■ 1967年の国境によるパレスチナ国家の樹立

臼杵陽『世界史の中のパレスチナ問題』講談社現代新書

臼杵陽様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 合計で15章から成り立っています。大学での講義に適した構成になっていますね。
 アメリカのオバマ大統領は、2011年5月に、中東情勢・中東政策に関する演説を行い、重要な提案をしました。イスラエルパレスチナの国境線を、1967年時点を基本として、その線まで戻す方向で考えるべきだ、というのです。
 この主張は、パレスチナ側に評価される一方、イスラエル側は反発しています。
 ところがパレスチナでは、ファタハとハマース(テロリスト)のあいだの調整が難航します。ファタハをひきいるパレスチナ自治政府のアッバーズ議長と、ハマースの最高幹部ハーリド・ミシュアル政治局長は、カイロでトップ会談を開くはずでしたが、延期されます。ファタハは、米欧の信任が厚いファイヤー度首相の続投を支持しますが、これに対してハマースが難色を示したのです。
 いずれにせよ現在、世界の132か国が、1967年の国境によるパレスチナ国家の樹立を支持しているそうです。2012年11月の国連総会では、パレスチナ自治政府は、バチカン市国と同様の「オブザーバー国家」として承認されました。これによってパレスチナ国家は、イスラエルを「国際刑事裁判所ICC」に訴えることが可能になりました。