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この本を読んでいて思い出したのは、僕が小さいころ、いつもおばあちゃん達が近所同士何かをおすそ分けしていたことでした。畑で採れた菜っ葉やジャガイモ。秋は柿や栗。誰のものでもない、道端に咲いていた菜の花まで。
これらのものがそっと勝手口に置いてあることもよくありました。でもおばあちゃんは大体それが誰が持ってきたものかわかるから不思議でした。
僕のおばあちゃん世代(昭和元年生まれ)くらいまでは、まだ消費社会になる前の、自分が生活している場所で何かをつくってみんなで分けあう暮らしを身体化していたように思います。

「それぞれが畑を持っていると、何かしらを生み出しているあいだに余るものがあって、その余りを人にあげざるを得ないコミュニティが生まれます。」
ここでいう畑とはリアルな場所であり、そして「具体的な場でなくても「畑」的な余剰」のことです。

それは個人が持つ固有のスキル(必ずしもクリエイティブな若い人のスキルだけじゃなくて小さな子供の相手ができるお年寄りのスキルなども)、それもささやかな能力も含まれるんだろうと思います。

お金を出して完成した商品を買うのは、ものが足りない時代でした。ものが余りはじめ、個人が消費生活だけで完結せず、自ら何かを生み出しはじめたこと。そしてそれを他者と共有することで発見される新しい価値観。
この本からそんな時代の雰囲気を感じることができました。

もちろん自然発生的に起こることでは無くて、そうした時代背景を読み解きながらどうやってハード、ソフトのしくみをつくっていくか(デザインするか)具体的な実践者の話が興味深かったです。

(「」内は本書からの引用部を示します。)

シェアをデザインする: 変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場

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