東電社員のみなさんへ

(この手紙をプリントアウトして東電社員に渡して下さい。ご自分でアレンジされてもかまいません。このワード文書をどうぞ。20130215toden_tegami.doc 直

 東京電力で働くみなさん。業務委託や派遣で働くみなさん。

 私たちは電気代一時不払いプロジェクトです。電気代の支払いを一時留保したり、逆に、過払いによってデモンストレーションをし、原発の再稼働に反対している個人の集まりです。

 みなさんは、どこにお住まいですか。ほとんどの方は、ご家族と一緒に、東日本に住んでいると思います。

 福島第一原子力発電所の大規模な事故以来、この東日本の広い地域が、放射能に汚染されてしまいました。私たちは毎日のように、何を食べれば安全なのか、どうすれば放射能を避けることができるのか、とても心配な気持ちでいます。

 事故現場からは今日も、空へ、海へと放射性物質が放出されています。それは目で見ることも、匂いをかいで気づくこともできません。事故が収束したとしても、数十万年先の未来まで、原発の使用済核燃料の処理と保管は続きます。これが、この手紙を書き、読んでいる私たち全員をとりまく状況です。

 ところで、東京電力は、「総合特別事業計画」の中で、柏崎刈羽原発の再稼働の方針を明記しています。

 この2年間、日本の多くの人たちが「脱原発」を選び、デモや集会に参加し、署名をし、「原発の再稼働をしないでください」と、抗議を続けて来ました。それでも、再稼働をめぐる東京電力の方針は変わらないようでした。ですから私たちは、東京電力の「顧客」の立場から、電気代の支払いをかけて、抗議をしてきたというわけです。

 抗議の矢面に立ち、悲しい思いをされた人もいるかもしれません。そのことに、この手紙でお詫びをしたいと思います。

 私たちと、あなたがたを隔てているのは、東京電力の関係者であるか、ないかだけです。東日本の住民であり、日々、放射能に被曝しているという点では、変わりはありません。

 あなた方のすぐ隣りに、私たちは暮らしています。あなた方と、私たちの子どもは、同じように保育園や学校に通い、隔たりなく学び、遊んでいてほしい。そんな隣人の一人として、この手紙をしたためます。

 私たちは、対等の、一人一人の人間として、誠実に対話することで、この息苦しい日々を変えていけるのではないでしょうか。

 あなたが東京電力や、その関連会社に勤めているからといって、心から原発に賛成しているわけではないでしょう。仕事上、自分の思いとは正反対のことを言わなければならない場面も、あることでしょう。

 この手紙を読んで、思いの重なるところがあったなら、お願いがあります。

●社内に「脱原発」の声を広める
 まず、私たちからの意見や抗議が、東京電力の社内で、できるだけ広く、効果的に伝わるように努力をしてください。世論調査でも、脱原発を求めている人は7割を越えます。もはや「一部の人の意見」ではありません。

●あなたの意見を表明する
 そして、あなたの意見を、匿名でも構いません。私たちにメールしてください( toudenfubarai@gmail.com )。東京電力の内部にも多様な意見があることを、私たちに教えてください。

労働組合に働きかける
 労働組合に加入している人は、ぜひ、組合が脱原発に向けて動き出すよう、働きかけてください。そもそも労働組合は、社会の多くの人々と連帯しつつ幸福を追求する機関であり、ただ自分たちの利益を守るだけのものではないはずです。(参考までに:東電労組綱領

原発の危険性についての情報を社会に広める
 原子力発電に関する情報──とりわけ、その危険性について、確かな情報に接している方は、それを新聞や雑誌に知らせてください。プロの記者や編集者は、あなたの個人情報を決して第三者に漏らしません。原発に対して、批判的な報道をしているメディアをおすすめします。

 この他にも、あなたの立場でできる、原発再稼働をやめさせるための活動を考え、取り組んでみてください。

 これらは、これからの社会や、子どもたちの未来を守るための行動です。また、個人としては憂慮しつつも、会社の方針との苦しい板ばさみにある、あなたの人格や尊厳を守ることでもあるでしょう。

 こうしたことは、一見、会社に不利益を与えるように見えます。しかし、そうではないと思います。より広い視野に立つなら、働く人一人ひとりが勇気を持って今の状態を正すために動くことが、失墜した東京電力の信頼回復につながると考えるからです。

 無謀な原発再稼働をやめ、原発事故の被災者に誠実に向き合い、被曝しながら事故現場で働く多くの労働者の待遇を改善することが、これからの社会を、子どもたちを救う道です。

 その道の中にしか、東京電力の未来はありません。企業は、人々を幸せにすることで利潤を確保できるのであって、その逆ではありません。働く人々が自分を偽り、人々の幸福に背を向けてしまったなら、そんな企業に未来はないはずです。

 私たちは対等の人間として、あなた方を信じています。最後まで読んでくれて、ありがとう。

2013年2月15日 電気代一時不払いプロジェクト