驚くくらい、どの作品も傑作。
これだけ粒ぞろいのアンソロジーも珍しい。
既読作は「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」ににも選ばれてた「旅人の憩い」だけなので、
既存のアンソロジー等とはそう重複しないようなセレクトだと思うんだけどね。
それでこれだけの質ということは、元々の伊藤典夫の眼力を証明してることになるんだろうな。
時間・次元テーマってのも、自分に合ってたのかもしれないけど。
でも、続巻は出るみたいだし、テーマにかかわらず是非読んでみたい。
(図書館で、というのが申し訳ないけど)
ベストはほぼほぼ同率で、
「子どもの部屋」レイモンド・F・ジョーンズ
「虚影の街」フレデリック・ポール
の二作品。
親の立場としてはなんとも複雑な感情を覚えてしまう前者。
特にこの結末の何とも言えない奇妙な味わい。
何も知らなかった方が、幸せでいられるのに。
古典の時代から繰り返されている、既視感の強い後者。
でも、やはり読書って、その作品の中に没入したり、
登場人物に感情移入してしまうものだから、ショッキングさが共有できる。
イメージが固定化されて提供される映像作品よりも、
自分の頭の中に自身で構築する読書の方が、はるかにその効果が大きい。
外ではなく自分の中だから、自分自身を反映させてしまうからってこともあるんだろうな。
第3位はシニカルさが光る「旅人の憩い」デイヴィッド・I・マッスンで。
採点は7点。いや、8点でもいいかな。満足できるアンソロジーだと思う。