ニキのナナ

国立新美術館で開催中の「ニキ・ド・サンファル展」を見に行く。
この作家の代表作にして白眉なのは、なんといっても「ナナ」シリーズだなあ。
ヤセ? くびれ? 美脚? 小尻? 先進国の女たちが追っかけ(させられ)ていた美の基準を、すべて、あっけらか〜ん、どっか〜ん、と蹴っ飛ばしたような、ナナ像の太陽のような明るさとキュートさと生命感は、渡辺直美的な魅力にあふれているのである。
「ナナ」に加え、この展覧会で感慨深かったのは。
ニキのコレクターであり、日本にニキの個人美術館まで作った、増田静江氏という存在。
増田静江氏のニキへの献身は、(男女間に限らず)恋をするって、こういうことかあ、と伺わせるもので。
氏のプロフィールによると、夫はパルコの創始者、増田通二氏、とのこと。
この増田通二氏の中学の同級生に、後にセゾングループの会長となる、堤清二がいて、そのつながりで、パルコが生まれて育っていく・・・・。
ニキ←増田静江、パルコ←増田通二。
どちらも、恋する対象を持っていて、たったひとりの人間の思いを、恋する対象に限りなく大きく作用させた夫婦のように思う。
静江氏の死後、ニキ美術館が閉館し、通二氏がパルコ会長を退任後、現在のパルコの衰退ぶりを見ると。
たったひとりの人間の力が、巨大なものの芯棒のごとき力を持っていたのだ、と思う。
縁も大切。人間の力、人間の「やる気」をどう起こすか、キープしつづけるかも、大切。(「恋」すれば解決か?)