アンケートとは案計図のことと見つけたり

「案計図」で検索すると、同じことを先に考えた人がいてちょっとがっかり。
それはさておき、いま仕事でインターネットを使ったアンケート調査の準備を進めている。インターネットを使ったアンケートは回答者に偏りが生じることが多く、その結果、ゴミしか出てこないことが多い。だからあまりこのような調査方法は好きではないのだが、今回企画している調査はやたらと調査項目が多くて紙ベースでの調査では回答結果の取りまとめが大変なので、電子調査票*1を用いることにした。それを配布・回収するのにインターネットを用いるわけだ。予め選定した調査客体に紙ベースで依頼文を送り、調査票本体はウェブサイトからダウンロードして貰う。回答は電子メールで、という次第。どうせインターネットを使うなら最初から電子メールで依頼すればいいのだが、残念ながら調査客体すべての電子メールの一覧表を持っていない*2ので、こういうやり方になった。理想的な方法ではないが、手持ち資源と諸条件を考えるとこれが最善の手段だと信じる。そう信じなければ、こんな仕事やってられない。
で、ここ半月ほど、アンケート調査項目や選択肢、回答の記入方法、回答の手引きなどについて、ああでもないこうでもないと頭を捻って考えているのだが、これまで自分で調査票を作ってアンケート調査を行った経験がない*3ので、プロにとってはきっと当たり前のことでも全然気がつかず、初歩的なミスを他人から指摘されて慌てて直すということを繰り返している。今日*4でだいたいバグ潰しは終わったはずだが、油断はできない。えてして致命的なエラーというものは手遅れになってから見つかるものだから。本当は、いったん小規模な試行調査をやって問題点を洗い出してから、再度調査設計を見直し本調査に取りかかるのがいいのだが、時間に余裕がない。今年中に調査依頼文書を発送して、来月中旬には調査票を回収し荒集計し、誤回答や回答漏れなどについて疑義照会を行い、2月中に集計結果の分析をして、3月上旬には調査結果報告書の原稿を作成して印刷を発注し、3月末までにクライアントに報告書を納品しなければならないのだ。で、できるかな……。
そんなある日、というかついさっき、インターネットを利用したアンケート調査に関する話題を見かけた。なんと、ここまでが前置きで、ここからようやく本題だ。いやー、疲れがたまると文章が冗長になる*5なぁ。

例の講談社の騙り調査の話題*6に比べるとスキャンダラスな要素がない分、興味をもつ人は少ないだろうと思うが、アンケート調査に関する仕事を現にやっている人間にとっては、こっちのほうがずっと興味深い。
早速、調査票*7を見てみよう。

私は、九州大学文学部社会学研究室の者です。今回、卒業論文を執筆するにあたり、皆様のインターネット利用と満足度に関してアンケート調査を行っております。ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

この調査の結果は、すべてコンピューターで統計的に処理をいたします。また、どなたがお答えになったかはわからないようになっていますので、皆様方のことが外部に漏れることは決してありません。趣旨をご理解いただき、できるだけもれなく最後まで回答をお願いします。

んー、「皆様」というのがどのような人々を指しているのかがよくわからない。たまたまそのページにアクセスした人を指すのだとすれば、ある期間にあるページにアクセスした人々のインターネット利用と満足度に関する論文は書けるだろうが、いくら学部レベルとはいえ、そんな論文が通用するのだろうか? 上の2つのリンク先では、アンケートの依頼をメールで貰ったと書かれているが、もし「皆様」がアンケート実施者が依頼した人々を指すのだとすれば、調査票にもその旨を書いておくべきではないか。「なお、このアンケートは、私がメールで依頼した方々のみを対象にしていますので、それ以外の方がたまたまこのページにアクセスした場合には、回答をお控えいただくようにお願いします」*8とかなんとか。で、少し気になって、アンケート実施者の日記卒論日記を見に行ってみたが、ここにも「皆様」という呼びかけの言葉が具体的な限定なしに書かれている。どうやらこの人は、メールでの依頼先以外に不特定多数の人々の回答を期待しているようだ。
ああ、それはいけません!
このままアンケートを続けて結果を集計しても、この世にまた一つゴミ知識が増えるだけで、手間に見合った成果は決して得られない。「多ければ多いほどいいですね」などと楽天的なことも言っているが、もちろん回答者が多ければ多いほどいいわけではない。むしろ、何らかの基準により回答者を絞り込むほうがより正確な結果が期待できる*9。今からでも遅くはないから、再度アンケートの方法を見直して仕切直ししてみてはどうか……と思ったが、現在大学4年生だそうなのでそろそろタイムリミットか。じゃあ仕方がない。えてして致命的なエラーというものは手遅れになってから見つかるものだが、世の中うまくできていて、致命的なエラーが手遅れになってから見つかっても、たいていどうにかなるものだから。
最期に最後に以前書いたアンケート調査関係の文章にリンクしておく。

*1:と書くとなんだか凄そうだが、ただのエクセルファイルだ。

*2:が、郵便番号と所在地と名称の一覧表は持っている。

*3:出来合いの調査票を使ってアンケートを行ったことは何度もある。それはそれで結構しんどい作業だった。

*4:この文章を書いている間に日付が変わってしまったので、ここでいう「今日」は昨日のことだ。

*5:疲れがたまっていなくてももともと冗長だが。

*6:と簡単に書いてしまったが、後になるとわけがわからなくなってしまうかもしれない。でも説明するのは面倒だし、わけがわからなくてもこの文章じたいには何の関係もないので、特に説明しない。

*7:入力フォームを備えたウェブページのことを「調査票」という言葉のイメージにはそぐわないかもしれないが、要は慣れの問題だと思う。「掲示板」だって最初はそうだったのだから。

*8:もちろん、このような断り書きだけで回答者の制限ができるわけではないので、パスワード制を導入するとか、回答結果から意図せざる回答者のデータを排除するとか、何らかの手だてが必要になるのは言うまでもない。

*9:もちろん、まずい基準を設定すると、全く使い物にならない結果しか得られない。でも、どうせゴミしか手に入らないのなら、ゴミの量が少ないに越したことはない。