「数学」秋季号が面白い

目次.
最新刊第 62巻4号もくじ
日本数学会から送られてきた雑誌の,以下の記事がむちゃくちゃ面白いです.

村上斉,体積予想の現状,数学,Vol. 64,Num. 4, pp. 502--523, 2010
斎藤政彦,パンルヴェ型方程式と代数幾何,数学,Vol. 64,Num. 4,pp. 524--544,2010

前者は,大雑把に言って結び目なのでトポロジーの話,後者は可積分系の一部の方程式群に内在する代数的構造についてです.

体積予想は,拡張された結び目のJones多項式の形式的なパラメータ変数qに対し\exp(2\pi\sqrt{-1}/N)を代入したものは結び目のKashaev不変量に同等であり,かつNが無限大の極限で結び目の補空間の体積に等しいであろうという予想だそうです.
q=\exp(2\pi\sqrt{-1}/N)と置いただけならパラメータの表現が変わっただけで多項式が1変数多項式なことに変わりはないと思うのですが,パラメータ変数が冪になることでパラメータの大きさが変化することで多項式の大きさの変化度が変わるという着目が凄いと思いました.
後者は,きちんと古典的なパンルヴェ方程式の説明から入って分かりやすいのですが,後半が特異点に関して層や族について議論がぶっ飛んでいくので,なかなかハードかもしれません.