■album 『because your money is limited 』 by ulldull liner notes
■album 『because your money is limited』 DL page (bandcamp)
■ulldull link
普段VOCALOID, UTAU関連ではエレクトロニカ系のものに極めて偏重して聴いている私にとって、ulldullさんを知ることができたのはまさに偶然であり、強運でした。
Twitterでたまたまリツイートされてきた「* ゜ +。・゜・。・⊂ニ3」というつぶやき(意味は強く想像にお任せします)からユーザーのマイリストを開いたのは率直に言って気まぐれであり、そこで初めて聴いた合法ハーブという曲に私は完全にノックアウトされてしまったのでした。
私はジャンルでいうと便宜上エレクトロニカを好んで聴きますが、本当は、「とてもエレクトロニカとはいえないが、しいて決めるのであればエレクトロニカとしかカテゴライズできないもの」が好きなのです。ブルースでもポストロックでもシューゲイザーでもそれは同じで、そのミュージシャンからしかにじみ得ないものを感じたいという気持ちが強いです。なぜなら、それはこれまでの生涯で一度も感じたことのないものだから。
今回のulldullさんのウェブアルバム「because your money is limited」からも、タレントとポテンシャルが洪水のようにあふれ出ているのをビリビリと肌で感じることができました。
ディレイの効いたクリーンギター、バンドサウンドを思わせるラフなドラムとベース、深くリバーブをかけ甘く溶けこむシンセのロングトーンと合成音声。音の構成要素は分析できても、いい音楽はそのひとに染まってしまうためなかなか既存のジャンルで語れないものです。そのためにエレクトロニカやポストロックという言葉が広義で使われ、新しい音楽に合わせてまた新しいジャンルが新設され続けるのでしょう。
明日のことは明日にまかせて、今日はこのulldullさんのアルバムを聴きましょう。
そうそう、ulldullさんはじめまして。
liner notes by doll/heineken
トラックメーカー。自分の夢の中で流れる音のような親和性と、それでいて自分では掴めなかったメロディと、突き放す感じすらする静謐と。包み込んで、すぐにすり抜ける、匂い立つ一陣の風。
■doll link
■album 『solitude』 by ry_ha liner notes
■album 『solitude』 DL page (bandcamp)
■ry_ha link
私がRy_Haさんの曲と出会ったのは、動画投稿サイト「ニコニコ動画」のニコニコインディーズと言われるカテゴリの楽曲を聴いている時でした。
「【オリジナル曲】半透明の足跡【エレクトロニカ】」が最初だったと思います。
いや、もしかしたら、この曲以前に他の曲を聴いていたかもしれません・・しかし、Ry_Haさんを作者として意識したのは間違いなくこの曲でした。
ゆったりと落ちついたピアノと曲の中にちりばめられたノイズが心地良く何度もリピートした事を思い出します。
その後もアンビエント・エレクロトニカと言われるジャンルを中心に数多くの楽曲をニコニコ動画で公開してくれたRy_Haさんがついにアルバムをリリース。
どの様な作品になっているのか楽しみです。
今回リリースされたアルバム「solitude」を聴いてまず感じたのはノイズの多彩さでした。
私の場合、知識が無いのでノイズとひとくくりにしていますが、曲によってさまざまな音が使い分けられており聴いていて飽きません。
そして何度も聴いているうちにアルバムの構成自体にストーリーがあるのかなと思えてきました。
季節の移り変わりの様な、時の流れの様な、何かの旅の様な、人の人生の一部の様な移ろいゆく何かがテーマなのではないかと思えました(無論、私見ではありますが)。
アルバムのタイトルであり、1曲目のタイトルである「solitude」は辞書で調べると「孤独, 人里離れていること, 人気のないこと」等の意味があり、2曲目の「blue」は色や水中で呼吸しているかのようなノイズから水を表しているのだろうか・・。
3曲目「violet」・・スミレ・・春なんだろうか、何かが始まりそうで不安定な感じの曲が最後唐突に終わるのが印象的だけど・・・。
などの様にいろいろと想像しながらリピートして楽しんでみるのも楽しいものです。
今回のアルバムから1つお気に入りをピックアップするなら8曲目のICE(Re-Edit)。
収録されている曲の中でもひと際異彩を放っていると思うのですが、雪が溶けていくさまを音楽にしてしまったかのような、ノイズを中心に構成された雪国の早春を彷彿とさせる曲。
アルバムをBGMとして聴き流している時も、この曲になるとハッとさせられてしまう、そんなアルバムのアクセントになっている曲だと思います。
さて、皆さんは既に聴かれているでしょうか?まだならぜひ、ダウンロードしてみてください。
そして、できれば、静かな場所で一度アルバムを通して聴いてもらいたいと思います。
最後に、ライナーノーツを書いていて思ったのが、Ry_Haさんってどの様な方なのだろうか?って事でした。
曲は幾つも聴いていますが、どのような方は存じ上げていないのですよね。
これから発表される曲でそのあたりが垣間見えてくるのでしょうか。
liner notes by クリフ
ニコニコ動画内のコミュニティ(下記リンク参照)で生放送を行う放送主。大量の音楽がネット上に存在する今日において、視聴者もしくは視聴者になりたいと考えている人間に、作品との出会いの機会や場を作る活動を行っている稀少人種。
■関連リンク(ニコニココミュニティ)
・【オリジナル曲を盛り上げる】ニコニコインディーズコミュニティ
・VOCALOID総合
■クリフ link
■album 『cardinal』 by akamimi liner notes
■album 『cardinal』 DL page (bandcamp)
■akamimi link
akamimiさんの音楽について考えてみた。
akamimiさんの音楽には、夜のイメージがある。空が暗くなってきて、それまでの明るさとはまた別の明るさが暗闇の中に灯っていくような、静けさや寒さや暗さの中にぽつりぽつりと灯っていくような、じんわりした明るさがあるようにいつも思う。
そういう明るさは心地のよい暖かさでもあって心地のよい距離感でもある。だから少しの寂しさや冷たさといった夜というイメージをakamimiさんの音楽に感じるのだと思う。
暖かいのが先なのか冷たいのが先なのか、そういうことは自分に聞いても考えてもわからないけど、そのどちらともを、絶妙に感じれるものがakamimiさんの音楽にあるのかなと思う。
akamimiさんの書く歌詞はなんともいえないような繊細で複雑なものをわかりやすく、伝わりやすいような言葉の選び方、まとめ方をしているような気がして、でもそんな気がするのもなんか違うかな、どうかなとか思ってしまうような、やっぱりここにもどこか距離感めいたものがあって、でもそういう距離感というのはたぶん大事なものでなかなか貴重なものでもあって、なんだかんだと心地よいものだったりする。
akamimiさんがおすすめする小説はぜひ読んでみたいなという感じです。そんなakamimiさんの音楽をひっくるめて言うと私はとても好きだなと思うのでおすすめです、ぜひ聞いてみてくださいと思います。
liner notes by まちざわ
多方面で活動する絵師。毒にも薬にもなるような、切れ味のありすぎる作風が特徴。イラストだけでなく動画制作、ノイズミュージック制作も行う。
■まちざわ link
■album 『アフターダーク』 by りゅーしか liner notes
■album 『アフターダーク』 DL page (bandcamp)
■りゅーしか link
彼は鳴くように、そっと世界を見渡す。
命の灯は甘さには勝てなくて、それは残酷なまでに美しい。黒く光るものも、その笑みも、ぜんぶぜんぶ愛してしまえばいいのに。
だから、ひたすらにそれを愛し続けて、心を送った。立てる二つの指は、たった一つの願いに繋がり、まだまだ届かないまま。
目を閉じる。日差しにこぼれる優しさと青さ。もう少しだけ追いかけて、そこで明日を願う。きっとあの花も彼を見つめて、見つめて。
この狭い部屋で涙を流そうか。上から月光が落ちてくる。真ん中にはその虹色を、彼には艶やかな琥珀色を。あと少しで、気付けそうじゃないか。
でも、たまには休んだっていいだろう?
あの日射しは柔く脆くなり、彼を包んだ。制服は遥か昔に置いてきたんだっけ。それもあの淡い恋心のせいで、ひどく可憐な色を残した。つかずはなれず、の距離は彼と僕たちを表すひとつの標だろう。
終焉を迎えて、踊り子は彩を数える。宇宙なんて壮大な話じゃなく、ただ単に綺麗な夜を魅せた。八つの彩は寂しさを虜にした硝子のように。
そして最後。彼は僕たちに星を手渡した。なんて悩ませるんだろうか。その星は掴む光を鮮明に滲ませて問う。
これが彼ですか、
僕たちが回る八つの彩。暗闇の後に惑わす彩。それを聴いて僕たちは気付くだろう。
―彼が好き。
liner notes by 真屑
piaproやニコニコ動画で活動している作詞家。楽曲制作者とのコラボレーションを中心に活動していることもあり、氏の言葉はサウンドとリンクした世界観を紡ぎだす。
■真屑 link
■album 『planet's end, planet's elegy』 by lelangir liner notes
■album 『planet's end, planet's elegy』 DL page (bandcamp)
■lelangir link
VOCALOID、UTAUを使用した楽曲はそれなりの数を聴いてきましたが、そのなかでも2曲目の”sail past the stars”が印象に残っていて、寄稿のお話をいただいてからファイルをダウンロードして全曲聴き直して書いています。
作曲者のlelangir さんは海外の方だそうですが、そうとは思えないくらい日本語詞の乗り方が自然で、普段感じているUTAUの楽器寄りの特性も相まって聴き心地の良さにつながっていると思います。個人的に楽器とも声とも付かない感じがUTAUの魅力だと思っているので、この溶けこみ具合はとても好み。
アルバム(4曲なのでミニアルバムかな)通して聴くと、ポピュラーミュージック、トイトロニカ、フォークトロニカ等、いろいろなエッセンスが混在し、音作りは派手さは無いものの、一つ一つの音を大事にしている印象で、個々でも立っているけど混ざり合うことで、ユフの儚げな声と相まってなんともとらえどころのない流れになっていると思います。詞を見ると、相反するイメージがランダムに繰り返されているように感じます。
そのせいか聴くたびに(その時の状況、気分で)違った印象になりますね。これを書いている時期は夏で、日中暑いさなかにぼんやり聴くと楽曲の清涼感、夕暮れころには寂寥感、晩酌しながら聴くと憧憬を覚えたりと、印象は様々でした。感情なんて矛盾だらけ。そんな揺れ具合がしっくり来たのかな。
浮遊感なんて使い古された言葉しか思いつきませんが、何かを与えて浮かばしてくれるというより、周りにふわふわと寄ってきてくれる曲という感じがします。
冬になったらまた違った印象になると思うので、その時が楽しみでもあります。
聴く人によってはまた全く違った印象になると思います。是非、家ではのんびりじっくり、外ではポータブルプレーヤーに入れて、いろいろなシチュエーションで聴いてみてください。
liner notes by hbho
ニコニコ動画内のサービスであるニコニココミュニティで、楽曲紹介配信を行う放送主として活動。自身のコミュニティ『VOCA』の運営だけでなく、2000人を超える登録者数を有するコミュニティ『ミクノポップをきかないか?』の放送主の一人としても活動中。守備範囲が広く、独自の選曲眼を持つ音楽好き。
■hbho link
■album 『purplink』 by inktrans liner notes
■album 『purplink』 DL page (bandcamp)
■inktrans link
blog「いんとらさうんど」
最初にinktransさんの作品と出会ったのはds-10で作られた曲をニコニコ動画内で探していた時でした。
「DS-10+で実験中」(現在非公開)というタイトルで公開されていたその曲は、メロディーや展開が美しく、しかもds-10で作ったとは思えないサウンドであったため、とても衝撃を受けたことを覚えています。
まだDTM歴自体は短いとの事ですが、現時点で既に高い技術をお持ちなので今後inktransさんの音楽がどのように変化していくのか非常に楽しみです。
今回のアルバム「purplink」は、全体の特徴として儚げな旋律と強めのリズムが絡んだ曲調ものが多く、端然とした美しさを感じました。そのような雰囲気の中にもどこか懐かしいような寂しいような気持ち感じさせてくれる部分もあり、とても独特の雰囲気を体感できるかと思います。
個人的には以下の4曲が収録曲中でも特にお勧めです。
■「Cradlesong」:どことなく和の雰囲気が漂っており楽曲的には一番inktransさんらしい作品。
■「僕の唄」:デフォ子の調声が素晴らしく、聴いた人が忘れないように深く耳に残す声が印象的です。後半の開放感がとても気持ち良い。
■「いんざばすたぶなう」:inktransさんの楽曲では珍しく明るく優しげなイントロが特徴。
■「甘露色の狐」:inktransさん自身よるボーカルを聴くことができ、高い歌唱力と録音技術も感じることができます。
liner notes by tom_atom
音楽クリエーター。youtubeやニコニコ動画での楽曲公開等の活動も行っている。硬質なテクノサウンドが特徴で、合成音声を用いたボーカル楽曲制作にも精力的。
■tom_atom link