ。
 「うぐっ!?」
 け、剣がへし折れるぐらいの力を出してきやがる。こいつは力任せ過ぎねぇか?
 「危険を冒してまでも俺は大丈夫だと信じている。だからどんぐらいでへし折れるかなんて分かるんだよっ!」
 俺は膝を地に付いてしまう。今は彼の縦の攻撃を防いでるだけで精一杯だった。
 「ま、負けてたまるかっ!!」
 俺は押し返す。徐々に立ち上がり、彼とようやく対等した。
 「ほお、ちったぁやる気になったか?じゃあ、次は神風だ!!」
 突然力を抜いて引き下がるから、俺は前にこけそうになる。
 「突然離脱するな!」
 「今は自分の敵を把握するほうが良いのでは?」
 「いっ!?」
 俺が見た物は、神風の周りに沢山の剣が現れている。その数は・・・。
 「256本。これが僕の最大で表す事が出来る数なんです。じゃあ、行きなさい」
 それが矢継ぎ早に俺へと向かって飛んでくる。おい、剣じゃなくて槍じゃないか?
 そんな事はどうでも良く、俺は避ける事だけに専念していた。避けれないときはそれをはじいたりして。結果的にはかすり傷を沢山負っただけだ。
 「じゃあ、これはどうです?」
 今度は、俺の真上に槍が幾万本と現れて、今すぐにでも落ちそうな感じだった。
 違う。こいつらの次元は俺のと完璧に違う。勝てっこないって。呪文詠唱時間を全部省いてかつ、行動力が凄すぎる。
 「じゃあ、落ちなさい!」
 上から幾万と言う槍が落ちてくる。俺は落ちてくる一秒の間に回避する。あー。心臓がバクバク言っていやがる。俺が休憩している間は、彼らが何かしら会話していた。
 「どうだ、神風?」
 「僕はずいぶん楽しめたよ。光屋君はどうなんです?」
 「俺は・・・まあ、どっちかと言えば楽しめたぜ。そろそろ終わりにしようか」
 「光屋君ったら、忙しないですね。ま、それもいいでしょう」
 すると光屋は力を込めており、神風も剣を構えて力を込めている。
 俺はしくじったのか、逃げた場所が屋上の柵の手前で、逃げ場がなかった。くそっ、どうすれば・・・。
 力を込めてもいるのに、平然と俺の会話をした。
 「端山君、どうやらこっちの勝ちのようです。逃げ場がありませんからね」
 「てめぇは、ここで死ぬと確定してんだよ。そろそろリミットタイムだ」
 ジリジリと俺に向かってくる。遂には、後ろに逃げ去る場所すら失った。
 すると、決め台詞かのように、光屋はこう言った。
 「終着地点はここだったんだよ、端山。会えたら、来世で会おうな」
 そして二人はこう叫んだ。
 「十字斬(クロズクロス)!!」
 俺は剣使い失格だ。敵に背なんか見せてしまった。俺は背中に十字の傷を負って、柵を越えて屋上から落ちた。この学校は五階まである。そうとうな高さだ。そして俺が落ちる予想の場所はグラウンド。
 俺は生きていると信じながら、背中から大量の血を流しつつも落ちていった。

題が未だ無い小説(第八章)

 〜第八話「悪の企画書」〜
 周囲はとてつもない暗闇に囲まれており、太陽の光すら届かせることなく、ある一つの要塞はそこに滞在していた。その要塞の名は「龍神秀(デグラシア)」。そこには五御王(フィンディア)と舞鳳美(ヴィーイッジ)、超破誠(メタリアル・ブレイク)が住んでいる。先日まで、十翁(テンベイ)の五番目から一番目が滞在していたが、ある、任務の遂行中なのだ。五人全体が動かなければならない特大な任務。
 そして、その超破誠が貴族が座るような高貴な椅子に腰をかけていた。
 「つまらん。実につまらん。何かないのか、舞鳳美よ」
 右手にワインが入っているグラスを持って、彼女に告げていた。そう、現にこの中にいる人たちの位で言うと、超破誠が一番上なのだ。舞鳳美は超破誠の命令を忠実に従う秀才な人員なのだ。
 「そう言われましても、零様の気分を最高潮にして差し上げるような物はありません。すみません」
 「そうか・・・。この我輩を楽しませてくれるようなものがあればいいんだが・・・」
 そう、零様が言うと、柱にもたれていた五御王のうちの一人、光屋 雷人(ひかりや らいと)がこう言った。
 「じゃあ俺からいい情報をやろう。今回の十翁は荒れる。そして、竜姫翁(メイルピア)の方に超有力な人員が増えたとの事。これはどうだ零様」
 「ふん、実にくだらん。たかが蟻一匹増えたところで、我輩の『悪の企画』は破滅しない」
 グラスの中にあるワインを全て飲み干し、そのグラスを後ろへと放り投げる。当然、グラスは割れるかと思ったが、後ろに立っていた五御王の一人、神風 仁(かみかぜ じん)が持っている台の上にちゃんと着地する。
 「神風。ワイン追加」
 「かしこまりました」
 神風はそこから厨房へと向かう。
 「・・・で、光屋。その蟻一匹の情報は集まっているんだろうな?」
 「現在、集めているところですよ。そして今、分かっていることは、かの有名な七彩剣(ななさいけん)虹蒼剣(レイン・ブローウ)を持った一般の男子高校生だけですよ」
 「七彩剣・・・か。昔までは欲しがっていたのだが、今はそれをもたやすく木っ端微塵に出来る相当代物を我輩は手に入れているんだからな」
 そう言って、彼が鞘から抜いたのは、黄金に輝く刃を持つ、金剛硬重剣(ダイヤ・ヘヴィー)だ。
 それは太古昔からこの龍神秀によって守りきられていた。どんな最悪な状況でも、それを使ったものはいない。それどころか、この剣の存在を知っている物は零様の先祖ぐらい。それにはあり得ないほどの魔力を封じ込めており、封印を解くと共に、この世を終わりへと迎えてしまう、史上最悪の剣。
 すると、神風が零様にグラスを渡す。
 すると、とても退屈だった零様がこう呟く。
 「神風と光屋。その竜姫翁の蟻を倒してきてくれないだろうか。たかが蟻一匹。すぐに倒せるだろう。そいつがどんなのか、とても知りたくなってきたぞ」
 零様はグラスを軽めに振っている。勿論、答えは―――。
 『了解、零様』
 言うと直ぐに二人の姿は見えなくなる。
 「お前も思わないか?舞鳳美。いや、月光 優姫(つきびかり ゆうひ)、反逆計画を望む者よ」
 「既に、思考を読まれていたのね?」
 「ふん。我輩はこれを待っていたのだ。戦を。我と手合わせしたいと思うのか?」
 「無論、ここで貴様を殺す。我の両親の為に!!月爛明(ムーナイデ)!!」
 零様と彼女がいる場所は月の光によって埋められる。彼女にとって、これはいいと悟ったのだろう。だが、ここで彼の魔法を侮ったら駄目だ。
 「・・・消エロ・・・」
 誰もが使う日本語。だが、彼は魔法を超越する、未だ名も無い能力を所持しているのだ。意味も彼自身しか知らない。
 最強を誇る魔法を瞬時にして闇へと変換する。が、彼女の姿は見えない。
 「・・・姿ヲ現セ、地ニ伏セロ」
 零様は座ったまま、唱えた。
 すると、彼女は零様の前に現れ、地に伏していた。
 「がはっ・・・」
 「小細工ごとき、この我輩にでも通用すると思ったのか?反逆計画を企てた張本人よ」
 「ふふっ。私は貴方に一生、ついてくつもりだったわよ。でもね、その『悪の企画書』の事を知って、倒そうとしたのよ」
 「あれを見られたのか。門外秘出だから、お前には口封じとして死んでもらおう」
 未だに地に伏している彼女に、呪文を追加した。
 「・・・命令ナキ者、今以ッテ窒息シテ死ネ」
 「わたし・・・は、まだ・・い・・きる・・・の・・・よ・・・・・・」
 彼女は空しく、息を引き取ってこの世から存在しない存在へと変わった。だが、ここからが彼の『悪の企画』に則って行動するのだ。
 「・・・魂亡キ者ヨ、今以ッテ我輩ノ使徒トナレ」
 さっき、この世から消えた人の体が勝手に動き、立ち上がる。その目は、文に表せないほどの黒さを秘めていた。そして、零様を前にして跪く。
 「零様。我、意識無き者としてこれから貴方の使徒に勤めさせて頂きます」
 「よかろう。では、我輩について来い」
 零様はグラスに入ったワインを一気に飲んで、グラスを後ろに放り投げる。当然、受け取ってくれる者なんていない。グラスの割れた音が聞こえるが、彼らは無視をしていた。
 「分かりました」
 零様と彼女は、奥の部屋へと行く。 

題が未だ無い小説(第七章)

 〜第七話〜
 やはりまだ残暑があって、半袖夏ズボンと言う形で学校に通うことにした。長かった夏休みもやはり短かった。何で楽しい時間は早く過ぎるのか知りたいね。竜崎姫と出会ってから俺の日常は超常へと変わったものの、やはり日常と変わらぬ生活を過ごしていた。龍神秀(デグラシア)の十翁(テンベイ)の二人を倒し、さらに七守護竜(セブンスドラゴンズ)の七体目の竜、爆雷竜(ヴェルジオン)を呼んだのだ。それに爆雷竜の鱗も貰い、家に大事に飾っている。
 俺が通う箱庭龍聖(りゅうせい)学園は何度も言うが、瓜二つのようにそっくりな学校の一つなのだ。もう一つが箱庭竜聖(りゅうせい)学園なのだ。だが、ここで問題が発生した。
 夏休み終了前日。俺は姫と会話していた。
 「サイト。お前は箱庭龍聖学園生徒だな?」
 「いきなりどうした?そうだぞ。俺は《龍》の方だ」
 何故か姫は考え事をしてこう言った。
 「一つ言っておくが、魔法が使える生徒は皆《竜》の方なのだ。《龍》の方で魔法が使えるようになったケースは少ない。あったとしたら、魔法が使えるようになった初日に学園のほうから手紙が届くはずなんだが、何で届かないと思う?」
 「え、そりゃあ俺は《龍》から外されていないって事だろ?」
 「それも一理あるが、私が考えていることは《龍》の方にも魔法生徒を導入しようと考えているのかって事だ。そしたらサイトが《龍》の方から外されない理屈も通じる」
 「ま、明日直に先生に聞いてみるよ」
 「それが妥当だ」
 って事で俺と姫は今、職員室前にいる。
 「ひ、姫が行ってくれるか?俺、こういう所嫌いなんだよ」
 「サイトが行け。関係あるのはサイトだろ?」
 「い、いやでも・・・」
 俺は姫とやり取りをしていると、職員室から俺の担当の先生が現れた。
 名前は美人局 麗(つつもたせ れい)。二十代前半と思しきスタイルで。男子生徒には人気がある。女性ホルモンを多く出しており、男子が惹くことは百パーセントである。
 「おや、端山君に竜崎さん。どうかしたの?」
 俺は一度姫を見ると、どうやら姫は俺の後ろに隠れている。?何かあったのか?
 「あ、あの僕のことについて相談したいんですけど・・・」
 「いらっしゃい。相談室に」
 相談室は職員室の中にあり、そこで話し合いをするようだ。先生はその場所を教えて行く中、姫は俺の後ろに隠れっきりである。姫が呟く事が良く聞こえるのだ。「ありえない」と。何があり得ないのか知りたいのは山々だが、それは後にしておこう。
 俺と姫が入って先生が入ったら、誰にも漏らさない様に鍵を閉める。そして俺と姫は出されたパイプ椅子に座る。先生は長テーブルの反対側に座る。
 「で、どういうことかしら端山君」
 「僕は・・・えっと・・・その・・・」
 魔法と言うことを先生に伝えて良いのか全く分からない状況であった。だって、先生は魔法を使える人間では無いし、無関係者だし・・・。それに姫も手を貸さないのである。さっきからずっと、呟いているのだ。一体どうしたものか・・・。
 「ちゃんと用件を伝えるのよ、端山彩人君」
 先生はフルネームで僕の名を呼ぶ。本当に困ったものである。誰か助け舟を出してくれないかな・・・。
 俺は黙って考えていると、先生はこう言い出した。
 「・・・ふぅ。それは禁則ではないから伝えてもいいのよ。魔法のことなんて」
 「はい、そうですね・・・って」
 今、重要なことサラッと言わなかった?
 「端山彩人君が魔法を使えるようになって、《龍》なのか《竜》なのか分からないから相談しに来たんでしょ?」
 「な、何で分かるんですか?」
 ここまで黙っていた姫がやっとのことで喋りだした。
 「彼女は私の、竜姫翁(メイルピア)の姫、美人局麗姫だ」
 「よろしくね、端山彩人君」
 「ってことは・・・」
 「そうだ。私があり得ないと連発して呟いていたのはその事なのだ。姫、何故このような場所に就いているのですか?」
 「もし、こちらで魔法生徒が出たら対処しきれなくなってしまうからこっちにいるのよ。端山君みたいに」
 先生の視線は俺の方へと向けられる。
 「で、サイトはどうなるんですか?」
 「勿論、こちらよ。まだ魔法には不慣れだし大丈夫かと私は思うんだけど・・・」
 「ふう、それは良かった・・・」
 「そう安堵するのも良いけど、貴女もよ」
 すると、姫(先生ではないほう。先生の場合は先生としている)は目を大きく開いた。
 「な、何で私もこちらに移転する必要があるのですか!!」
 「不慣れな端山君に魔法を教えるためよ。こっちにも対魔法生徒用教室を作っているからそこで魔法の特訓を毎日するのよ。一刻も早く守護班一番隊長に戻らないといけないから、貴女も特訓する必要があるわ」
 「すみません。守護班は大丈夫なんですか?」
 「ええ。でも、五番隊長がやられたから、ちょっと手厳しい状況なの」
 「五番隊長・・・。壁操作(ウォールアティア)の谷山 奈央美(たにやま なおみ)が・・・」
 「それに、強力な人物が入ったから攻撃班一番隊長は端山君にお願いするわ」
 急に俺に振られたので俺は動揺した。全く、話についていけない・・・。
 「えっと、どういうことですか?」
 「竜姫翁と龍神秀は対立しているのは分かっているわね?龍神秀の十翁の八番目、裂踊鎖(チューブリオ)の高田 舞衣(たかだ まい)が一人で襲来して守護班五番隊長を倒したわけ。守護班の力が弱まっている今、攻撃班の力を増幅したい訳なの。そこで、十翁の二人を倒した端山君には攻撃班一番隊長に務めて欲しいの。ほら、攻撃は最大の防御なりって言うでしょ?」
 「別に、いいですけど・・・」
 俺はそう言ったのだが、姫はこう言った。
 「サイト!勝手に決めないでよ。どっちか片方が決めてしまったらもう一人のほうも、了承しざるを得なくなるじゃない!!」
 「そうなのか?俺はそれで助かるんだけど・・・」
 「竜崎さん。2対1でこっちの有利よ。いい加減、諦めたらどう?」
 「うっ・・・」
 そして姫は沈黙してしまう。その沈黙から読めるのは、「わ、分かったわよ」と骨を折ってくれたようだ。
 「そういう事で、対魔法生徒用教室に二人が入籍しましたっと・・・」
 先生は何かを呟いて、俺らに魔法をかけた。姫は沈黙して放心状態になっているため、先生が何を唱えたのかすら聞けない状態だ。なので俺が直に聞いた。
 「先生。何をしたんですか?」
 「何もして無いわよ」
 と言う。怪しいと俺は思ったが、これ以上追求したら何かこちらにもされそうで止めといた。
 「で、その教室はどこにあるんですか?」
 「私が教えるから着いてらっしゃい。竜崎さんを起こしてね」
 「おい、姫。聞こえてるか?」
 どうやら姫は沈黙のついでに意識もあっち側に飛んでしまっているようだ。本当に困ったものだ。俺は仕方なく、おんぶすることにした。やはり、溜息をする回数が尋常だ・・・。
 その対魔法生徒用教室は意外にも職員室から近かった。その教室は何も使われてなくて、ただその教室に入った途端に魔力を感じた。
 「!この、満ち溢れる魔力の大きさは尋常じゃ・・・」
 「いいえ、尋常じゃないわ。ここは『対魔法生徒用』なのよ。こんぐらいがぴったりなのよ」
 俺は姫を壁にもたれさせ、先生に聞きたいことがあったため、七彩剣(ななさいけん)虹蒼剣(レイン・ブローウ)を出した。
 「それが端山君の武器?」
 「はい。七つの色に変化が出来て、色ごとに効果が違うのと魔法が違う剣です」
 「また、興味が惹かれそうな物を持っている様ね」
 「ですが、無色のうちは弱いレベルの魔法だと魔法吸収が自動的に、高いレベル魔法だと「魔法吸収(デグラリバース)」と唱えれば魔法吸収が出来るんです。こんなに利点が多い剣を見たことがありますか?」
 先生は考え、こう言った。
 「私もたくさんの魔法使い達を見てきたけど、現に分かっているのは二点だけ。一点目は、この世には同じ魔名を持つ者は存在しない。二点目は、魔法使い達が急上昇している真っ只中であり、魔法は新しく発展しているのよ。だから、今時に存在し始めた魔法使い達の事なんて私は知らないのよ」
 「そう・・・ですか」
 先生なら分かっていると思ったけど違ったか・・・。
 「私はこれで退散するから、何かあったらまた職員室に来てね」
 「分かりました」
 そう言って先生はここから出て行く。鍵をかける音まで聞こえる。だが、そんな事を気にしていなくて、俺はただ剣を振り続けていた・・・・・・。
 「さて、何か肝心な事を忘れているぞ・・・」
 俺は今、変な汗をかきそうだった。もう一回、おさらいしてみよう。
 「先生はここから出て行く。鍵をかける音までが聞こえる―――」
 既に俺は変な汗をかいているのかもしれない。そして職員室であったことを思い出す。あの時、先生は何か魔法をかけたそうなんだが、張本人は何もして無いと、俺に告げている。だが、そうであれば俺は何故、こんな所で剣を振り続けているんだ?
 ・・・・・・!!
 俺は今になって先生の考えていることが分かった。先生はあの時、魔法をかける前に「対魔法生徒用教室に二人入籍しましたっと」って言っている。そこから単純に考えていれば、こういう結論になる。
 「先生は俺と姫の入籍クラスをここに変えたってことかっ!!」
 そして今に姫は起きた。
 「・・・ここは?」
 「ここが、例の教室だ。だが、先生の許可もなしにここ出られるかどうか・・・」
 「別にいいじゃないの。出なくても」
 俺は彼女が言った事について、呆然としてしまった。彼女は立ち上がり、身についてそうな埃をはらう。
 「ここで、私達の魔法が強化されるなら」
 姫は、リボルバーを引く。そして、俺に放ってきた。
 「のわっ!?」
 俺は左に前回転して避ける。銃弾は壁にめり込む・・・事無く、壁に当たる寸前で落ちる。
 「ここは結構幾十の魔法が掛かってるわね。これを壊そうとなると、現段階での二人の力では出られないわ。ここはそういう仕組みになっている」
 「じゃあ、どうしたら出られるんだよっ!!」
 「お前は今すぐ出たいのか?」
 「そりゃそうだろ!衣服どころか洗面所、風呂、食事が取れない状態で過ごせと言ってる様なもんじゃないかっ!!」
 「その魔法もかかっている。願えば出てくるだろう」
 姫がそういうので、俺は何の必要性も無いティッシュを願いだす。・・・・・・。
 するとどうだろう。俺の目の前にそれが現れて、消えていく。必要性の無いものはやはり、消えていくか。
 「そういうことだ。サイト」
 「強くなれるのかな・・・」
 俺は嘆き、溜息する。これから波乱万丈の魔法特訓日々があるとは思わずに。

題が未だ無い小説(第五章)

 〜第五話〜
 夏休みが終わる一週間前。そろそろ暑さが去ってもいい頃、俺はある懸案事項を抱えてしまった。しかも、夏休みには学校には行くまいと思っていたのだが、ある一通の手紙によってその願いは消えてしまったのだ。簡単に言うと、挑戦状なのか果たし状なのかのどちらかに絞れるのだ。わざわざ、告白ならば学校のある教室に呼び出すなんて可笑しいだろう。噴水の近くにある公園とか、水族館の近くにある喫茶店とか、駅前のロータリーとか。
 どうせ俺だって暇なんだ。夏休みの宿題は当の昔に終わらせており、何もすることが無いのだ。・・・ゲームは完璧に攻略したのだが、姫によってデータを消されてしまったのだ。ああ、またフラグを立てる所からしなければならないのか・・・。
 姫と剣の稽古をした時から、俺の日常に「魔法」という習慣がついてしまった。物を浮遊させる術を使い、それを維持するのと移動させるのと。二週間ぐらいで三分間維持することが出来たので、姫からは「姫のバックアップ」と言う地位を貰ったのだ。
 「所詮、私のバックアップなんだからって言っても特訓は続けるんだからね!」
 とか言われて、次の特訓に入っているのだ。今回の特訓は、各系統の初級魔法を全て覚えるという、俺には無理難題かと思しき試練を貰ってしまったのだ。無理だと俺は一時間粘って口論してみたところ、「私もそれをやって通り越したんだから、やりなさい!」の一言で呆気なく、俺の反論は終了せざるを得なかった。夏休みの宿題も終わったのに、今度は魔法を勉強か。当分、俺に「休日」と言う日が来ないそうだ。
 そんな中、手紙が届いて俺は学校の屋上に行くことにしたのだ。
 箱庭龍聖(りゅうせい)学園。箱庭竜聖(りゅうせい)学園のもう一つの同じ学校で、俺が住む町には全域にわたってその噂が流れている。「龍」の方は通常人間が通う学校なんだが、「竜」は魔法を使う人が通う学校なのだそうだ。当然、俺は現在どっちなんだろうと不思議に思っている。夏休みはいる前までは「龍」の方だったけど、今や俺は魔法使いとなっている。理論的に考えれば、俺は「竜」の方なのだが、不安なのだこれが。
 ま、そんな事は片隅に置いといて。俺は屋上へと向かった。向かう途中、四階の踊り場から屋上へ行く階段のロープには、「立ち入り禁止」というのが、姫と会う前よりも強調されている。
 俺は前回と同じくそれを越えて屋上へと向かった。そしてドアを開ける。
 その途端、誰かの呪文を唱える声が聞こえた。
 「舞鎌(シルサ)」
 突然目の前から俺に向かって鎌が振り下ろされたのだ。何も反応できやしない。だが、俺の七彩剣(ななさいけん)虹蒼剣(レイン・ブローウ)は反応して俺の目の前に現れ、それを受け止める。
 「!?」
 「ほお、お見事だ」
 声がする方向を俺は見る。そこには見慣れた、阿島君人(あじまきみひと)がいた。
 阿島君人は高校で知り合った友達であり、運良く最初に声をかけてくれたのがこいつだと言うことで友達になった人物なのだ。だが、この現況を見てみれば分かるだろう。いや、分かりたくもない。何故―――。
 「おい、まさかお前・・・」
 「そうさ。俺は龍神秀(デグラシア)の十翁(テンベイ)の九番目、鎌美舞(アディタガ)さ。竜姫翁(メイルピア)の幾人かは殺してお前の居場所を突き止めたわけだ。だが、俺はお前を簡単には殺さないさ。ちょっとした心理戦と行こうか」
 阿島は鎌を持ちながら俺に問いかける。
 「お前はどっちの言うことを聞く?」
 「は?いきなり何を言い出す・・・」
 んだ、とか言わせてくれ。最後まで言わせずに遮るのは止めておくれよ。
 「お前は俺の言うことを聞くのか、灼竜姫(アクウォンミーナ)の言うことを聞くのかどちらだって聞いているんだ」
 「そりゃあ、勿論姫だよ」
 「それはお前の思い込みかもしれないな。ま、お前が決めることなんだけどな」
 「おい、言いたいことがあるなら早く言ってくれよ!」
 俺は刃先を彼に向ける。だが、それを持つ手は震えている。こいつに、こいつだけには刃先を向けたくはなかった。
 「俺がお前を焦らしているとでも思うのか?まあいいだろう」
 彼はちょっと移動して俺に話しかけた。
 「お前は姫のことを信じているようだが、姫は嘘を吐いているかもしれないぞ」
 俺はちょっとイラっと来た。
 「はぁ?俺は姫と何週間一緒に過ごしてきたんだと思うんだよ!?」
 「そんなこたぁ知ったこっちゃねぇ。魔法界の中でお前はどこにいるのかって聞きたいんだよ」
 ・・・俺の居場所?そんなもの竜姫翁に決まって・・・・・・。
 「・・・ふん。答えが出ねぇようだが、一体どうしたんだ?端山彩人」
 俺は・・・俺はどっちなんだ?自分でも分からない・・・。
 「どっちかなのか迷っているようだが、お前は中立しているわけだ。だから、竜姫翁と龍神秀の戦争はただ見ているだけでいいんだよ。中立者は傍観者と同様だ」
 「・・・一つ聞く。傍観者という魔法使いはいるのか?」
 「いや、この世には一人すらいねぇさ。でもな、お前が決めたならお前が最初に一人だ。お前はそれを嫌うか?」
 「俺は孤独なんてこれっぽっちも嫌だ」
 「さすれば、竜姫翁か龍神秀のどちらかを選ぶべきだ。さぁ、どちらを選ぶ・・・?」
 すると、阿島の目つきが変わったが、魔法を使ったなんてこれっぽっちも知らない。
 「俺は・・・・・・」
 ・・・あれ?何かくらくらするぞ。誰かの魔法が俺の脳にかかっており、俺が言いたくも無いことを言いそうだ。くそっ。嵌められた。止まれ!俺の口!
 「・・・俺は、阿島と友達だ」
 「ああ、俺と端山は友達だぞ」
 「・・・だから、俺は龍神秀を選ぶ・・・」
 止めろ!止まれ!!そして誰か助けろ!心の中で叫んでも気づく奴なんていないけど、俺は何故か叫んでいた。
 すると、阿島は俺に手を出している。
 「さあ、俺と握手しようじゃないか」
 握手をするな!何かの契約が掛けられるに違いない!とにもかくにも、俺の身体を勝手に使うんじゃない!!
 「さあ、さあ、さあ!!」
 すると、左手に剣を持ち替えており、右手で握手をしようとする。
 しかし、握手は行われなかった。一発の銃声によって阿島の手に当たったのだ。それによって、精神集中していたのが途切れ、俺は我に戻る。
 「ちっ。邪魔が入ったか」
 そしてあの声が聞こえた。
 「そいつから離れろおぉっ!!」
 腰まで届く赤みの帯びた長髪。威勢のいい性格の女子。そして右手には銃を持つ竜崎姫が現れた。
 「姫!!」
 良かった。助かったよ・・・と、心の中で思っていたが彼女は次にこう言った。
 「そいつから離れろっ!!巨爆轟打(ビャイアグラ)!!」
 とてつもなくデカイ銃弾が阿島に向かって放たれる。彼に近づいていたので、俺は絶対当たるからそう言ったのだろう。言われなくても打てば避けるよ!!
 俺は前回転しながらその場を避けるが、阿島は違った。
 「縦一線(ウィドクラド)」
 そして鎌を縦に振った。そしたら、そのデカイ銃弾は真っ二つになる。そして姫はこう叫んだ。
 「サイトは竜姫翁の一員だ!既に本籍がある!サイトは龍神秀には渡すもんかっ!」
 俺は安全策を考えて姫の隣に立つ。
 「そ、そうなのか?ってか俺の魔籍(ませき)いつ入ったんだ?」
 「?お前馬鹿か?一週間前ほどに契約書を渡して書いたではないか?」
 一週間前・・・・・・。!
 「あの紙が!?」
 「そうだ。だから胸張ってこう言えばいい。「僕は竜姫翁の一員です」って」
 ほっ。良かった。
 「でも、会話は後にしておこう。鎌美舞がお怒りのようだ」
 阿島を見てみると、確かに調子狂った獣のように怒っていた。
 「てめぇ。俺の計画をぶち壊しやがって・・・。てめぇは真っ先にあの世へ送ってやらぁ!!八連鎌(エイグラリオ)!!」
 俺と姫に向かって八つの鎌は襲い掛かってきた。
 「気を緩めるなよ。これはもう戦争が始まっている。気を緩めたら死ぬと思え!!」
 「分かった。援護よろしく」
 俺は鎌に向かって突進をした。
 「サイトっ!何をして・・・」
 「今度は俺が遮る番だ。遠距離系の姫は俺の援護をしていればいいだけだ。こいつの相手は俺だ!」
 そう言うと俺の目の色と剣の色を橙に変え、そしてLevel0の魔法を唱えた。
 「雷流斬(サンデクター)!!」
 俺は一つの鎌に向かって切りかかる。そして他の鎌が俺に降りかかろうと行動し始めていた。
 「横一線斬(パドラデラク)」
 縦に振ると見せかけて横に振った。運良く全部の鎌に当たって弾き飛ばした。
 すると、阿島は八つの鎌を一つの鎌に直した。
 「へぇ。この俺と対戦とはいい度胸じゃねぇか。いい勝負になることを願うぜ」
 「俺もだな。今、非常にお前のことをムカついているからこの怒りごとお前にぶつけるぜ」
 そして二人とも突進して鎌と七彩剣がぶつかり合う。
 「てめぇ、俺の本気を舐めるんじゃねぇぞ!!」
 阿島はさらに力攻めで来る。そして俺は押される。
 「うぐっ・・・。ま、負けたまるかっ!!」
 俺は押された分だけ取り戻そうとして、力を加える。
 すると、両者のどちらかの剣か鎌かがミシっと言った。
 「!?」
 「!?」
 両者は確認するべく、一旦離れる。そして、亀裂が入ったのは・・・・・・。
 「お、俺の大事な鎌がっっっ!!!」
 「ふん、勝利あったな、阿島よ。俺は殺したくないんだが、どうやら諦められなくなってしまった」
 俺の背後で姫が「絶対殺せ」と脅しているような威圧感を俺に与えてくれる。
 「まだ。まだ、俺はやれるっ!!速斬無残千(スヴェルダ・バルシェーダ)!」
 目にも留まらぬ速さの鎌が幾十、いや幾千と見える。でも、所詮鎌は一つだ。俺も素早く反応しないと、一瞬にして殺される。なので、俺は避け続けている。
 でも、そんな俺に終止符を打ったのだ彼だった。さらに魔法を追加した。
 「八万鎌(エイヴォンリオ)!!」
 幾千と出ている鎌からさらに増殖する。これじゃあ、流石に避けられやしない。
 「死ぬなっ、サイト!!瞬発万打(エイヴォ・セルク)」
 どうやら姫が一発ずつ狙っているようだ。おかげで、数が減ってきている。だがしかし、彼はまた魔法を追加した。
 「反弾防壁(リターンシールド)!!」
 すると、姫の銃弾と阿島の鎌が当たるが、銃弾が姫のほうへと戻っていく。
 「くはっ。サイト・・・持ちこたえろ」
 姫は右肩をやられ、打ち続けることが出来なくなったようだ。俺はそれを見ていた。それは俺にとって不利な行為。彼は今までの魔法を解除して最強ランクの魔法を唱えた。
 「死ねぇ!!超巨大鎌天空斬(スーパーグランドヴェドロンディアルガ)!!!」
 俺の真上にこの屋上すら広大する大きな鎌が現れた。そして俺に目掛けて振った。

題が未だ無い小説(第六章)

 〜第六話〜
 俺は何があっても死にたくはない。今生きているからこそ、しなければならない事が必ずある。それを完璧に成し遂げてこそ、自分の人生は終了する。
 それに俺は「奇跡」を信じている。ピンチな時こそ起こりやすい「奇跡」が起きれば俺は行き続けることが出来るんだ。
 でも、誰かから聞いた話によると、「奇跡は起きる物じゃない。自分で起こすもの」と聞いた。
 でもだ。窮地に立たされてこそ「奇跡」が起きるなら、それは凄い確立じゃないのかって俺は思う。「奇跡」とは何億分の一という、超少ない確立でしか起きないのだ。
 そこで俺は自分自身にこう言おう。
 「そこで諦めたら何もかも終わってしまうぜ。大事なものを失いたくないのであれば、何度でも立ちあがれ。そして勝て!そうすれば、きっと清清しい気持ちになる。さぁ、立ち上がれ!」
 自分自身に勇気付けるのが一番だ。だから立ち上がり続けるんだ。
 俺はその場に立つ。上から降ってくる大きな鎌を目の前にして。
 「ふん。最後の足掻きか?端山。もうすぐにして「死」を見るお前には好機(チャンス)をやるよ。さあ、足掻けたければ足掻け!!」
 阿島は高笑いしながら俺に言う。
 そして俺は勝ち誇った口調で阿島にこう言おう。
 「最後の足掻き?馬鹿な。俺はまだ生き続けるぞ」
 「お前、とうとう馬鹿になっちまったか?これからお前は死ぬと言うのに何を言ってるんだ?」
 「俺はまだ生きてるぞ。そして、俺はまだ生き続けるぞ!!」
 俺が持っている剣が橙色に光り輝く。そして俺は無意識のうちにこう叫んでいた。
 「「死」と「生」を選ぶのは自分自身だ。勝手に決め付けるな!」
 剣が最大に光ったその時、俺は奇跡を起こしてやった。
 「爆雷竜(ヴェルジオン)!!」
 鎌の上に黒い雲が集まり、そこから一つの落雷が屋上に向かってくる。それ以前にその鎌を一瞬にして打ち破り、俺の目の前に落ちる。それは―――。
 「!?ば、馬鹿な。何故、お前が雷竜を呼べるんだよ!!!」
 全身橙色に光り輝いていて、全身には百万ボルトという高電圧を体に纏った雷竜が現れた。
 「サ・・・イト?」
 傷を癒してこちらに向かってきた姫が言った。
 「あり得ないぞ!!何で七守護竜(セブンズドラゴンズ)の七番目の竜、爆雷竜を呼べるんだよ!?」
 「さて、今度は俺がお前に伝えるか。奇跡は起きるもんじゃねぇ。起こすもんだ!!」
 「これが奇跡と言うものなのか?爆雷竜を呼んだだけでお前はちょっとだけ延命しただけだ。無敗轟天鎌(アディスヴェルト)!!!」
 阿島が空高く跳躍してこちらに向かって来る間に姫はこう呟いた。
 「七守護竜《爆雷竜》は、七番目の竜。体の周りには高電圧をシールドにしている。太古昔、落雷したときに生まれた竜と聞いている。何処に住んでいたのかなんて知らないし、どんな防御力なのか知らない。七番目の竜には秘密がありすぎるの。鎌美舞(アディタガ)は、絶対に死んだね」
 すると阿島は彼特有の追加魔法をかけた。
 「喰らえ!回転天降突(サークレッドオリヴァー)!!!」
 爆雷竜はこちらを向いてこう言った。それは俺の脳内に直接だ。
 『主人よ、彼は敵か?』
 「そうだ」
 ただそれだけなのに、竜は攻撃準備に取り掛かった。
 そして爆雷竜は口から十万ボルトという高電圧が伴った光線を出した。それはもろに彼に直撃するが、攻撃している途中なので光線と戦っていた。
 「ま、負けてたまるかーーっ!轟牙(シシルガ)!!」
 何とか対立しているものの、何故か阿島の魔法が切れていた。
 「ば、馬鹿な・・・。この俺が、負ける・・・なんて・・・」
 俺は阿島に届くようにこう叫んだ。
 「奇跡を信じない馬鹿には分からんだろうな。奇跡が起きたからこそ、俺は勝ってお前は負けたんだ!来世で会えたら、次こそは仲良くしような!!」
 「・・・・・・ふん、お前は、本当に、お人、良し、だよな・・・・・・」
 そう言って、光線と共に遥か彼方へと消え去っていった。
 『敵を抹殺した。また何かあれば呼んでくれ。それとこれを置いておく。主人に栄光あれ』
 そう言って、爆雷竜も姿を消した。
 「サイト、これってまさか・・・」
 「そうだ姫。爆雷竜の鱗だ。電圧は無いから大丈夫」
 「ま、家に帰りましょ。明後日から学校が始まるんだし」
 「そうだな」
 俺は鱗をポケットに入れて、屋上から去った。

 極寒の地、氷雪地獄(アイスヘル)にある二人の男女はいた。
 「ちょ、ちょっと!岩凰塊(ラデュリエル)待ってよ!」
 「おいおい、こんなとこで時間割いてどうするんだ?もうちょっとで三輝石(トライルア)の最後の一つ、無創魔の輝石(アムドラ・ユーリア)が手に入るというのに・・・伏せろっ!!」
 すると二人は地に伏せる。すると天から何にかが降ってきた。
 「もう何よ・・・!!これって・・・」
 「超跳弾(スーパーボール)、そうだ。鎌美舞だ」
 天から降ってきたのは丸焦げになった鎌美舞だった。
 「この焦げ後、光系統の技にやられたか。しかも相当威力が強くないとここまで飛ばせやしないぞ」
 「岩凰塊、爆雷竜ならどう?」
 「!おいおい、爆雷竜を呼ぶなんて絶対に無理だぞ。他の竜だけは呼べるんだが、実際に呼んだ人なんていないぞ・・・」
 「じゃあさ、新しく竜姫翁(メイルピア)に魔籍が入った人物ならどうよ?」
 「・・・あり得なくは無い。だがそれも可能性の一つだ。信じるも信じないも自分次第だからな。それにしても・・・・・・」
 「そうだね。既に十翁(テンベイ)から二人はいなくなったね。次は裂踊鎖(チューブリオ)だよね?」
 「・・・・・・任務変更だ、超跳弾。今すぐにでも連絡支部に戻るぞ」
 「え、任務どうするの?絶対に零様は許してくれないよ?」
 「構わん。それは後回した。戻るぞ!」
 「分かった。ちょっと待ってね」
 そう言って、超跳弾は彼から離れてこう叫んだ。
 「轟邪龍(デスドラガイア)!」
 すると、天から闇に包まれた龍が現れた。
 『主人、お呼びですか?』
 「直ぐに連絡支部に戻れる?」
 『主人の願い事なら何でも叶えますよ。無論、可能です』
 「じゃあ私達を乗せて送って」
 『了解いたしました。さあ、私の背に・・・』
 轟邪龍に促されて二人は乗った。
 『最高速度で行きます。なので私の背にがっちりと掴まってください』
 そして極寒の地、氷雪地獄から二人と一匹の龍は姿を消した。

 俺は屋上にいた。悲しい出来事があったから、ここから離れたくなかった。
 「敵は殺せ。さもなくば、こちらが命を絶つことになる」
 姫は俺の背から言う。今、俺は三角座りしていて、姫も背中と背中を合わせて三角座りをしている。夕暮れの空を眺めながら。
 「・・・・・・」
 「悲しいのは良く分かる。だが、これからも「友達」とした敵が現れるかもしれん。免疫を付けとくほうがいいだろう」
 「・・・姫はこういう事、あったのか?俺と会う前に」
 「・・・・・・幾十と出会って殺した。今のサイトみたいに落ち込んでいたな。戦後に」
 姫のその言葉には「悲しさ」という感情が篭っているのに俺は気づいた。姫は俺と似た経験を俺に言っているのだろう。だから、そう言えるのだと俺は思った。
 「・・・ありがとうな」
 俺の口は何故かそう言った。
 「ふん、日々成長し続ければ何も問題ない」
 ちょっと上擦った口調だった。
 「・・・照れてるのか?」
 姫は背中越しにこう言った。
 「私は照れると言う動作を一度もしたことが無い。だから分からん」
 「まあ、いいけど」
 一度も無い、か。別に構わないし、これ以上追求するのも良く無いだろう。
 何故か俺の心境は良くなり、立ち上がる。
 「もう、いいのか?」
 「うん。何かスッキリしたし帰ろうか」
 「そうだな」
 「俺はしたいことがあるし先に正門で待っててくれるか?」
 「分かった。早く来いよ」
 そして先に姫は屋上から去る。
 俺は最後に阿島が立っていた場所に行く。
 すると、何故か俺の脳内がこう言えと言ってくる。これは何の理由を持つのか知らなかったけど、いい事なのだろう。
 「人生尊き命終え、来世再び合い願う(ヴェロスタミフォ・フューライディシュタ)」
 俺は手を合わせて、目を瞑ってそう言った。何かの魔法がかけられたのだけど、それは何なのか分からない。
 「よし、行くか」
 俺は一歩先に進む。何が出てきても俺は俺が信じる道を歩いていくぞ!
 俺はそう決心して屋上から去った。

題が未だ無い小説(第三章)

 〜第三話「日常は超常へ」〜
 俺はシャワーの音で目を覚ます。一体、誰が入っているんだ・・・。
 などと、思って体を起こしてみたら、布団が掛けられていた。それに布団には彼女がいなくて、俺の服が和室中に散乱していた。
 「・・・・・・」
 俺は無言で通して、立ち上がる。そしてリビングへ行って牛乳でも飲もうとしたら、冷蔵庫の前は何かをこぼしたみたいに冷たくなっていた。
 「冷たっ!」
 俺の右足は餌食となってしまった。靴下を履いていたため、靴下が濡れた。
 「ったく、一体何がどうなってるんだ・・・」
 そう呟きつつも俺は雑巾で拭く。冷蔵庫を開けてみれば、空けていた牛乳がなくなっている。その牛乳パックはテーブルの上に置かれていた。
 俺は新しく牛乳を開け、一気飲みにかかった。
 一気飲みをしていると、左に何やら気配を感じ、左に向けば、俺が着れなくなったジャージを着ている彼女がいた。
 「ぶほっ」
 一気飲みしていたため、俺は口に含んでいた牛乳を噴出す。
 「あ、ちょっと!私に掛けないでよね!風呂上りなんだから」
 腰まで届いていた赤く長い髪は、後ろのほうで纏めている。風呂に入ったと言わんばかりの熱気が俺にも伝わってくる。
 「そ、それ俺の服・・・」
 「分かってるわよ。私、あの制服以外の服持ってないし、お下がりがあるんだったら頂戴」
 「頂戴って言わずに買いにいけよ!」
 俺は牛乳をテーブルの上に置いて、言った。
 「それに、し、しししし下着もないんだからねっ!」
 彼女は赤面しつつも言う。ん、今なんて?
 「同じ事を言わせないで!」
 俺に何やらタオルを投げる。それを普通にキャッチする。
 「すると、お前は、その、の、ノーブラノーパンって事か?」
 何やら嫌な汗が流れてきそうだ。
 「・・・うん」
 それを聞いた俺は、すぐさま私服に着替え、携帯、財布、鞄を持って彼女の目の前に現れる。
 「これからお前のを買いにいくから、この家の中で待ってろ!いいな?」
 俺は彼女の返答を待たずに玄関を飛び出す・・・が。
 はたまた彼女の前に現れて、俺は聞きそびれた事を聞く。
 「スリーサイズと服のサイズは!」
 「誰が言うか、この変態野郎!」
 「それじゃあ服や下着が買えないじゃないかっ!!」
 「見た目で判断してよ!」
 うむ、見た目か・・・。確か、その俺のジャージはSだし、胸の膨らみ、腰の周りなどと見る。
 「そ、そんなにジロジロ見ないで・・・」
 彼女も恥ずかしいのか、赤面していた。
 「あ、ごめん。よし、大体どんなのか分かったから待ってろよ。この家から一歩も出るなよ」
 そう忠告して、俺は外へと向かった。
 
 場所は変わって、龍神秀(デグラシア)の連絡支部。十翁(テンベイ)の十人目から六人目まで集う場所でもある。だが、そんな場所は賑やかだったのに、急に静かになってしまったのだ。亜鎧奈(アンディリア)が亡くなった今、喜ぶ人なんていない。鎌美舞(アディタガ)も、彼のことを思って仇を取ろうとしたのだが、裂踊鎖(チューブリオ)によってそれを制された。なので、部屋中を行ったり来たりしている。そんな中、裂踊鎖はある電話の前で待機していた。他、七人目や六人目の姿が見えないのだが、彼達は彼達で任務が遂行されているため、戻ってこれないのだ。
 「落ち着いたらどうだ、鎌美舞よ」
 「あん?落ち着いてられっかよ!十人揃って十翁なのに、一人でも欠けたらその分仕事が大変になるし、竜姫翁(メイルピア)にある三輝石(トライルア)の一つ、『秀神聖の輝石(レイアル・ユーリア)』の窃盗企画だって、失敗に終わるかもしれないんだぞ!?だからって、落ち着けるかっ」
 「大丈夫だって。その企画は一時中断となって、一人目から五人目までが動いてくれるそうだし、私達は何もしなくてもいいのよ。出来るとなれば、竜姫翁から三輝石の一つ、『賢龍聖の輝石(ベリアル・ユーリア)』が取られるのを阻止するだけよ」
 すると、電話が鳴り出す。その電話は勝手に喋りだす。その名は「魔伝器(マスドール)」。
 『十翁の十人目が亡くなったことは誠に残念だが、それはお前達にも訪れるはず。命だけは落とさぬように行動をしてくれよ。さておき、次の任務だが、次動くのは鎌美舞だ。だが、今回は暴れても良い。竜姫翁はドンドン強くなっているから、その分倒してくれれば私の新たな計画が出来るかもしれん』
 「よっしゃあっ!」
 鎌美舞はガッツポーズをとる。
 『ところで、超跳弾(スーパーボール)と岩凰塊(ラデュリエル)はどうした?』
 七人目と六人目のことである。
 「両者とも、現在任務遂行中と聞きます」
 そう答えたのは、裂踊鎖だ。
 『任務中か。その任務が終え次第、零様がお呼びと伝えておくれ』
 「分かりました」
 『では、健闘を祈る』
 魔伝器は黙る。
 「んじゃ、行ってくらぁ」
 「気をつけて、鎌美舞」
 「おう」
 こうして、彼の姿は消えたのである。

 俺は必死こいて服を探して買って来た。一着どころか、何着買っただろうか。これから俺の家で過ごす事になれば、それなりに準備は必要だ。なので、帰るときに纏め買いしておこう・・・。と思って買ったら、総合計五万近くしたのだ。俺にとって五万は一ヶ月ちょっとの生活資金だ。
 家に帰ると、俺の部屋かつ和室は家を出る前よりも荒らされており、目を凝らして廊下を見れば何やら白色らしき水滴が二階へと繋がっている。
 俺は服の入った袋を玄関に置き、和室をちょっと散策した。・・・よし、あれは取られてはいないようだ。だがしかし、二階にもあれが少しあったはず。それが見つかってしまったならば、俺の命に終止符が打たれる。それだけは避けるべく、二階へと駆け上る。
 まず、あれがある部屋に俺は入る。そこには彼女がいなかった。そこは元俺の部屋である。勉強机が置いてあるから、ここにも何かが入っている。それは簡単には隠せないため、ちょっと荒っぽい行動をとらなきゃなんねぇな。俺はがっさり袋に詰め込み、蝶々結びにしてそれを持って降りる。途中、彼女とは会わなかった。それを和室の秘密の隠し場所に置いて、和室をちょっと片付ける。すると、彼女はアイスを食べながら降りてきた。
 「何してるのよ、騒々しい」
 「いや、何でもないけど二階で何してたの?」
 「んっとね、私の部屋をどこか作れないかなって思って散策してたの」
 「で、見つかったか?」
 「うん。勉強机が置いてある部屋の反対側」
 「別にいいよ。それよりもまず、整理整頓ぐらいはしろ。それとアイス食べながら歩くとポタポタ落ちるから、それは止めてくれ。ってか俺の服に染みが」
 「別にいいじゃない。洗濯機で洗えば」
 「落ちないから言ってるんだよ!」
 「魔法を使えばちょちょいのちょいじゃない」
 ・・・・・・。現時点においてその事をすっかり忘れていた。彼女がいることすら、俺に日常に取り入れようとしていた。もはや、日常じゃなくて超常じゃん。
 「・・・それよりもまず、俺は魔法を使えるのか知りたいんだが」
 「戦っているんだから分かるでしょ、そんぐらい。分からないと言うなら、一掃整理(オートクリーン)と唱えれば?」
 俺は不思議に思い、手を動かすのをやめてそれを唱えた。
 「一掃整理!」
 ・・・・・・・・・・・・。
 場は静まり返った。
 「はぁ!?何で使えないのよ!」
 静寂を殺し、俺を罵倒してきた。いっその事、静寂しきった空間で俺を殺して欲しかった。
 「お、一掃整理!」
 しかし、何度唱えても同じ事を繰り返すだけであった。どうやら、本当に彼女は堪忍袋の尾が切れるそうだ。
 「おい待て。二度あることは三度あるってことじゃなくて、三度目の正直って事を信じろ!」
 「・・・分かったわ。次、失敗したら本当に一発殴るからね」
 右の拳を俺に見せたが、その拳はとてつもなく強烈な威圧感を感じた。
 お、殴打されないように今度こそは!
 俺は精神統一をする。何も考えないように、何も考えないように・・・・・・。すると、何やらある力が疼いて、そちらから出ようとしている。だが、これを全部出したらこの場はとてつもなく嫌な感じになりそうので、全体の1%だけを出して、呪文を唱えた。
 「一掃整理!!」
 目の前にあった服が自ら押入れにある引き出しに収納されていく。
 そして、俺は安堵したのだがそれも束の間。
 「集中しろ!制御が効かなくなるぞ」
 彼女はそう叫んだので、今はこの部屋を綺麗にすることを集中した。すると、一分と経たないうちに綺麗になっていく。
 「ふう・・・」
 これだけでも俺はドッと疲れた。まるでフルマラソンをしたかのように。
 そしたら、彼女は何かを思い出したのかこう俺に言ってきた。
 「お前、名はなんと言う?」
 今の今まで俺の名前が出ていないことに気づいていただろうか。俺もいつ言えばいいか迷っていた挙句に、今に達してしまっている。そして、彼女が聞いてきたのである。今後、同棲生活するには欠かせないのかと思うと・・・ん?
 「その前にちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」
 「何だ?」
 「お前、自分の家は何処か分かるか?」
 「それは当然、ここに決まっておる」
 これはこれは。ハチャメチャな同棲生活になりそうだ。ひー、誰か助けてくれないのかね。
 「俺の名は端山 彩人(はやま さいと)だ」
 俺はそう言って右手を出す。彼女は俺がこれから何をするのか悟ったようだ。
 「私の名は竜崎 姫(りゅうざき ひめ)。よろしくね」
 こうして、一つ屋根の下で俺と姫(今後、そのように呼ぶし使う)は堅い握手を交わした。

題が未だ無い小説(第四章)

 〜第四話〜
 平日はほぼ普段と変わらぬ生活を送っていた。休日はだらだらと二日中家に篭りきってパソコン、ゲームなどをしていて、完全クリアを目指して只管やっている。俺はゲームオタクと自分から言うのは過言に過ぎない。平日だって毎日俺が通う、二つ存在してその一つ、箱庭龍聖(はこにわりゅうせい)学園でもそんな不思議と思しき事件なんて起きないし、まず起きることが可笑しいと自分では思っている。だが、いつか友達からこんな事を聞いていた。もう一つ同じのが存在する箱庭竜聖(りゅうせい)学園には、ありとあらゆる不可思議現象が日常茶飯事のように起きていると。
 俺は、夢の見すぎなんじゃないのかって突っ込んでそれ以来、その話を耳にすることは無い。そもそも、それが起きたって事を証明できれば俺は信じざるを得ない。
 ・・・とか、思っていたりする。それを目の当たりに俺はしたのだ。そう、自らの手によって。
 「なーに、自分の世界に入っているのよ」
 俺は我に戻る。今日は平日で普段なら箱庭龍聖学園で授業を受けているのだが、現在は夏休み真っ只中である。だから、こうして家にいるのだ。わーい、ゲーム祭りだww
 「早く我に戻りなさいよ!」
 俺は姫のチョップで我に帰った。
 「!?突然何しやがる」
 「それはこっちの台詞よ!私の大事な時間を割いてまでも、サイトの魔法学習の担当になってるんだから、ちょっとは真面目にやりなさいよ」
 そう、今日は姫と会って早くも一週間が経つ。何?その間は何をしてたかって?そりゃあ、姫は独自で龍神秀(デグラシア)の情報を集めたり、ちょこまかと鬱陶しいザコ兵達を狩ったり等としているのだ。そして俺は・・・。言うまでも無い。俺がするような事なんて分かりきっているだろう。で、今朝の出来事をちょっと教える。相変わらず、俺と姫が会話するときは姫から何故か始まってしまうんだよ。それに開口一番、「あんたの魔法を強化するわよ」とか言い出して一時間、いや二時間経っているだろう。先日の一掃整理(オートクリーン)みたいに、そうそう何度も唱えて成功しても戦争時には役に立たないって言われた。俺って戦力外?などと、内心突っ込んでみたりする。
 とてつもなく綺麗な俺の部屋こと和室にて、俺は姫がある魔法を施して綺麗にしたどこにでもある石を、使って浮遊術を使えといきなり言い出したのだ。
 「さあ、もう一度よ!浮物(リヴァロ)と唱えなさい!」
 何度もやって俺は既に体力がほぼ無いのだ。魔法強化する前に、ある程度の魔法の知識を覚えたのだ。魔法発動時は魔力と体力を比較的に使う。魔力が壮大あっても体力が狭小ならば全然ダメ。なら、まずは体力を鍛えるのが一番なんじゃないのかと問うたけど、体力魔力もろとも消費数が非常にも低い浮遊術を先に学ばせるのがこいつのモットーだとか言ってきたのだ。
 「はぁ・・・」
 俺の日常に溜息が数多くなってきてるかもな。
 俺は精神統一をして、とにかく俺の魔力の源を探って手を伸ばす。
 これは俺の豆知識なんだが、俺の魔力は壮大なのは調査済みなのだ。姫がいない間に、ある一つの魔法だけ習得したのだ。「物を投げる」が人間語で言う言葉で、「アータラナイター」が魔法名。それを試しにどこまで行くのか外に出て、そこらへんにある石を天に向かって思いっきり投げたのだ。すると、その石は天まで果てしなく高く飛んで行き、マッハ5を越すような速度だった。それを見た俺は呆然としざるを得なかった。んで、その石は現在不明。多分だが宇宙まで飛んでいるだろう。それよりも、大気圏の時点で消えているかもしれないが。
 なので、魔力の源に手を伸ばす時にはとても慎重にしなければならないと言う重大な危険を冒してまでも、俺は伸ばしてその極一部分を掴み取った。
 そして、俺はその石に魔法をかける。
 「浮物!」
 そしてそれは俺の目線まで上がる。ちなみに、俺は立っているぞ。さあ、ここからが俺の難題なのである。それを維持することと動かすことを同時にまたもや指導を受けたのだ。
 「操作(レピレル)!」
 まず、浮遊物を自分で動かすことは既に習得している。だが、それも束の間。体力が無いため、一分と経たずに俺の足元に落ちる。
 「はあっ・・・はあっ・・・」
 俺は息切れになっている。そう、俺には維持することが俺の難敵なのだ。
 「む〜〜〜。維持しようと思わないの?」
 「しようと思っているけど、体力が無い時点で三分と続くわけがなかろう」
 「ある人物は言いました。三分あれば敵は倒せると。そして三分あれば色々と出来ると。なのでサイトの最初の目標は三分維持することかな?」
 ウルト●マンやインスタントラーメンを例に挙げて言っている様に俺は聞こえるな。いや、違うならそれでいいのだが。
 「そうだな。最初の一発目は大丈夫だが、二発目以降からダメになってるのは自分でも分かっているんだ」
 すると姫は何かを考えている。やはり、彼女を見るとき腰まで届きそうな赤髪が一番目に入る。やはり、一番に視線が行く。
 「目標が三分だと分かったし、次行こうか。次は剣を稽古。さ、行くよ」
 「ちょっと待てよ。俺は疲れているし、ちょっと休憩時間をくれ」
 「私は早くサイトが戦力になって欲しいから休憩なんていらない。私だって過酷な魔法指導を受けているんだよ?」
 「・・・分かった。五分あればそこへ向かう。どこだ?」
 「庭」
 その一語だけを述べて姫は去った。
 俺の家は周りからは大きいと言われており、庭も剣の稽古が出来るぐらいの大きさなのだ。そんな家に何で俺は住んでいるのかって聞かれるけど、これは誰にも言ってない最大の秘密。トップシークレットだ。
 俺はその間牛乳一本丸々飲んで、体力を回復させる。そして庭へと向かう。
 「遅い」
 姫は仁王立ちして待っていた。
 「五分ぐらいで遅いって言うな」
 「私の大事な時間を割いているんだから考えてよね」
 「はいはい、分かったよ」
 さてさて、ここでも俺の豆知識でも聞いてもらおうか。俺の無駄な一週間の最初に俺はとある実験を施した。その実験とは俺の意識で七彩剣(ななさいけん)虹蒼剣(レイン・ブローウ)が出せるのかどうかである。ま、それは実験成功と言えたのだ。そして一人で剣の振りぐらいは覚えたのである。んで、いつの間にか新たな技が幾つか出来たのであるが、今が秘密だ。
 俺は慣れた手つきで虹蒼剣を出す。
 「で、どんな特訓?」
 「まずは手始めに手合わせ。良いよね?」
 「えっ、ちょっ・・・」
 と、とか言わせてくれよ。言う前に銃弾を飛ばしてくるなんて卑怯な手じゃないか。ま、それをたやすく剣で真っ二つに斬ったんだけどな。俺って凄くね?
 「・・・ちょっと一人で特訓した?」
 「さあ、な。自分の目で確認しろ」
 「ふむ。こっちだけが遠距離用の武器を使うなんて馬鹿げている。私も魔銃剣(アクリメイル)に変えておこう」
 すると、彼女が愛用している灰色の銃は瞬時にして剣に変わった。その剣は赤みを帯びていて、切っ先が何故か銃口になっている。
 「安心しろ。銃弾は打たん。打ったならば避けろ」
 俺と姫は対立するように間をあけ、両者剣を持って構えている。最初に動き出したのは彼女だ。特訓と言わん程の威圧さを俺は感じるのだが、戦争時も容赦なく殺り合うからそれに慣れるのも含まれていると俺は推測する・・・。
 「うおっ!?」
 彼女特有の赤みの帯びた長髪が動きと共に揺れ動く。
 「油断したわね」
 彼女の持つ魔銃剣と俺の虹蒼剣がぶつかり合う。何度か打ち合って彼女は飛び去る。
 「一つ忠告しておくわ。亜鎧奈(アンディリア)戦の時、止めをしようか迷ったでしょ?迷ったら逆に殺されると思っておきなさい。あの時は最後の力を使ってやっつけたけど、今後は気をつけなさい、よ!」
 語尾を強くして振りかぶってくる。しかも横に。それを俺は難なくジャンプして交わす。最近、俺の個人能力も上がってるんじゃないのかって疑ってきているのだ。
 「!?」
 「おらよっ!」
 俺は剣を縦に振る。そして新たな技一つ目、発動。
 「微風波(コルミフィ)」
 これは風系統の魔法なんだが、無色のうちに入っているそうだ。それは本当に微弱で、実在している地を斬ろうとしたが、せいぜい人差し指一本ぐらいの深さなのだ。届く範囲は。だから、彼女に当たることなんてないし、ハッタリだと思えばいい。効果は・・・ハッタリしか考えられない。
 彼女は攻撃が来ると思い、後ろに退く。
 「・・・本当に手加減なしでもオッケー?」
 「うん?」
 俺は地雷を踏んでしまったのだろうか。彼女の威圧さが先ほどよりも濃くなっていた。
 ・・・!この感覚は、亜鎧奈戦の時の・・・っ!
 俺は逃げ腰になりかける。そうだと、剣を一回振るのに失敗が生じる可能性が高くなる。
 俺が構える時間をくれる訳もなく、勢いをつけて俺に突っ込んできた。それを俺は止める。
 剣と剣がぶつかり合う音が果てしなく続く。彼女は防御出来なさそうな所を一箇所ずつ狙ってくる。対処できないと思っていたら、剣が勝手に動き防御しているのだ。
 これが新たな技二つ目である。技と言うべきなのかはさておき。俺は地に剣を置き、石ころを投げてみた。そしたら、勝手に剣は動き、石を木っ端微塵にする。これは俺の意識があるのならばならない状態なのだが、意識が無いときに反射で動いてくれるのだ。
 そして彼女と特訓する中、俺は微妙な自信が湧いて来た。これなら、特訓でも姫を倒せるんじゃないのかって。姫も手加減無しで来ているならこちらも本気で行かせて貰おう。
 俺は防御と共に剣に力を込めてガードをする。それを続けていると、姫が剣を振る回数がテンポ良く減って行ってるのだ。
 「き、貴様何をしたっ・・・」
 初心者如きにやられたくないのか、少しだけ動揺をしている。
 「俺も本気で行かせて貰うぜ!」
 彼女が剣を振った時、俺はスキを見て彼女の右側に移動する。そして剣を振ろうとしたが、流石熟練者。俺が剣を振る前に移動しているではないか。
 「なかなかやるではないか、サイト。これがお前の一人で特訓した成果か?」
 「いや、違うね。まだ、技をもう一つ見せてない。これは俺に反動が来る技なんで使いたくないんだが」
 彼女は剣から銃へと変える。
 「じゃあ見せて頂戴。特訓はもう終了するから。どんな条件が必要なのか教えてくれる?」
 「前方から最強魔法が飛んで来る、逃げる場所が無い時に最後の技が発動する」
 「了解。大轟一打(グランド・ワンガット)!!」
 彼女が持つ銃からは銃口の大きさよりも大きい銃弾が俺に向かって飛んでくる。大きさと速さの比較で、スピードがゆるまっているのだが、それでも逃げれない速さである。
 そしてその大きい銃弾とぶつかった。堅さは剣のほうなのだが、今回は同じようだ。俺はその銃弾を止めているが、俺が押されているのは分かる。こういう時に技は発動するのだ。
 銃弾は徐々に小さくなっているのが分かるだろうか。魔法を吸収しているのだ。だが、反動というのは腕への負担と、多少の傷が体中に生じるだけ。ただな。これを実験するのにどんだけ苦労したことか。姫が帰ってくる前に早く風呂に入って体中を癒したもんだ。
 銃弾は普段どおりの大きさに戻ったが、俺の腕はとても痛かった。
 「くっ・・・」
 俺は地に膝をつき、手をどうにかしようと抑えている。
 「・・・ふぅ。治癒回復(リリクエイル)」
 彼女は目を開いていた。
 「・・・独学で学ぶのもいいけど、魔法とは危険を冒すのを前提にして行動してよね。それとサイトが使った治癒呪文、どうやって学んだ?」
 「それがな。とても痛くて苦しんだ時に脳内が教えてくれたんだよ」
 「ふぅん。ま、今日はこれぐらいでいいよね?私は情報を得るために動かないといけないから」
 「分かった。折り入って言うけど、ありがとうな」
 「謝礼の言葉は特訓の最後に取っておくのよ。今日は暗くなる前には帰ってくるから」
 姫は俺に笑顔を見せて、姿を消した。
 俺は姫の笑顔を見れるのが一番、心が落ち着くのだ。帰れる場所があるからこそ姫は帰ってくる。だから俺は姫と会話が出来るし魔法を教えてくれる。もし―――。
 ・・・止めておこう。そんな事を考えても過去には戻らないし、まず過去には戻れない。俺は後片付けをして、姫の帰りを待っていた。